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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
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2020/05/21 (Thu)04:42


 
 
 
 
 

 

ATOM RPG Replay

【 Twenty Years In One Gasp 】

Part.9

*本プレイ記には若干の創作や脚色が含まれます。
 
 
 

 
 
 
 
 
 
「それで…コソイが君をここへ送ったというんだな?うちとは関わりのない犯罪結社のパスポートを持っていたという理由で?まったく、あいつは!それで、お嬢さん、名前は?言っておくが、本名だぞ。カスみたいな偽名を使ってみろ、いますぐここから叩き出すからな」
「…ナターシャ・クロートキィ」
 廃工場へと到着したナターシャは、ギャング…彼らが言うには治安維持部隊…のボス、デニス・デニソビッチの事務所にいた。
 短機関銃をかまえた屈強なボディガードに背中を晒さざるを得ない無防備な状況で、ギャングというよりは工場勤務の中間管理職のような神経質な態度で接するダンを前に、ナターシャはこれから起こる事態がどういったものになるのか、いまひとつ想像力を働かせることができないでいた。
「それで、ミスター・デニス。なにか、私向けの仕事を…」
「仕事だ?お前向けの?殺し屋向けの"清掃業務"でも頼めというのか?冗談だろう!まったく…まあ、いい。人間、どういう取り得があるかわからんものだ。隣のでかい建物へ行け、かつての主要生産施設で、いまは兵舎として使っている。鍵のかかった扉の前にいる二人の男のうち、でかいほうと話せ。シシャクという名だ。然るべき役割をお前に与えてくれるだろう」
 それだけ言うと、ダンは蝿でも払うかのような仕草でナターシャを追い出した。
 
(Danに対して頑なに名乗るのを拒否した場合は、それ以降一切相手にされなくなり、クエストラインがストップする。実績には一度も本名を名乗らずにクリアするというものもあるが、それは本来推奨されたプレイスタイルというよりも、あくまで上級者向けの高難易度実績だろう)
 
 
 
 
 
 
 ここはかつて煉瓦工場であったとコソイは言っていた。はじめは何かの冗談かと思ったが、巨大な煙突の焼成窯や建物の脇に山と積まれた煉瓦を見ると、どうやら本当のことらしい。そういえば、工場へ続く道の途中で見かけたZILの荷台に大量の煉瓦が積まれていた気がする。
 現在は閉鎖されているトンネルの先ははじめ、鉱山か何かかと思ったが、おそらく煉瓦用の土の採掘が行われていたのだろうと思われる。
 建物内には戦前に使われていた機材が一切残されていなかったので、それ以上の推測はできなかった。そんなことをする意味もなかったが。
 
 
 
 
 
 
 厳重に施錠された鉄格子の前に、二人の男が立っている。向かって左側に立つ男はいやらしいニヤニヤ笑いを絶やさず、かたや右側に立つ男は顔面を抉るように大きくラインの入った傷跡を誇示するかのように厳めしい表情をしている。
 いずれもプライベートで付き合いたいと思う相手ではなかった。
 ナターシャは、二人のうち背が高いほう…右側にいる凶悪な顔つきの男に話しかける。
「あなたがシシャク?ダンに言われてここに来たのだけど」
「おまえ、見ない顔だな。新入りか、こいつはまた…随分と可愛らしい子豚ちゃんだな、えぇ?ダンが新入りを寄越してきたってことは、まあ、そういうことなんだろうな。ちょっと待ってろ、いまこの扉の鍵を開けてやるからな。子豚ちゃん」
 どうやら、このシシャクという男は"子豚ちゃん"という言葉を女性に対するもっとも有効な罵倒語だと考えているようだった。
 そんなくだらない挑発に乗ってやる義理もないだろう。ワルが相手だからといって、舐められないようタフガイぶるのが常に最善の手というわけではない。
 それよりも、これから何が行われようとしているのかに神経を集中させるべきだ。
 おそらくこのシシャクという男は新人教育か、新入りをテストするための試験官のような役割を担っているのだろう。彼の態度と、彼に接する他の者の反応から、シシャクがギャングの中でもそれなりに高い地位にあることは容易に察せられた。
 それはそれとして、シシャクは鍵を開けるのに随分と手こずっているようだった。鍵束にぶら下がった大量の鍵を一つ一つ順番に試しているように見える。これは忍耐力のテストか、それとも何かの冗談か?
 けっきょく一時間はたっぷりかけたあと、ようやく鉄格子の開錠に成功したシシャクは、ナターシャを伴って暴君然とした足取りで部屋の中へ入っていった。
 
 
 
 
 
 
「ゲストルームへようこそ、子豚ちゃん。俺たちの特別なお友達を紹介しよう!」そう言い、シシャクは鮫を思わせる残忍な笑みを浮かべた。
 そこは一種の独房のようだった。狭い空間にベッドと便所が置かれ、汚物に濡れた床の上に小太りの男が怯えた様子でこちらを見つめている。
 感情を表に出すことなく、ナターシャはシシャクに尋ねる。
「こいつは?」
「オトラドノエで捕まえたクソ野郎だ。なんでも、こいつは大金を持ってるとかでな。ちょいとばかり痛めつけて金の在り処を吐かせようと思ったんだが、なんとも口が固くて」
 そう言って、シシャクは囚人の頭をはたきはじめた。それほど力を入れてないはずだが、叩かれるたびに囚人は恐怖に身を震わせ、ぎゅっと目を閉じてこの瞬間が過ぎ去るのを待つために身を固くこわばらせた。
 おそらくはこの囚人がコバレフの言っていた村のエンジニアだろう。シシャクの言動とも一致する。
 それにしても、シシャクや、他のギャングたちは本当にこの目前の貧相な男が大金を持っていると考えているのか…そうは思わなかった。特にシシャクは、エンジニアが金を持っていないことを確信したうえで暴力を振るうことを楽しんでいるようだった。
「それで、私は何をすれば?」
「なに、簡単なことさ」
 シシャクはシャツの裾をひっぱりだすと、ベルトに挟んであった拳銃をナターシャに渡した。
 表面が丁寧に磨かれた、トカレフTT-33。ぴかぴかと光っているのは、特殊な表面処理を施しているのか、それとも塗装が剥がれて鉄の下地が見えているだけか。
「薬室に一発だけ弾が入ってる。そして、子豚ちゃん、お前の目の前に、それを使うのにあつらえ向けの羊の頭が用意されてるってわけだ。さあ、どうする?好きなようにそいつを使ってみろよ、さぁ、さぁ!」
 そう言って囃し立てながら、シシャクともう一人の男は出口を塞ぐようにナターシャの背後に立った。
「別に殺しても構わんぞ、どうせ、そいつはずっと同じことしか言わねぇ…"私はお金なんか持っていません、私は億万長者なんかじゃありません"てな!」
 その言葉を聞いて、エンジニアはがくりと身体を仰け反らせた。よくよく観察すると、両手は後ろ手にしばられ、口には猿轡が噛まされている。
 なんとも、ありきたりな…ギャングらしい"入団試験"だ、とナターシャは思う。
 かつてナターシャはこれとまったく同じような状況を経験したことがある。そのときも、握らされたのはトカレフだった。
 だからナターシャは拳銃をまっすぐエンジニアの頭に向け、カチリと音を立てて撃鉄を起こすと、躊躇なく引き金をひいた。
 パチン。
 乾いたドライファイアの音が響き、ナターシャは怪訝な表情でトカレフを見つめる。遊底を引き、薬室に弾が入っていないのを見た直後に、シシャクから乱暴に銃を取り上げられた。
「おいおい!お前、まさか本当に弾が入ってたなんて思ってないよな?まったく、豚野郎め。そのクソにはまだ利用価値がある、殺させやしねぇよ。それにしても、一切の躊躇なしとはな。ダンがなんと言うやら」
 口ほどには不快に思っていない様子でシシャクはそう吐き捨てると、相変わらずのニヤニヤ笑いを浮かべたまま部屋を出ていった。おそらく事の顛末をダンに報告しに行くのだろう。自分も後についていくべきだ。
 当たり前だが…ナターシャは、薬室に弾が入っていないことを確信していた。もし装填されていれば、エジェクターが出っ張っていたはずだ。わざわざ遊底を引いて確認するまでもない。空撃ちしたあと、困惑したような仕草を見せたのはちょっとした演技だった。
 昔おなじような状況に出くわしたときは、エジェクターが出っ張っていた。それどころか、弾倉一杯に弾が詰められてもいた。そのときの感触が今も手に残っている。
 
 
 
 
 
 
 少し遅れて事務所へ赴くと、いままさにシシャクがダンへの報告を終えたところだった。
 厳ついボディガードの脇を通り抜け、シシャクと入れ違いにダンと対面したナターシャは、ちょうど熱心になにごとかを書き留めたばかりの手帳をジャケットの内ポケットに入れたばかりだった。
「今回の件については、非常に興味深いケースの一つ…と言わざるを得ないだろうな」
「と、言いますと」思わせぶりな口調でつぶやくダンに、ナターシャは問いかける。
 ダンが言った。
「私の目で見た限りでは、さらに言えば初対面での印象と、そのときに君が取った態度からすれば、容赦なく人を殺そうとするような人物には見えなかったのでね。なぜあのような行動を取ったか説明してもらえるかね?」
「私は銃を渡され、それを使えと言われました。他に多くの選択肢があったとは思いませんが、あなたにとってはそれが意外だったというわけですか?」
「そうだ。確かに、君には殺す選択肢があった。しかし、本当にそれしか無かったかね?シシャクは、君に囚人を処刑しろとは言わなかったはずだ。殺しても構わない、とは言ったかもしれないが。そういう状況で、囚人の頭を撃ち抜くことを真っ先に選んだ理由を聞かせてほしいのだが」
 ダンはナターシャの反応を窺っていた。どうやらダンはナターシャに関心を抱いているようだ。"正確な疑念を抱いている"と言い替えてもいいが。
 さあ、どう答える?
 顔見知りでもない男の生死に関心などなかった、と言うか。それとも、本当は薬室に弾が入っていないのを知っていたと言うべきか。あるいは、たんに血が見たかっただけとでも言うか。
 周囲を見回し、今日はなんと良い天気だろう、などと無関係なことに少しのあいだだけ思考の処理能力を割いたのち、ナターシャはダンの顔をまっすぐに見つめ、声を潜めて言った。
「すこし、昔話をしても?」
「それが必要なら」あまり歓迎してはいない様子でダンが言った。
「私はかつて、とあるギャング団に所属していました。その入団試験で、私は拳銃を握らされたんです。今日と同じように。目の前には、椅子に縛りつけられた警官がいて…酷い暴行を受けて血まみれの警官が、命乞いをしていました。私は手渡された拳銃で、警官を撃てと言われました。できなければお前を殺す、と。それで…私は警官の頭を撃ち抜きました」
「…… …… ……」
「その行為を賞賛され、晴れて仲間の一人として迎えられた…一度そういうことを経験したあとで、別の選択肢があるなどと考えるのは、難しいものです」
「なるほどな。よくわかった」
「なにがわかりました?」
「その、君がかつて所属していたギャングについてだが。若い集団だったかね?」
「はい」
「乱暴な連中だったかね?その、意味もなく他人を傷つけたり、財布を盗むために人を殺したりといったような?」
「はい」
「だろうと思った。まさにそこだよ、私と君の間に横たわる認識の差、組織という物の見方に対するビジョンのズレというやつは」
 ふたたび手帳を取り出したダンはなにやら熱心に書きつけながら、言葉を続けた。
「ときにはコロシが金になることもある。それしか手段がない場合は、しかし、大抵の場合は無用なトラブルの元でしかない…ビジネスに殺人狂は不要だ。君は我々をただのギャングだと思っている、だから自身の過去と現在の状況を重ねて見ている、そうではないかね?しかし、それは大きな見当違いというものだ」
「なるほど」
「同意が得られたようなら、君に一つ仕事を与えよう。ここからそう遠くない場所に、密造酒の製造グループの拠点がある。そこへ行って、我々の庇護下へ入るよう説得するのだ。上納金を払うか…それとも、すべてを失うか」
「なるべく暴力はなしで、ですか?」
「もちろんだ!私が欲しいのは金だ、死体の山じゃない。すでに連中は多くの顧客を掴まえ、多額の利益をあげている。いわば、ビジネスチャンスだ。金の卵を産む雌鳥を、わざわざ踏む潰すような真似をする必要があるかね?それに、密造酒の製造法…そいつも手に入れられれば言うことはない」
「わかりました」
 
 事務所を出て、ナターシャは空を仰ぐ。
 自分の過去について、ダンには言わなかったことがある。
 入団試験を受けたのは七歳か八歳のときで、路地裏でゴミを漁っていたところを捕まってリンチに遭い、血まみれで意識朦朧としているところに無理矢理拳銃を握らされたこと。
 重い鋼鉄のかたまりの先に、涙を流しながら必死に助命を懇願する警察官の顔があり、躊躇した矢先、自分のこめかみにも銃口が突きつけられ…「撃てなければお前を殺す」そう言われて、どうしても警官を死なせたくなかったナターシャは、ぎゅっと目を閉じて、ただ、デタラメに引き金をひいた。
 誰かがヒュウと口笛を吹くのを聞き、ゆっくりを目を開けたとき、自分の顔が返り血に濡れていることに気がついた。銃弾は、警官の両目と鼻を結ぶ三角形のど真ん中に命中していた。即死だった。
 それ以来、欲しくもない金のために、やりたくもない殺しを山のように重ねてきた。対価は常に自分の命だった。逆らえば殺される、ただそれを避けるためにクズどものいいなりになっていた。
 軍に入隊したのも、そんな境遇から抜け出すためだ。ただどこかに逃げたというだけでは、ギャングたちはどこまでも追ってきて、ナターシャを、彼女に関わった人間ごとすべてを殺し尽くすだろう。だが、戦場まで追ってくるやつがいるだろうか?
 しかしまあ…軍に入隊したらしたで、また別の地獄に放り込まれる破目になったわけだが。
 この工場に集まっている連中は、どちらかといえばギャングというよりもマフィアに近いらしかった。あくまでも犯罪はビジネスであり、暴力や殺人はその手段に過ぎない、というわけだ。しかし、シシャクのような人間がいるのを見る限り、ダンが自分で言っているほど真っ当な連中であるとは思えなかった。
 行動を決断するときだった。
 
 
 
 
 
 [次回へつづく]
 
 
 

 
 
 
 どうも、グレアムです。えーと、今回はあんまり書くことがないです。たんに話がほとんど進んでいないだけとも言う。訳しながらプレイしているとどうしてもダイアログの内容をそのまま記事に持ってきてしまい、どうでもいい部分まで訳したのを「せっかくだから」と入れて文章量ばっかり多くなってしまうんですが、個人的な理想としては適当に意訳したうえで必要な部分だけ取り出しつつ創作を混ぜてごった煮にするというスタイルを目指しているので。
 スタンス的にはやる夫スレとかああいうのが近いので、徹頭徹尾原作に忠実ではない、という部分をどうにか自然に主張できたらな、とは思ってます。
 
 ちなみに入団試験でShishakに拳銃を渡されたときにどうリアクションを取るかで次にDanから引き受けるクエストが変化します。いずれにしても一筋縄ではいかないので、どっちが良いかは俺にはちょっと判断がつかないですね。個人的には撃たずに殴ったさいに分岐するもう一つのクエストのほうが好みですが。調査に向かったあと、廃工場に出現する荒事専門のギャングがいかにもプロっぽくてかっこいいんですよ。スピーチチャレンジに成功すればヘルメットのレシピも教えてもらえますし。
 
 
 
 
 


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