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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2024/04/18 (Thu)12:07
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2020/07/07 (Tue)19:04


 
 
 
 
 

State of Decay: YOSE

【 Yankee Oscar Sierra Echo 】

Part.7

*本プレイ記には若干の創作や脚色が含まれます。
 
 
 

 
 
 
リリー:「聞いてノーマン、やっとドク・ハンソンの追跡に成功したわ。どうやら彼、ウィルカーソン兄弟の誰かを診察しているみたいなの。患者が完全に回復するまで外に出れないよう、ほとんど軟禁状態らしいわ。まあ、相手があのロクデナシ兄弟であることを考えれば、そういう強引なやり口は不思議でもなんでもないけど」
 
 
 
 
 
 
 いまのところ、ここトランブルバレーでゾンビ化の治療ができるのはドク・ハンソンだけだ。クレイブを助けるために、なんとしても彼を教会に呼ぶ必要があった。
 
ノーマン:「俺は地元の人間じゃないから、そのウィルカーソン兄弟とかいう連中について何も知らないんだが。どういう連中なんだ?」
リリー:「一言で言えば、悪タレね。良からぬ噂の耐えない連中よ、町がゾンビだらけになってからは特にね。今はゾンビと戦うための武器や弾薬を売ってるんだけど、商品の出所は誰も知らないわ」
ノーマン:「ギャングか…油断のならない連中のようだな」
 
 ガンロッカーからマーリン983と、バックアップ用のリボルバーを取り出し、ノーマンはトーマスのトラックに乗ってウィルカーソン兄弟が根城にしている農場へと向かう。いざとなれば不良どもと一戦交えるつもりでいたが、ノーマンとしても、ゾンビのみならず人間とも争わなければならないような状況は可能な限り避けたかった。
 
 
 
 
 
 
男(ミッキー):「こんな夜中に何の用だ、クソバカヤロウ!客か?悪いが今日は店仕舞いだ、帰ってくれ!」
 
 半壊しかかった木造の母屋を正面に捉えたとき、玄関から男の罵声が聞こえた。
 こちらも事情が事情だ、帰れと言われて素直に引き返すこともできないので、ノーマンは不本意ながら男の声を無視し建物の近くにトラックを停めると、ライフルを担いでさっき声がしたほうに向かった。
 ズドン、銃声と同時にノーマンの足元に土煙がパッと舞い上がり、跳ねた土塊が顔にかかる。
 正面玄関に二人の男が立っていた。銃口から硝煙のたちのぼるライフルをかまえたニット帽の男が、不快感や殺意を隠そうともせずにまっすぐこちらを睨みつけていた。ウィルカーソン兄弟の長兄、ミッキーだ。
 
ミッキー:「俺はさっき、帰れと言ったよな?それを無視してバカ面晒しに来た理由を教えてもらおうか、テメエの皺のない脳味噌が地面にぶち撒けられる前にな!3秒だけチャンスをくれてやる!3、2、1…!」
ノーマン:「ドク・ハンソンを探している。俺の友人の治療のために、彼の協力が必要だ」
 
 トリガーに指のかかったライフルの銃口を向けられ、秒読みをされてもなお物怖じせずに要件を口にするノーマンに、ミッキーは不愉快そうに舌打ちしたあと、狙いをそっとノーマンの頭部から外した。
 
ミッキー:「ドクはいま、うちの末弟の面倒を見てる。悪いが他の医者をあたるんだな」
 
 そう言って、ミッキーは自らのジョークにクックッと笑い声をあげる。
 彼らがドク・ハンソンを拘束していること、ノーマンがわざわざ危険を犯してドク・ハンソンに会いに来たことを踏まえたうえでの発言だった。残念ながら、ドク・ハンソンの代役が務まるような医者はこのあたりにはいない。
 そのうち、ミッキーの傍らで沈黙を保っていた男…次男のジョブが、ミッキーの脇腹を小突いて言った。
 
ジョブ:「そのへんにしておけ、ミッキー。お客さん、悪いがこれは俺たちにとってもファミリーの命に関わることなんでね。予約の席が空くのを待ってもらうしか…なんだ、ありゃ」
 
 言葉の途中で、ジョブがノーマンを…否、ノーマンのさらに背後を指差す。
 ダークグリーンに染まった夜闇のなか、複数の赤い光が不規則にゆらめいていた。ゾンビの大群だ…どういうわけか、ゾンビどもは濁った瞳が赤く発光するのだった。変異の過程で発光酵素を体内合成する機能でも備えたのかもしれない。
 ノーマンが乗りつけてきたトラックのエンジン音に惹かれたか、それとも先刻のミッキーのライフルが立てた派手な銃声に反応したか。
 
ミッキー:「どえらい数のクソッタレどもが押し寄せてきてるじゃあねえか。今日はもう店仕舞いだと言ったろうが、このド畜生どもめ!」
ジョブ:「なあ、そこのあんた。お客さん、あの死人どもを土に還すのを手伝っちゃあくれないか?なに、悪いようにはしない。俺たちに恩を売っておくと、なにかと役に立つぞ?」
 
 
 
 
 
 
 ジョブの提案には考えさせられるものがあった。ドクを諦めて手ぶらで帰るにしろ、これだけ集まったゾンビたちを避けて退散するのは不可能だろう。
 悪党の生存の手助けをする、という点に関してはこのさい目を瞑るとして、彼らとともにゾンビの集団を退治するのは、至極合理的な判断だ…
 
ノーマン:「中に入れてもらえるか?」
ミッキー:「いいだろう、だが俺はお前を信用しちゃいない!俺は二階から狙撃で援護するが、お前は絶対に上にはあがってくるなよ!階段に足をかけただけでも撃ち殺してやるからな!」
ジョブ:「二階ではドクが弟のエリを診察してるんだ。ゾンビが二階へ上がるようなことは、なんとしても阻止しなけりゃあならん」
ノーマン:「承知した」
 
 待て、エリ…?
 リリーの兄ジェイコブを迎えに農場へ向かったとき、彼と一緒にいた男のことをノーマンは思い出した。たしか、エリという名前だったはずだ。ありふれた名前ではない、特に、生きている人間のほうが少ない現状では…
 農場での二人の会話を思い出す限り、リッター家の長兄と、たったいま病状に伏せっている末弟がツルんでいたことを彼らが歓迎するとは思えない。このことは自分の胸の内にしまっておこうとノーマンは思った。
 襲撃に備えて廃材からバリケードを構築しているとき、ジョブが幾つかのアルコール瓶をノーマンに手渡した。
 
ジョブ:「こいつを使え、手製の火炎瓶だ。俺は兄貴と違って優しいからな、あんたに役立たずのまま死んで欲しくはない。それと、必要ならロッカーから弾薬も持っていけ、ただし、無駄遣いするなよ」
ノーマン:「感謝する。まあ、とくと我が手練をご覧あれだ」
 
 一通り窓に木板を貼りつけ終わったとき、地面を揺るがすような咆哮が響いた。ジョブと顔を見合わせ、ノーマンは建物から一歩出て声の主を目で追う。
 
 
 
 
 
 
ノーマン:「なんだ、あれは…?」
 
 それは、ただの太った男のゾンビと言うにはあまりにも巨大すぎた。ゾンビ化の過程で何らかの突然変異を起こしたようにしか見えなかった…それが過去にアセンション教会のメンバーに目撃されており、"ジャガーノート"という仮称で呼ばれる個体であることをノーマンが知るのは少し後のことである。いまのところ、ノーマンとしてはこの巨大な怪物を"バイオスモトリ"と呼ぶのが適切であるように思えた。
 
ミッキー:「おいおいおい、なんだアイツは!?ミラー兄弟か?なあジョブ、あそこのデブ兄弟の誰かだと思うか?」
ジョブ:「知るか、俺が…あの風船ブラザーズは前から気に入らなかったが、公然と鉛弾をぶち込んでいいってんなら、喜んでその機会を利用してやろうじゃないか!」
 
 パン、パン、パン!
 ノーマンはマーリン983の速射で立て続けにジャガーノートの頭部を撃ち抜くが、他の多くのゾンビと違い、.22LRで脳に傷をつけられただけでは止まる気配がない。
 クソッ、こんなことなら、もっと火力の高い武器を用意してくるべきだった…!
 ジャガーノートが腰を落とし、タックルの姿勢を取ると同時にノーマンは玄関ポーチから飛び降りた。巨体の怪物はまるで砲弾のように轟然と突進を繰り出し、驚くべき速度で柱に追突した衝撃が建物全体を揺らした。ほとんど崩れかけの母屋がその一撃で倒壊しなかったのは奇跡と言うべきだろう。
 
ジョブ:「客人、火炎瓶だッ!」
 
 ジョブが叫ぶのとほぼ同時に、ノーマンはウィルカーソン兄弟特製のカクテルをジャガーノートに向かって放り投げた。
 
 
 
 
 
 
 炎に巻かれ呻き声をあげるジャガーノートの頭部に、ふたたびノーマンは銃弾を叩き込む。ポツポツと空いた弾痕からバーナーのように火が噴き出し、やがて弾け飛んだ目玉と鼻、口といった頭部のあらゆる穴から炎を吐き出しつつ、ジャガーノートはその場に倒れて微動だにしなくなった。
 
ミッキー:「やりやがった!」
ノーマン:「まだ来るぞ!」
 
 
 
 
 
 
 その後も火炎瓶と小口径ライフルを巧みに操り、ノーマンは建物の前に集結するゾンビを次々と片付けていく。
 やがて、周辺に展開する全てのゾンビの脅威を排除したとき…いかに悪名高いウィルカーソン兄弟といえど、ノーマンの腕前に舌を巻かずにはおれなかった。
 
ジョブ:「まるでボブ・ザ・ネイラーだな。ボルトアクションをあれだけ正確に速射できるやつを俺は見たことがない、それも実戦でだ!」
ノーマン:「褒めて頂いて光栄だ」
ジョブ:「よし、上にあがろう。今のあんたは、それを許すだけの信頼に値する…」
 
 ジョブに肩を叩かれ、ノーマンは二階へ上がる階段をのぼった。
 倒壊した壁から射す月明かりを受け、ベッドの上に横たわるエリ・ウィンカーソンの姿が見えた。農場で見かけたときと同じ貧相な服装で、その顔色は以前会ったときよりもさらに悪い。青白さを通り越して、死人のような土気色に変化していた。
 おそらく…農場からここへ戻るときに、無事では済まなかったのだ。農場で鳴らした爆竹だけでは、彼の命を助けるには不充分だったのだ。
 
 
 
 
 
 
ミッキー:「なぁ、先生よ。エリの具合はどんなもんだい、あとどれくらい寝てれば治るんだ?」
 
 エリが完治することを前提に話を進めるミッキーに、カウボーイハットをかぶった老人…ドク・ハンソンが力なく首を振った。
 
ドク・ハンソン:「すまんが、ボーイ、手遅れだ。彼はもう間もなく"変異"する。力を尽くしたんだが、今一歩及ばなかった…すまない」
ミッキー:「なんだと…?」
 
 軟禁状態にあったにしては、畏れも怒りもない親戚のような態度で淡々と事実を口にするドク・ハンソン。
 一方でミッキーの感情は爆発寸前であり、万が一ドクに危害を加えるようなら…とノーマンは静かにバックアップ用のリボルバーに手を伸ばしたが、さすがに癇癪の矛先を恩人にぶつけるほどミッキーは愚かではなかった。
 
ジョブ:「そんな、有り得ない…だって俺は、母さんに約束したんだ!エリの面倒は俺が最後まで見るって…!」
ミッキー:「先生よ、どうにもならねぇのか?せめて、このまま埋葬するってわけには…」
ドク・ハンソン:「駄目だ。土を掻き分けて地上に這い出してきたゾンビを、ワシは何度も見てきておる。ボーイ、大事な弟のそんな姿を見たいか?」
ミッキー:「畜生!だからって、俺の手で、エリを……!?」
ジョブ:「おい、おまえ、何をやってる」
 
 カチリ、リボルバーの撃鉄を起こしたノーマンを、ジョブが見咎める。
 
ノーマン:「俺が彼の面倒を見る」
ミッキー:「テメエが?ふざけてんのか?貴様なんぞに俺の弟を殺させてたまるか、えぇ、クソが!」
ノーマン:「俺の銃は.22口径だ。うまく撃てば、ほとんど外見からはわからない程度の傷で"死に損なう"のを防ぐことができる。ただ眠っているようにしか見えない程度の傷でな。そのあとで、あんたたちがしっかり埋葬してやればいい」
 
 ふたたびミッキーが突っかかろうとしたが、ジョブがそれを制した。
 たんに物事を素早く片付けるだとか、ゾンビ化を未然に防がねばならないという使命感以上に、ノーマンが純粋な親切心から処刑人の役割を買って出たことを理解しているのだ。
 
ミッキー:「畜生…!」
 
 近くにあった椅子を蹴り飛ばし、ミッキーは感情のやり場を失ったまま階下へと降りていく。それに続いてジョブと、ドク・ハンソンもノーマンに背を向けて去っていった。
 エリと二人きりになったノーマンは、僅かな時間ではあるが互いを知り合う時間を設けた若い男に対して、静かにつぶやいた。
 
ノーマン:「すまない」
 
 その謝罪が何に対してのものだったのか、ノーマン自身にもはっきりとはわからなかったが…それでも、何がしかの声をかけてやらずにはいられなかった。
 ゆっくりと銃口をエリの耳の穴にあてがい、確実に脳幹を破壊する軌道で銃弾が飛ぶことを確認してから、ノーマンは引き金をひいた。
 パン、爆竹がはぜたような音と、エアソフトガンのように軽い反動を伴い、エリの身体が一瞬だけビクリと痙攣する。耳の穴から血が逆流し、枕元をわずかに血で汚した。
 
 
 
 
 
 
 階下に下りると、ウィルカーソン兄弟にかわって待ち構えていたドク・ハンソンがノーマンに訊ねた。
 
ドク・ハンソン:「ところで、お若いの、あんた、ワシを探してここまで来たんだって?」
ノーマン:「ああ。俺の友人がゾンビに噛まれてしまってね、抗生物質で症状を抑えてはいるが、治療にはあんたの助けが必要だと仲間から聞いた」
ドク・ハンソン:「仲間?」
ノーマン:「アセンション教会」
ドク・ハンソン:「ああ、アランの小倅とリッター・ファミリーがいるところか。リリーは元気かね?トーマスは相変わらず人助けに多忙かな?」
ノーマン:「兄妹は元気だよ。ただ、トーマスはな…どういうわけか、善人は長生きできないものだ」
ドク・ハンソン:「そうか…トーマスがな。そんなことになるんじゃないかという気はしていた。ただなあ、やはり、見知った顔が亡くなるというのは、堪えるもんだよ。特に、ワシのような年寄りにはな」
ノーマン:「友人の治療を頼めるか?」
ドク・ハンソン:「車はあるんだろうな?いかにワシが健脚といっても、夜通しの診察のあとでマラソンをすると寿命が縮んじまうわい。快適なシートがあるなら、教会へ向かうまでのあいだ、睡眠をとる贅沢を許して欲しいのだがな」
ノーマン:「もちろん。教会には快適なベッドもある」
ドク・ハンソン:「快適?あれが?」
 
 その言葉に、思わずノーマンは苦笑した。こんな状況でもユーモアのセンスを失わないというのは素晴らしいことだ。ドク・ハンソンも、疲れた表情ではあったが気丈に笑みを浮かべてみせる。
 
ノーマン:「ところで、ウィルカーソン兄弟とはどういう関係なんだ?」
ドク・ハンソン:「どうも何も、ただの医者と患者だよ。あんな連中でも、やっぱり人の子さ。身内に対する思いは、他の人間となんら変わるところはない」

 おそらくは悪党も人の子、というようなことを言いたかったのだろうが、ノーマンとしては、その言葉には素直に賛同しかねた。エリを思いやる感情は本物だったにせよ、そのことと、彼らにまつわる悪評については切り分けて考える必要があると思っていた。
 とはいえ、そのことをわざわざ老医師に言って聞かせる必要はないだろうが。
 トラックに乗り込み、助手席についたドク・ハンソンがきっちりシートベルトを締めるのを確認すると、ノーマンはアクセルを踏み込んだ。空がすでに明るくなりはじめている。
 ウィルカーソン兄弟のいる建物が見えなくなったとき、すでにドク・ハンソンは大きないびきをかいて眠りに落ちていた。
 
 
 
 
 
 [次回へつづく]
 
 
 
 
 


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