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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2016/10/05 (Wed)00:55






インターネットミームの先駆けとも言える偉大な発言
画像は英Wikiより転載



 どうも、グレアムです。
 先日の記事で良くない英訳の一つとして例に出した「All your base are belong to us.」ですが、改めてこの文章のどこがおかしいのかが気になったので、個人的に検証してみました。
 いつものことですが、そもそもこの文章はなんなのかっていう基本的なことから説明する気はないので(めんどくさい)、気になる人はググるなりして調べてください。
 日本語で検証しているサイト等もあるのですが、個人的にはどれも今一つしっくりこないので、ここで個人的解釈をダラダラ書き連ねたいと思います。







 まずは原文との比較。

「連邦政府軍のご協力により、君達の基地は、全てCATSがいただいた」

 これは宇宙海賊CATSが秘密裏に手を組んでいた連邦政府軍を裏切り、彼らの建設した基地をすべて奪取したことを告げる台詞…であるらしい。
 遺憾ではあるが、俺は原典であるゼロウィングをプレイしたことがない。そして当該作品のストーリーを調べても、どの紹介文もなんとなく主語が抜けていてよくわからない。ZIG-01とかZERO-WINGってどこ所属の何者だよ。







 検証をはじめる前に、俺が考える翻訳のセオリーというものを述べておきたい。
 翻訳には大きく分けて二種類存在し、単語をそのまま置き替えただけの「直訳型」、ニュアンスや雰囲気を重視する「意訳型」がある。

 一つ例を出そう。
 スティーブン・キング作、ダークタワー・シリーズの一作目「ガンスリンガー」の序文である。
 これは角川文庫から出版されていた旧訳版と、新潮文庫から出版されている新訳版とで見事に「意訳型」と「直訳型」の典型例として比較することができる。

 まずは原文から。
「The man in Black fled across the Desert, and the Gunslinger followed.」

 次に意訳型、旧訳の角川文庫版。
「黒衣の男は飄然と砂漠の彼方に立ち去った。ガンスリンガーはその後を追った。」

 そして直訳型、新訳の新潮文庫版。
「黒衣の男は砂漠の彼方へ逃げ去り、そのあとをガンスリンガーが追っていた。」

 …如何だろうか。
 原文を切り分けて直訳すれば、「The man in Black(黒衣の男)」「fled(逃走)」「across the Desert(砂漠を横断)」であり、それを繋げると「黒衣の男が砂漠を横断して逃げていった」となる。
 原文では黒衣の男はどこも飄然としていないので、単語の正確さだけで言えば新潮文庫版が正確であり、角川文庫版は誤訳であると言えよう。

 ところがこの黒衣の男というのは主人公ガンスリンガーの宿敵であり、各地でキリストまがいの奇跡を起こし、およそ人間離れした行動と言動で主人公を翻弄するトリックスター的人物なのである。
 そして黒衣の男はガンスリンガーを嘲笑うかの如く彼の運命を弄し、決して足取りを掴ませようとはしない、そういう物語において、「黒衣の男は砂漠の彼方へ逃げ去り」という表現がニュアンス的に正しいのか、ということだ。

 「逃げ去る」という単語は、日本語的にはいささか情けないイメージを想起させ、ともすればガンスリンガーに追われる黒衣の男が必死に逃げ惑っている、というような印象を抱かせかねない。さらに「砂漠の彼方へ逃げ去り」とくれば、「必死だからって、わざわざそんな場所まで逃げなくても…」などという感想まで読み手が抱きかねないのだ。
 しかし「黒衣の男は飄然と砂漠の彼方に立ち去った」とすれば、これはもう、黒衣の男がガンスリンガーよりも上手(うわて)の存在であろうとイメージさせるには充分だ。「飄然と砂漠の彼方に立ち去った」という表現は、のちの「ガンスリンガーはその後を追った」と併せ、まるで黒衣の男がガンスリンガーを砂漠へ招き、罠に誘き寄せようとさえしているかのように読み取れる(実際、その通りなのだが)。

 序文のたった一行の表現で、これだけイメージに差異が出るのである。
 これは英語ネイティヴが「The man in Black fled across the Desert, and the Gunslinger followed.」を読んだ場合と、その直訳である「黒衣の男は砂漠の彼方へ逃げ去り、そのあとをガンスリンガーが追っていた。」を日本語ネイティヴが読んだ場合で、おそらくはまったく異なる感想を抱くであろう、という点も関係している。
 これは英語で思考する人間と、日本語で思考する人間が、それぞれ同じものを目にしても、それを表現する言葉はまったく異なる、ということを理解していなければ把握しにくい感覚だ。
 すこし考えればわかるが、そもそも日本語と英語は言語体系からしてまったく異なるシロモノだ。だから単語を正確に置き換えたとして、それで「正確な訳になどなるわけがない」のである。かえって、著作者が文章に込めたニュアンスを正確に表現するためには、あえて誤訳まがいの意訳が必要とされることさえあるのだ。
 くどいようだが、英語ネイティヴが「fled」という単語を目にしたときに受ける印象と、日本語ネイティヴが「逃げ去る」という単語を目にしたときの印象は、おそらく異なる。これは「逃げる」という行為に抱くイメージ、そのイメージに至る文化的背景、国民性などといったものまで関係する。

 ちなみにこの「ガンスリンガー」の序文は海外の「Best Opening Lines Of Novels(もっとも優れた小説の冒頭)」といったランキングにしばしば名を連ねている。
 もし英語ネイティヴが読む「The man in Black fled across the Desert, and the Gunslinger followed.」が「黒衣の男は砂漠の彼方へ逃げ去り、そのあとをガンスリンガーが追っていた。」であったなら、果たしてこのような現象が起こり得るだろうか?

 上記の文章を読んでもわかるように、俺個人はまったくの意訳奨励派であり、直訳型の文章を「情感のカケラもない機械翻訳じみた、大学生のレポート文章の如きゴミ屑」と呼んで見下している。
 翻訳というのは繊細な神経と、特殊な才能が必要なのである。作品を我が物とし、己が創作物として魂を奉げる覚悟がなければできない所業なのである。
 俺に言わせれば、「原作のニュアンスを汲む」という行為を尊重する場合、「fled」を「逃げる」と訳す必要はないし、「followed」を「追っていた」とわざわざ過去形にする必要もない(物語ではガンスリンガーの追走劇は進行中であり、日本語的に過去形として扱う必要がないため)。そこらへんが理解できておらんのだよな、「直訳=正確な訳」だと勘違いしている馬鹿者どもは。
 そのうえ最近は白痴が如く直訳文が好まれる傾向にあるようで、個人的には非常に肩身が狭い思いである。あれはあくまで機械的対訳であり、文学ではない。

 もっとも翻訳業というのは非常に賃金が低いらしい、ということで、すべての作品に対し、そこまで手間をかけろというのも残酷な話だ。俺は翻訳者を責める気はない。上記の糾弾は言うなれば、盲目的に直訳文を有り難がる輩に対して、である。いったい、文学というものを何だと思っておるのか。







 …えーと、色々と余計な邪念が混じったようだが。

 さて、ここで本題に戻ろう。「All your base are belong to us.」、まずはこの文章の意味するところを考えていきたい。
 この文章を切り分けるとすれば、「All your base(あなたのすべての基地)」「belong to us(私の所属)」の二つになるだろう。
 ちなみに今回の記事で文法どうのを検証する気はない。面白くないし、俺自身が英語の文法に疎いし、なにより個人的に、ただの文法間違いでここまで当該文章が盛り上がったとは考え難いためだ。また、スラングじみた特殊な単語の用法についても検証を除外する。

 「your base」…意味深な言葉である。「base」という単語には基地以外の意味もある、という指摘もあるが、たんに基地を指して使われることも普通にあるので(baseという単語の使用そのものが変であるなら、数多の軍事関連の作品はどうなるというのか)、ここでは追求しない。
 「your base」、あなたの基地、という呼び方には、日本語的には基地が個人の所有物であるかのようなニュアンスが汲み取れるが、英語的にはあまり不自然ではない。しかしここではこの「your」が何者であるかという前提が示されておらず、非常に抽象的である。

 「belong to us」、この「belong」という単語は所有、属する、というニュアンスであるが、仮にも海賊が基地を奪ったことを伝えるのに使う単語としては適切ではないだろう。
 悪役らしい台詞(敵対的意思)を演出するなら「stole(強奪)」「seize(確保)」「hold(確保)」「suppressed(制圧)」「under (our) control(制圧下)」、あるいはたんに「take」でも構わない、色々な表現方法が考えられる。
 いずれも若干ニュアンスは異なるが、少なくとも、ここであえて「belong」を使う必要性、必然性はどこにもない。

 ここで今一度、原文と英訳を比較してみよう。
 原文で登場する「連邦政府軍」「CATS」などの固有名詞が英訳では一切触れられておらず、また「belong」という語が、あたかも敵対的行動を取らずともすんなり基地がbelong to usですよ、という意を汲むものであり、その表現が「連邦政府軍のおかげで」あるなら、すくなくとも連邦政府軍の立ち位置や役割について触れなければ、言われたほうはなんのことかまったくわからない。
 斯様に、この「All your base are belong to us.」という言い回しは、ものすごく表現が抽象的なのである。ふわっふわなのである。これは英語表現としては非常に珍しいものだ。おそらく日本人が「All your base are belong to us.」を読み解くうえでつまずくのは、この「表現が抽象的である」という点に疑問を抱かない点にあるのではないだろうか。

 たとえば海外の映画やゲームの翻訳などを見るとわかるが、日本語訳では「あれ」とか「これら」とか、「組織」、「連中」、などともってまわった言い回しをしていても、原文を見るとハッキリ対象を指摘している場合が多い。
 基本的に英語ネイティヴはハッキリ物を言われないと発言者の意図を汲めない場合が多い。日本人みたく「あれがあいつらにとってそうなんだよ」などと言っても、それこそ「アレとかコレとかボケが始まってるのか(Can't remember the name? A senior moment perhaps.)」なのである。
 それがどういうわけか、この「連邦政府軍のご協力により、君達の基地は、全てCATSがいただいた(All your base are belong to us.)」では日本語だとハッキリ対象や行為を指摘しているところを、英語だと極めて抽象的な文章になっているという、逆転現象が起きているのである。
 つまりこの「All your base are belong to us.」は、英語ネイティヴ的には単純に抽象的すぎてわけがわからない文章なのである。文法とか以前に「いきなり何わけのわかんないこと言ってんだこいつ」なのである。ていうかおまえ誰だよ、的な。







 さて、この「All your base are belong to us.」を最初に書いた翻訳ポリシーに基づいて評価するなら、典型的な「直訳型」と言えるだろう。
 それぞれの単語がもつ意味、ネイティヴが受けるニュアンスを考えずにそれらしい言葉に置き換えただけ、しかもそこから主語を抜いてしまっているのだから、これはもう相当にわけのわからない文章になる。
 たしかに言ってることは間違ってないかもしれない。ないかもしれないが、ネイティヴはそんな言い回しはしないし、なんだかよくわからない文章になっている。

 ここまで長々と書いたが、おそらくこれだけでは、日本人諸氏には「All your base are belong to us.」がどうしてそこまでウケたのかがわからないだろう。
 その点を探るためには、そもそもこの言葉が英語ネイティヴに「どうウケたのか」を考える必要がある。
 幾つかの文献では、あたかも当該文章が日本人の英語能力の低さを嘲笑う、いわゆる「嘲笑」の対象として扱われているように(ネガティヴに)書かれているが、その実、純粋にネタとして愛されているフシもあり、そのギャップが俺にとっては非常に不可解であった。
 しかしその謎を解くのは難しくない。そう、逆の立場で考えればいいのだ。
 外国人が日本語を扱ったとき、出来上がった珍妙な日本語に思わず笑った経験はないだろうか?

 たとえば、地下鉄の看板に「Subway 補助的な道」と書かれているのを見たときとか。
 たとえば、小さな村の看板に「Peasant Village 少し村」と書かれているのを見たときとか。
 たとえば、主人公の襲撃を察知した敵ニンジャが「ふざけんじゃねぇコノヤロー、なんでそんなことしたんだよ!」と怒鳴ってきたときとか。
 たしかに、間違いではない。間違ってはないんだよ。「Subway」を「補助的な道」と訳すことだって、可能ではあるんだ。でも、日本語ネイティヴ的にその訳は有り得ないし、日本人の脳味噌ではその対訳はちょっと思いつかない。ある意味、すごいセンスだと感心すらしてしまう。
 「なんでそんなことしたんだよ!」という語も、おそらく原語では「What's are you doing here」に相当する言葉だったのだろうと推察される。でも敵を発見した場合、「なにしてやがる!(攻撃を受けた場合は「なんてことしやがる」が適訳か)」という言葉のほうが日本人的には自然だ。本当に僅かな表現の差異だが、それを「なんでそんなことしたんだよ!」にするだけで、これはもう、ものすごく珍妙な日本語表現になってしまう。

 つまりはそういうことなのだ。
 「All your base are belong to us.」は文法やシチュエーション云々ではなく、たんに「ヘンな英語」なのである。微妙に合ってるけど、英語ネイティヴはそんな表現はしないし、その表現はちょっと思いつかないよ、なのである。
 ガイジンさんにとってのCATS総帥は、日本人にとってのハヤモト親分であり、元気一杯なクサハナ・タナカさんであり、ニンジャなのだ。
 ちなみに上記ニンジャの台詞が登場するゲーム「Hitman 2: Silent Assassin」のヘンな日本語表現、愉快なヤクザやニンジャたちは海外ではまったくネタとして認識されていない。ガイジンさんたちにとって、あれはFunnyなモノに写らないのだ。日本人的にはまったく信じられないことであるが。
 であるから、日本人が「All your base are belong to us.」をまったく面白く感じなくても、それはおそらく自然な反応なのである。

 考えてみれば、ブレードランナーの「二つで十分ですよ!」をひたすらネタにし続けているのは日本人くらいで、その日本人が「All your base are belong to us.」をひたすらネタにしているガイジンさんたちをどうこう言うのも、なんというか、おこがましい話なのだ。
 だって考えてもみてほしいが、ブレードランナーのあれは、英語ネイティヴにとっては外国人が母国語で「Two is enough!」って言ってるだけだから、そりゃあ日本人以外にはなにが面白いのかサッパリわからんわけだよ。
 たとえば日本の映画で、外国人が屋台で「Two is enough!」って言うシーンがあったとして、それが日本人にとって面白いか?という話。

 べつに文法云々とかいう難しい話ではない。アメリカの映画で日本人のオッサンが「二つで十分ですよ!」と言えばそれが伝説的なネタになってしまうとか、そういう非常にしょーもない話なのだ。
 インターネット・ミームなんてのは、そういうものである。







 最後ではあるが、色々と偉そうなことを言った手前、俺自身が思うところの「All your base are belong to us.」の適訳を載せておかねばなるまい。とはいえ俺自身が英語の専門家でもなんでもなく、おそらくはPiece of crapなシロモノであるから、おおいに笑っていただいてけっこうだ。
 「All your base are belong to us.」をシンプルに修正するなら、俺は「We seize the all part of your bases.」とする。これは直訳すると「我々は貴方の基地をすべて制圧した」となる。
 もし原文「連邦政府軍のご協力により、君達の基地は、全てCATSがいただいた」を訳するなら、「Thanks to the support of Federation Forces to CATS conquered the all part of your bases.」としよう。これは直訳すれば「連邦軍の支援のおかげでCATSは君達の基地すべてを制圧できた」となる。この場合のThanksは皮肉であり、より悪役らしさが強調されるはずだ。
 「seize」「conquered」…belongに代わるこれらの単語はいずれも武力を用いた敵対的行動を意味するものであり、直接的な侵略活動があったことを示唆している。というか、この箇所をbelongなどという表現でぼやかすから、発言者の意図が不明瞭になるのだと俺は思う。このあたりの感性は非常に日本人的だ。
 本来ならば「your」で表現される部分に固有名詞(少なくとも所属先を特定する単語)が入るはずであり、ここがぼやかされている点が個人的にとても不満なのだが、原文でも「君達」「your」なのだから対処の仕様がない。もし襲撃を受けたのも連邦政府軍なら、多少混乱することになるが、それならばyour own等に絡めた自業自得を示唆する台詞を入れることで対処できるはずだ。というか、all part of your own basesでいいのか?

 この一連の台詞の何が問題なのかというと、登場人物たちにとってはともかく、プレイヤーに対して必要な説明がなされていない(あるいは不充分な)点だ。
 思うに日本語の時点でかなり表現が不自由な部分があり、さらに無理な英訳を施したことで、余計にわけがわからなくなった…というのが真相であると感じる。













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