主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。
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2019/07/07 (Sun)02:56
*注意*本リプレイでは主人公のキャラクターモデルを変更し、
設定や一部ストーリーを改変しています。
設定や一部ストーリーを改変しています。
ニコラ:
「軍人の死体だ。少し古い、地雷でやられたわけじゃなさそうだ。NATO軍との銃撃戦で亡くなったのかな…?」
ギャングの所持していたAKSUを背負い、ニコラは地下保管所のエントランスをざっと見回す。貨物用エレベータが稼働しなかったため階段を使わざるを得ず、重い荷物を抱えたまま自力で地下深くまで下りるのはそれだけで重労働だ。もし動力の復旧が不可能なら、軍人たちも荷物の搬出に大変な苦労を強いられることになるだろう。
施設は貨車用のレールを通じて保管庫に繋がっていた。トンネルには貨車が荷物を積んだまま放置されている。
ひとまず地雷の存在を警戒しなければならないが、万一ギャングや他の侵入者が地上の軍人たちに気づかれずやってきた場合に備えて、背中を無用心にしておきたくはなかった。念のため地雷の解除は後回しにして、施設内の捜索を優先しよう。まだNATO軍の残党が残っているかもしれないし、あるいはロシア人の負傷者が取り残されているかもしれない。
巨大なシャッターの向こう側には、大量の物資がほぼ手付かずのまま残されていた。アメリカ人たちが略奪し尽くしているものと思っていたが…たぶん、彼らはメイド・イン・ロシアの品々に興味がなかったのだろう。
鍵のかかった金庫にはMR-448ピストルと予備弾倉が保管されていた。プラスチック製のフレームと多弾数マガジンを備え、マカロフの後継として設計された新型だ。将校用だろうか?
これくらいならこっそり貰ってもいいかな、などと考えた矢先、トンネルの向こう側からニコラに呼びかける声があった。
フォメンコ:
「おい工兵、地雷の処理は終わったのか?」
数人の部下を引き連れたフォメンコがこちらに近づいてくる。なぜ彼が?いま、ここに?
ニコラ:
「うん。だいたい片づいたよ」
フォメンコ:
「そうか、それは朗報だ。ところでおまえ、まさか誰も見ていないのをいいことに、こっそり倉庫の物資を盗もうなどと考えてはいないよな?それはいけない、それは許されないな。おまえが物を盗めば、そのぶん、他の誰かが得られるはずの利益が失われるわけだからな」
ニコラ:
「たとえば…あなたとか?もしボクに手出しをしたら、マクシミッチは何と言うかな」
フォメンコ:
「おまえは地雷処理に失敗して死んだ、と報告するさ。ヤツにそれを疑う理由があると思うか?どのみち、おまえはもう終わっているんだ」
どうやらフォメンコは個人的に保管庫の物資を狙って来たらしい、ついでにニコラを始末するつもりのようだ。それはマクシミッチやコーネフ大佐の関知するところではなく、フォメンコの独断だろうということも推察できる。
どうしてこうも自分は厄介事に巻き込まれるのか、とニコラは嘆息する。とはいえ、こういう事態を想定していたわけではなかったが、対策はすでにできていた。
トンネルから爆発音が聞こえる。続いて、軍人たちの悲鳴。
フォメンコ:
「じ、地雷…だと……!?始末したはずじゃあ…あ、あっ、貴様!?」
ニコラ:
「どうやら地雷処理に失敗して死ぬのは、ボクじゃなくてあなたのほうになりそうだ。それも、文字通りにね」
そう、ニコラは発見した地雷を処理せずに保管庫まで来た。不意の侵入者対策だったが、予想外の相手だったとはいえ、功を奏したようだ。
フォメンコ:
「くそっ、あんな…あんな、得体の知れない餓鬼に、いいようにやられるなどと!」
ニコラ:
「エリートの兵隊さんには我慢できないって?自分を恨みなよ…強欲なロシア人め」
地雷から逃れ、隔壁から飛び出したフォメンコの頭上に弾丸が降り注ぐ。倉庫への出入り口は一つだ…もしフォメンコが冷静であったなら、ウサギの巣穴に仕掛けられた罠に自ら飛び込むような真似はしなかっただろう。
フォメンコの部隊の全滅を確認したニコラは、憤懣やるかたなしといった表情でため息をつき、改めて周囲を見回した。
ニコラ:
「…なんか、だんだん腹が立ってきた」
自分はなにも争いを望んでいたわけではない、だのに、どうして誰も彼もが自分から殺されに来るんだ!?
それでも相手が民間人であれば…明日食うにも困るがゆえ、仕方なしに凶行に走ったというのであれば、まだしも後悔の余地はあった。だが、今回の相手は軍人だ。生殺与奪に関して心得のある、自分が何をしているのかをきちんとわきまえた連中だ。そういう輩が、明日を生きるためでなく、ただ私欲のために襲いかかってきた。十人近くで徒党を組んで、一人の女を殺すために。
地雷処理を任されただけでも面倒なのに、こんなことにまで頭を突っ込みたくはなかった。そして、ある点に疑問を抱く…もしマクシミッチがフォメンコとグルなら、自分が生きてこの場所から出られる望みはないのではないか、と。
*Intel*
Fomenkoの部隊はAkhmetの現在地から一定距離はなれた場所からスポーンする。スポーン地点が固定ではないため、出現と同時に至近距離から狙い撃ちする、といったことは不可能だが、あらかじめ出現位置を予測して地雷を仕掛けておくことで一網打尽にすることができる。直前のカットシーン後に倉庫の中心部分から移動しなかった場合、Fomenkoの部隊はトンネルの真ん中からやや先、水筒が二個入った木箱のあたりからスポーンする。
クレイモアは感知範囲が狭いものの、作動時の威力と効果範囲は折り紙つきだ。どうやら本作のAIは発見した地雷を避けて行動するようなので、うまく仕掛けたい。
地雷処理を終えて地上へ戻ったニコラは、マクシミッチに地下で起きたことをありのまま話した。てっきり抹殺されるものとばかり思っていたが、どうやらマクシミッチはフォメンコの「悪癖」をそれとなく察していたらしく、地下での戦闘について特に咎め立てることはしなかった。
ペンタゴンへ帰還したニコラはコーネフ大佐にも釈明をする必要があったが、彼もニコラを強く追及することはなかった。むしろフォメンコの抜けた穴を埋めるためにニコラをスカウトしたほどだったが、ニコラはこれを丁寧に辞退した。
報酬として幾らかの物資を受け取り、ニコラはアパートへ戻る。
同居人:
「ああ、神様!これは奇跡に違いないわ、あなたが戻ってくるなんて!」
ニコラ:
「ボクも無事に戻ってこれるとは思わなかったよ」
同居人:
「なんですって!?嘘つき!出て行くとき、なにも危険はないって言ってたくせに!」
ニコラ:
「…しまった。つい本音が」
ヒステリックな声をあげる同居人に、ニコラは思わず顔を背ける。普段はうんざりするようながみがみ声だが、今はそれを聞いて安堵していた。それは彼女が無事であることの証明であり、そして、世界がこんな有り様になる前の生活に戻れたような気分になれたからかもしれない。もちろん、後者はただの錯覚以外の何物でもなかったが。
部屋には同居人だけでなく、隣人のヴィテクもいた。彼が銃を持っていて、部屋が荒らされていないということは、先日のような暴徒から同居人を守ってくれていたということだろう。あの日の騒ぎを知らなかったはずはないから、彼が暴徒の列に加わらなかったこと、そしてニコラがいないことを知ったうえでやましい気持ちを抱かなかったことは、彼への信頼を証明するのに充分な役に立っていた。
ヴィテク:
「軍人たちに連れて行かれたと聞いたから、心配していたが…なんとまあ、たいしたお土産を持ってきたな!これだけの食料があれば、暫くは食うに困らない」
同居人:
「でも、心配だわ。これだけのものを持っていたら、まだ誰かが奪いにくるんじゃないかしら」
ニコラ:
「その点についてなんだけど…ボクに提案がある。いまボクたちに必要なのは、ご近所同士の相互扶助ってやつじゃないかと思うんだけど」
ヴィテク:
「どういうことだ?その…話の要点が掴めんが」
ニコラ:
「みんなに食料を分け与えるんだ。そもそも先日のような悲劇が起きたのは、食べ物が手に入らないような状況で、ああでもしないと飢え死にを免れなかったからだ…もちろん、タダっていうわけじゃない。この建物のまわりにバリケードを作ろうと思う、悪い連中が押し入ってきたりしないようにね。それを手伝ってもらうんだ」
同居人:
「バリケード?なんだか物々しいわね…それは本当に必要なもの?それに、せっかく手に入れた食料をばら撒くような行為も賛成しかねるわ。そりゃあ、みんなは感謝してくれるでしょうけど…食料を持って、他の土地に移るんじゃ駄目なの?なにも、ここに留まる必要はないでしょう?」
ニコラ:
「行く宛てがあるならね。それに、荷物をまとめて出て行くといっても、そう簡単にはいかないよ。どうやって荷物を運ぶんだい?部屋にあるものを全部持ち出すってわけにはいかないし、山のような荷物を抱えて移動するのは大変だ。なにより、ひどく目立つ。略奪者の格好の標的になってしまうよ」
ヴィテク:
「確かにな…」
ニコラ:
「どうせ全部持っていけないなら、幾らかの食料を失ってでも、ここに留まったほうが安全だ。近所の人たちも、自分たちが作ったバリケードがどれだけ頑丈か、自分で試す気にはならないだろうし」
こうしてニコラは近隣住民を説得し、食料の配給と引き換えにバリケードの構築をはじめた。仕事もなく、食料を手に入れるあてもなかった住民の多くは快く手を貸し、そしてニコラに感謝した。とはいえ全員が飢える心配がないほどの食料を分けるほどの余裕はニコラにもなく、冬を無事に乗り切ることができた家庭は多くなかった。
市場をはじめとする周辺地域の治安維持はコーネフ大佐の率いる軍隊が引き受けており、目立つ腕章を身につけ不穏分子に目を光らせる彼らの存在は頼れる自警団として充分に機能していた。住民からの通報を受けると彼等は即座に行動し、拘束された犯罪者はその場で射殺された。
しかし時間が経つにつれ、自らの立場を悪用する兵士たちの姿が目立つようになった。無論、そうした兵士の存在はコーネフ大佐の意にそぐわぬものだったが、大佐も部隊のすべてを自らの手でコントロールできているわけではなかった。
やがて隊内に複数の派閥が形成されると、兵隊同士の諍いが後を絶たなくなった。誰もがそのことを悪しき予兆として捉えていたが、事態の解決を図れる者など存在しなかった。
そして夏が訪れる…
【続く】
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