主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。
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2019/05/25 (Sat)13:17
ここに一人の少女を紹介しよう。名をニコラ・ミロスラフ、ボスニア出身のクロアチア人である。
学生時代に紛争に巻き込まれた彼女は、セルビア軍に両親を殺され、自身も心と身体に深い傷を負った。その後、どうにか敵の手を逃れたニコラは武器を手に入れると、民兵となってゲリラ戦に身を投じた。一人でも多くのセルビア人を殺す、ただそれだけがニコラの生きる目標となり、怒りと殺意のみを糧に日々を生き延びた。
紛争が終結し、武器とともに敵への憎しみを取り上げられたニコラは、自分という肉でできた容器の中には既に何も残っていないことに気がついた。抜け殻となったニコラは故郷を捨て、難民としてロシアに入国した。故郷に未練はなかった。家族と友人は皆死に、辛い思い出しか残っていない瓦礫の山でこの先の人生を生きていける気がしなかった。すべてをやり直す必要があった。
なぜ西ではなく東へ向かったのかは、ニコラ自身もよくわかっていなかった。クロアチア語とロシア語は似ているので、多少は話が通じやすいだろうという、その程度の理由だった。
ロシアで第二の人生を歩みはじめたニコラだったが、以前より状況が改善されたわけではなかった。
連邦崩壊とともに西側の属国となったロシアでは各地にNATOの治安維持部隊が駐留しており、治安維持とテロ対策の名目で戒厳令が敷かれていたため、人々は外出を制限された。NATO軍、とりわけアメリカ軍は工場と天然資源の確保にしか関心がなく、観光客のように傍若無人に振る舞う彼らの態度は国民の反発を買った。
街の治安は次第に悪化し、やがて電気や水道といったライフラインが停止すると、人々は大パニックに陥った。軍人や警官が暴徒化し、鍵のかかっていない家は略奪者の餌食となり、通りは死体で溢れるようになった。駐留軍を襲撃する者に対して、NATOは市街地へのミサイル攻撃で応戦した。
混乱が収束する見込みはなかった。
チェリャビンスク州オジョルスク北部。
検問所の前で軍人が市民に避難勧告を出している。
彼らが言うには、現在北のエカテリンブルグに駐留しているNATO軍部隊が間もなく南下してこちらへ向かって来るのだという。シセルチからドルガヤへ向かう安全なルートが存在するため、そこからNATO軍の影響を受けない土地まで逃れようというのだった。
いまや軍人でさえもがNATO軍から逃げようとしている。基地を捨て、規律に背き、ただ生き延びるために…
これはもはや戦争ですらない、ただひたすらのカオス(混沌)。これに似た状況をニコラは以前に見たことがあった。ボスニア、サラエボ。この大ロシアでさえもが故郷と同じ道を辿るというのか?
そして現在、ニコラはヴァレクという名の知人とともに人の居なくなった軍の倉庫へ侵入していた。軍人たちが市民を誘導しているあいだに物資を盗もうというのである。
二人は大量の荷物を積めるワゴン車に乗ってきたが、敷地内に数人の軍人が戻ってきたことを確認したヴァレクは荷台に物資を積めるだけ積んだあと、ニコラが戻るのを待たずに発車してしまった。悪いことに、車のエンジン音は戻ってきた軍人たちの注意を惹くだろう。
彼らは侵入者の存在に気づいたはずだ。ヴァレクの車を追うか、さもなくば、逃げ遅れたまぬけが倉庫内にいるかどうか確認しに来るかもしれない。
【続く】
【ゲームの基本情報】
本作はBrigade E5、7.62 High Calibreで知られるApeironの遺作となったRPGである(本作のリリース後にApeironはCapitulumというタイトルの新作を開発していたが、パブリッシャーが見つからず2010年にスタジオが閉鎖している)。
ロシアでは2009年にリリースされたが、Steamに登場したのは2014年。英語版のデータはそれ以前に完成していたがパブリッシャーが見つからず、一度ポーランドのゲーム雑誌に英語版のゲームディスクが付属した以外に日の目を見ることはなかった(それですらもApeironが閉鎖した後だったのだが)。
本作はロシアの作家Berkem al Atomiが執筆した同名の小説を原作としており、本作のダイアログは原作者自身が担当している。NATO制圧下で紛争状態となったロシアを描くIFストーリーだが、本作の設定がどれだけ原作に忠実であるかは調べようもない(邦訳どころか英訳すらされていない)。
また本作のストーリーは徹底して主人公の(抽象的な)主観で説明されており、いつ、どこで、なにが起きたのかを正確に知る手段はない。何年に何が起きた、といったタイムライン形式でのストーリーの補間が不可能であることを先に断っておく必要がある。
さらに悪いことに、本作にはマニュアルが付属していない。
本来であれば本作の主人公はAkhmetという3~40代の男性だが、「ヒゲのオッサンの顔をずっと眺めながらプレイのモチベーションを保ち続けるのは困難である」という理由から、今回のリプレイでは主人公のキャラクター造詣、その外観とバックグラウンドを大きく変更するに至った。おそらくMarauderのキャラクターモデルの改変を行ったのは世界で俺一人だろう。
基本的なシナリオについては概ね原作準拠ではあるが、俺自身、英語がそれほど得意ではないのと、元々の英訳の質が低い(らしい、と言われている)ので、間違えている部分が多々あると思われる。従って、原作のシナリオを理解するにあたって本リプレイの情報をあまり鵜呑みにしないよう願う。
Akhmetについては妻帯者であり、元軍人であるという以外にその背景が詳細に語られることはない。彼は正義の騎士ではなく、妻や友人を大事にする男ではあるが、それらを守るために殺したり、盗んだりすることに対しては抵抗がない。
ゲームプレイに関して、本作は初期設定ではカメラを回転させることができない。これはゲームプレイを著しく困難、ないし不可能に至らしめる要素であり、これを改善するにはゲームディレクトリ内の"Autoexec"というファイルをノートパッド等で開き、"Cam_UseAngles 0"の行を書き加えてやる必要がある。それでもカメラの回転ができない場合はカメラ感度が低すぎるため、オプションから"Camera Sensitivity"の数値を上げてやる必要がある。
また"Autoexec"に”freecamera 1”の行を追加するとカメラの移動制限を解除できる。これは7.62 High CalibreやBrigade E5でも有効だが、E5ではチート判定を受けるので注意。
戦闘中に発生するスローモーションを切りたい場合は"Config.e6c"を開き、"SlomoCoeff"の数値を0にしてやる。
時間操作はそれぞれ"-"、"+"キーで減速or加速が可能だが、このあたりはキーコンフィグがきちんと反映されず挙動が安定しないため、あまりいじらないほうがいいだろう。
本作のムービーはOgg Theora形式で、対応するムービーコーデックがPCに入っている場合、Windows Media Playerでも閲覧可能(ただし拡張子を.aviや.mpg等の一般的なものに変えて認識させるという奇妙な手順を踏む必要がある)。
ゲーム中では…少なくとも当環境では音声は正常に再生されるが動画部分が時間経過とともに遅延し凄まじい処理落ちが発生、最悪の場合ゲームがスタックするので、上記のような少し変わった手段で内容を確認せざるを得なかった。音質の悪さは仕様らしい(おそらくエンコード時に音質の調整をミスッたか、容量削減のためにケチッたものと思われる)。
ムービーファイルが欠けている場合は単純にスキップされる割れに優しいお利口な仕様のため、メーカーロゴ等を飛ばしたい場合はファイルを削除するかリネームすることで対処できる。
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