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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2024/11/24 (Sun)00:07
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2020/07/13 (Mon)18:10


 
 
 
 
 

State of Decay: YOSE

【 Yankee Oscar Sierra Echo 】

Part.9

*本プレイ記には若干の創作や脚色が含まれます。
 
 
 

 
 
 
 教会の無線機にウィルカーソン兄弟から連絡があった。彼らに周波数を教えた覚えはないが、それは教会のメンバーが誰にも情報を知らせない秘密主義であることを意味するわけではない。ああいう連中が必要に応じて自らの望む情報を"善意の何者か"から手に入れる光景を想像するのは、さして難しいことではない。
 要請を無視することが必ずしも彼らとの敵対関係を招くわけではないだろうが、それでも、こういう状況で現在のトランブルバレーにおける武器の主要供給源とコネクションを断つことは躊躇われた…残念なことに、現在トランブルバレーの状況をコントロールしている(あるいは、コントロールしようと多少の努力をしている)コミュニティの多くは、市民の武装解除を望んでいるのだった。正気の沙汰とは思えなかった。
 もっとも、リリーはウィルカーソン兄弟との接触をあまり快く思っていないようだったが…
 このところ、生存者たちが正体不明の何者かから物資を強奪される、といったような事件が相次いでいるらしい。リリーはウィルカーソン兄弟の犯行を疑っていた。確信していると言い替えてもいい。
 もしそれが事実だとして、ノーマンとしてはむしろウィルカーソン兄弟を味方につけておくべきだと考えていた…明日を生き延びることすら難しい状況で、悪辣な犯罪者を敵に回すことが賢明な判断とは思えなかった。特に、リリーのように難病を抱えた娘を擁している状況では。
 
 
 
 
 
 
 ウィルカーソン兄弟が根城にしている農場の納屋までトラックを走らせたノーマンは、ヘッドライトに照らされた四人の人影を目にした。
 そのうち二人は言わずと知れたウィルカーソン兄弟の長兄ミッキーと次男のジョブだ。その傍らにいる男は酷く暴行を受けたようで、便所の配管から引きずり出されたような有り様で蹲っている。もう一人の女に見覚えはなかったが、おそらくウィルカーソン兄弟の"ビジネス"を手伝っているメンバーと思われた。
 
ミッキー:「よう、いつぞやは世話になったな。ちょいと、うちの客の世話をしてほしいんだがね」
ノーマン:「…配達の仕事だと聞いていたが」
ジョブ:「そうとも!ここにおわす、我らが友人を安全に家まで届けてやってくれないか?ゾンビに齧られたり、足を滑らせて崖から落っこちたりしないようにね」
 
 兄弟がわざとらしいパフォーマンスを交えるたび、傷ついた男…どうやら兄弟と取引をしていたらしい、サムという男が怯えた小動物のようにビクッと身体を震わせた。彼が兄弟のことを恐れているのは明白だった。
 彼がここへ到着する前に怪我を負ったのでなければ、何らかのトラブルを伴って兄弟の制裁を受けたのだろうということは容易に想像がつく。
 
ノーマン:「で、彼はなんで怪我なんかしているんだ?ここへ来る前にゾンビに齧られたり、足を滑らせて崖から落っこちでもしたのか?それとも、あんたがた二人のどちらかの服に鼻水でもすりつけたのかね?」
ジョブ:「全部ハズレだ。だってそうだろ、今言ったうちのどれかが正解なら、そこにいるお客さんは今頃生きちゃいない。何があったのかは、道々その御仁から聞きでもすればいいさ…それで、やってくれるかい?それとも、その哀れな男を徒歩で帰らせるかい?」
ノーマン:「どうせ運転して帰らなきゃいけないなら、どちらも手間はそれほど変わらないな」
 
 俺はタクシーのかわりか、あまり楽しい仕事ではないな、と思いながらノーマンはサムに肩を貸してやり、トラックの助手席に押し込む。
 運転席につく直前、そういえば、とノーマンはジョブに質問した。
 
ノーマン:「最近、生存者が回収した物資を運んでいる途中に襲われて荷物を奪われる事件が相次いでるらしいんだが。あんたがたの仕業じゃあないよな?」
ジョブ:「なぜそう思う?」
ノーマン:「怒らないで聞いてほしいが、このあたりでゾンビではなく生きた人間に襲われたと聞いたとき、真っ先にあんたがたの顔を思い浮かべないようにするにはかなりの努力を必要とする」
ジョブ:「なるほど?そいつは名の知れた実業家が被り得る、ありふれた風評被害として名誉の一種と受け取っておく…で、犯人は見つかっていないんだな?」
ノーマン:「残念ながら」
ミッキー:「いいかハナクソ、俺たちゃなにも、自分が聖人だなんて思っちゃいねぇぞ。谷での自分たちの評判についちゃあ、誰よりもよく知ってるんだ…だからこそ聞くんだがな。哀れな子羊どもが、俺たちを名指しで犯人呼ばわりしないのはなんでだ?」
ジョブ:「そういうことだ、若旦那。もし本当に俺たちが犯人なら、噂は俺たちの名前とともにあっという間に広まるだろうし、誰もそうすることに躊躇はしないだろう。俺たちは谷の生存者の情報能力を評価しているんだぜ」
ノーマン:「…それもそうか。すまない、野暮を言った」
ジョブ:「いいさ、よくある誤解だ。こっちでも情報を集めておくよ、何かわかったら真っ先にお宅のところのかわいいお嬢さんに知らせてやるぜ」
 
 その言葉に返事をかえすことなく、ノーマンはトラックを発進させた。
 
 
 
 
 
 
 ウィルカーソン兄弟の姿が視界から消えてほっとしたのか、サムは激痛に呻きながら深呼吸を繰り返すと、誰ともなく口を開いた。
 
サム:「痛た…ああ、くそっ。だいぶ酷くやられたな」
ノーマン:「それで、客人、あんたはなんでウィルカーソン兄弟に目をつけられたんだね?」
サム:「ただの取引だ。少しばかりこじれちまったが…どうも、彼らは俺の支払いが遅れていると感じたようでね。少し待てば返すアテはあったんだが、連中、お構いなしに俺を殴りはじめた」
 
 ノーマンの返事を待たずにサムはべらべらとお喋りを続けたが、ノーマンのほうは彼の話にそれほど興味を惹かれなかった。
 おおよそ、あっちで貸したり、こっちで借りたり、といったようなことを繰り返しているうちに泥沼に嵌まったのだろう。典型的な債務者ムーブだ。今回も、立て替えてくれるはずの友人が約束を反故にしたせいで支払えなくなった、というようなことがあったに違いない。
 
サム:「究極の取捨選択ってやつだよな。ゾンビどもの餌になるか、飢え死にするか、それともギャングどもに肋骨を折られるか?まったく…!」
 
 俺ならその三つより他の選択肢をえらぶが、とノーマンは内心で応じた。口には出さなかったが。
 やがてスペンサーズミル南部にある丘の上の一軒家に到着し、二人は車を降りた。その頃には夜が明けかけており、稜線から朝日がわずかに顔を覗かせている。
 玄関先まで行くと、一人の女性が戸を開けたまま立ちすくんでいるのが見えた。夜中のあいだずっとそこにいたのか、顔は青ざめ、目のまわりに暗い輪郭が影を落としている。
 
 
 
 
 
 
女性(アリス):「ちょっとあんた!夜中にこっそり出ていったと思ったら、こんな時間までどこほっつき歩いて…ねぇ、ちょっと、どうしたのよ、その怪我は!?」
サム:「ああ、何か物資を手に入れられないかと町を調べてたら、足を踏み外して建物の上から落ちちまってね。おい、そんな目で見るなよ、ゾンビに襲われたわけじゃないったら!そのとき、この親切な人がたまたま通りがかって、俺を助けてくれたんだよ」
ノーマン:「彼がゾンビに噛まれていないことは俺が保証するよ、このどんくさい旦那が梯子を踏み外して、太ったペンギンみたいに不恰好に落ちるさまをちゃんとこの目で見た」
アリス:「ええ、ええ、そうでしょうよ。そんなみっともない光景を見ちまったら、誰だって助けずにはおれないだろうからね」
 
 ノーマンのもとを離れる直前、サムは彼にだけ聞こえるよう小声で言った。
 
サム:「誰が太ったペンギンだって?とはいえ、俺の嘘に調子を合わせてくれて感謝するよ。できれば他の連中にも、俺がウィルカーソン兄弟と取引を持ったことについては黙っててくれないか?」
ノーマン:「任せろ。ゾンビに襲われるまでもなく大怪我したデブペンギンの伝説は俺が責任もって広めておく」
サム:「おまえー…!」
 
 毒づきながら小走りに家の中へ引っ込んでいくサム。
 その後姿を見届けてから、アリス…サムの女房か、それともゾンビ渦後に知り合った行きずりの仲なのかは知る由もない…はノーマンのほうを振り向くと、やれやれと首を振った。
 
アリス:「何があったのかはだいたい察しがついてるよ。迷惑かけちまったようだね」
ノーマン:「こんな状況でも人の心から善意が失われるわけではないという教えを説くのが俺の使命だからな」
アリス:「心にもないこと言うんじゃないよ。とにかく、うちのバカを助けてくれて感謝してるよ」
 
 レイディ、金にも弾にもならない礼をありがとうよ。
 心の中でそう吐き捨て、ノーマンはトラックの運転席に身体を沈めた。根っから、人助けをすることで心が洗われるような性分ではない。ただ、今回のことが何か今後の役に立つことを…何の益にもならないタダ働きでないことを祈るのみだった。
 
 
 

 
 
 
クレイブ:「あっちでもサム、こっちでもサム。あっちのサムは男で、こっちの女はサム。ややこしいことこの上ない、そして俺はハンサム…なんちゃって」
 
 ノーマンが教会へ戻るのとほぼ入れ違いで出発したクレイブは、くだらないことを言いながら町の郵便局を目指していた。
 サム…ついさっきノーマンが助けたデブペンギンではなく、アセンション教会のコミュニティのメンバー、ノーマンの前の料理担当だったサム・ホフマンが、単独で町の探索に出たことを聞き、クレイブは彼女を追っていたのである。
 なんでもアンディ・ピムズとかいう、教会の炊き出しにしょっちゅう飯をたかりに来ていた男が行方不明だとかで、彼の身を案じて捜索に出たとのことだったが…
 
 
 
 
 
 
 いまや窓口をたらい回しにする職員の影もなくなった郵便局の受付で、人影を探すサムの姿をクレイブは見つける。
 
クレイブ:「ヘーイ、サム!サム・フィッシャー!伊藤サム!女の子の一人歩きは感心しないぜぇー、せめてもう一人サムがいないとな。あるいは0.5人ぶん?サムの半分、すなわち、ハン・サムのこの俺様が」
サム:「うざっ!なんだい、診療所のベッドで寝てたときのほうが付き合いやすかったじゃないか!それで、わざわざあたしを探しに来たのかい?」
クレイブ:「まーね。うら若き乙女が乞食のジジイを探しに出たって聞いたもんで、いったい家族でも人質に取られてるんじゃないかと心配になってね」
サム:「余計なお世話だよ!町がこんな愉快な状況になって、教会に馴染みの顔が姿を見せなくなったってだけの理由で人を探すのがそんなにおかしいかい?」
クレイブ:「まーまー、ツノを引っ込めなさいな。手助けしようって言ってるのさ、この、ハン…」
サム:「人の生き死にがかかってんだ、冗談に付き合ってられるような気分じゃないね」
クレイブ:「…ごめん」
 
 クレイブとしてはサムの気を和らげるつもりだったが、どうも上手くいかなかったようだ。
 
クレイブ:「それで…アンディとかいう、骨法とか使いそうな名前のヤツはいったい何者なのさ?」
サム:「通風持ちで歯の抜けたアル中って以外に?アンタの言った通りさ、ただの乞食だよ。それともなにかい、医者や市長でもなけりゃあ、こんな状況で命を危険に晒して探す価値はないって言いたいのかい?」
クレイブ:「いや、まあ、あとはほら、個人的な恩人とか、家族とか、恋人とか…」
サム:「気色の悪いこと聞いてんじゃないよ!あのクソジジイには恩もないし、特別な関係でもない!それどころか、教会でアイツの面を見るたびに嫌気が差したもんさ!」
クレイブ:「教会で?えぇと、アンタは飯をもらう側じゃあないよな?炊き出しを手伝ってたのかい、いったい、どんな罰ゲームで?」
サム:「本ッ当に失礼なヤツだね、アンタ!あたしはずっとウィリアム牧師の手伝いをしてたんだ、罰ゲームでもなけりゃあ慈善活動なんかしそうにないって、そんなふうにアンタがあたしのことを考えるのは勝手だけどさ!」
クレイブ:「ごめんって!悪気はないんだ、いや、マジに!悪かったよ!」
 
 どうにもうまくないな、と、アンディの捜索を続けながらクレイブは頭を悩ませる。
 適度に相手の気を和ませるつもりが、的確に地雷を踏み抜いていることを自覚しつつ、これ以上何か言っても藪蛇になるだけだと判断し、努めて口を閉じることにした。
 近くの建物の捜索をはじめて二~三軒目だったか、二人は空き家の真ん中にラックサックが浮いているのを発見する。
 
 
 
 
 
 
サム:「なんだい、こりゃあ…?」
クレイブ:「そーいやあ、昨日まで誰かがここに住んでいたような気もするな。ゾンビに襲われて、死ぬか、命からがら物資を置いて逃げ出したかしたんだろう。…なんで宙に浮いてるのかは俺にもわからないけど」
 
 ついでに言うと、なんでボーンの一部が引っ張られてメッシュが伸びてるのかはわからないけど。
 せっかくだから頂いていこう、とクレイブはラックサックを回収し、アンディの捜索を続ける。哀れな老人の姿を発見したのは、その直後のことだった。
 
 
 
 
 
 
サム:「なんてこった、アンディ!」
クレイブ:「えぇと、ちょっと待って?このジイさん、ゾンビと見間違えるくらい汚いのか、それとも本当にゾンビになっちまったのか、俺には判断つかねぇんだけど!?」
サム:「こんなときにまで冗談言ってんじゃないよ!」
クレイブ:「今のは冗談じゃあねぇって!」
 
 騒ぎながらも、クレイブは手にしたライフル…HK416カービンの銃口をアンディの頭部に向ける。照準器越しに、正気を失ったアンディの凶悪な瞳がまっすぐに見返していた。
 発砲をためらうクレイブに、サムが叫ぶ!
 
サム:「なにしてんだ、撃て!」
クレイブ:「…アイアイ、サー」
 
 ザシュッ!
 木材を金属ブラシで擦ったような音とともに、サプレッサーから射出されたスチール弾芯のグリーンチップ弾頭がアンディ"だったもの"の頭蓋を破壊する。
 微動だにしなくなったアンディの亡骸を前に、サムは静かにつぶやく。
 
サム:「R.I.P(安らかに眠りな)、クソジジイ」
 
 その憎まれ口に、悪意や嫌悪の色はなく…
 黙ってその場から立ち去るサムをすぐには追わず、クレイブは老人の亡骸を一瞥してから、軍隊式の敬礼のポーズをとった。
 
クレイブ:「もしあの世で会うことがあったら、そんときは一緒に酒でも飲もうや。あっちじゃあ、二日酔いの心配もないだろうからな」
 
 もっとも、あんたが天国に行ったところで、俺が地獄行きを免れるとわかったもんじゃないが…
 いままで自分が犯してきた罪、奪い去った多くの命について思いを馳せつつ…クレイブはサムに続いて教会へ戻る道を辿りはじめた。
 
 
 
 
 
 [次回へつづく]
 
 
 
 
 


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