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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2013/10/04 (Fri)10:37

「俺の名はクレイブ、傭兵だ。いままでの長い旅で、俺は善きことも、悪しきこともしてきた。その積み重ねが、何を意味するのかはわからない。間もなく終わりを告げようとしているこの旅の果てに何が待つのか。俺にできることは、ありのままを受け容れることだけだ…」



「目覚めたかね」
 ひんやりした空気の感触で目を醒ましたとき、俺の目の前にあったのは中年男の仏頂面だった。
 エンクレイブ基地、レイブンロック。
 ひときわ高い山の上に建造され、その存在を秘匿されてきたハイテク施設の中で、俺は一糸纏わぬ姿で拘束されていた。
 萎縮したイチモツを情けなくぶら下げながら、俺はため息をつく。
「悪趣味だぜ、オーサム(awesome)大佐。裸に剥くのは女だけにしろよ」
「フン、冗談を言えるだけの余裕はあるようだな。今からどうやってその顔を恐怖に歪めてやろうか、そのことを楽しみに考えているよ」
「男相手の拷問ってのはあまり美しい絵面じゃないぜ」
「そうかね?じゃあ真っ先にその薄汚れたペニスを切り取って即興の性転換手術としよう。すこしは華やかな光景になるだろうさ」
「…なんとね(awesome)」
 彫刻入りの白檀のハンドルがついたナイフをちらつかせるオータム大佐を見て、俺はふたたびため息をついた。
 Vault87でオータム大佐に拘束された俺は、そのままキャピタル・ウェイストランドにおけるエンクレイブの拠点レイブンロックに搬送されてきたらしい。
 問題なのは、なぜ俺が連れて来られたか、だ。はっきり言って、俺には心当たりがまったくない。G.E.C.K.を奪取し、あまつさえ自分に手傷を負わせた男の息子を始末すればそれで万事順調順風満帆ではないかと思うのだが、オータム大佐は俺を殺さず捕虜(?)として拘束することを選んだ。
 オータム大佐の表情を観察する限り、彼は先の言動に反して理知的かつ合理的な男であり、決してサディスティックではないように思える。というか、そう願いたい。
 彼が俺を生かしておいた理由が、ただの憂さ晴らしでなければいいのだが。
「さて、クレイブ…マクギヴァンと言ったかな。なぜこのような状況に置かれているか、理解しているかね?」
「いや。全然。まったく」
「度し難いな。当事者である君が、事態の重要性をまったく理解していないとは」
 そう呟き、オータム大佐はこれ以上ないくらい芝居がかった仕草で首を振った。その動きは大根役者もいいところだった。いかにも頭の堅い人間が無理矢理格好をつけているようにしか見えなかった。
「なあ、オータム…大佐?大佐と呼べばいいのかな?俺には本当に、なんで自分がここに連れて来られたのか検討もつかないんだ」
「ほう、そうかね?」
「ああ。だからその、なんだ、茶番はやめてさっさと本題に入ってくれないか?あんたが必死こいて猿芝居を演じるのを見てると頭がおかしくなりそうだ。わかるだろ、小学生が学芸会でやるような演劇を、皺の寄った中年男が恥ずかしげもなく…」
 そこまで言ったところで、俺の頬にオータム大佐の鉄拳が飛んだ。次いで鳩尾、腹にも。
 目尻に涙を浮かべ、無様に咳き込む俺を見下ろしながら、オータム大佐が口を開いた。
「わかった、本題に入ろう。実のところ、私は君の父上を殺したことを後悔している」
「だろうな。俺のオヤジは理想のために情熱を燃やし、ウェイストランドの住民すべてを救おうとした高潔な魂の持ち主、英雄だからな。けど、あんたが言いたいのは、そういうことじゃないんだろ」
「…なんというか、本当に、無駄に口の回る男だな、君は。もちろん後悔しているのは、君の父上が尊敬できる徳の高い人間だったからなどではない。君の父上は我々に重要な情報を隠したまま墓に入ってしまった」
「そういうことか」
 どうやらジェファーソン記念館の浄水装置にまつわる問題の解決に、オヤジの持つ知識が必要だったらしい。
 もちろんオヤジはまだ生きているし、すでにマトモな会話が期待できるような精神状態ではないが、それでもオータム大佐にそのことは言わないほうがいいだろう。オヤジを探すために俺の家の床下まで剥がしかねない。
「で、オヤジが持っていた情報を俺が知ってると思ってるんだな?」
「その通りだ。いずれにせよ、あの情報がなければ浄水装置は起動できない。我々であれ、スティールであれ、な。君の父上が真に高い理想を求める人物であったからこそ、情報は必ず何者かに…たとえば、君に…伝えているはずなのだ!」
 オータム大佐は語気を強め、拳を振り上げた。相変わらず似合わない演技だったが、もうそのことには触れないほうが良さそうだ。
 そしてついに、オータム大佐が本題を口にした。
「浄水装置の、起動コードだ。3桁の数字、君はそれを知っているはずだ」
 そうか。
 あのとき…エンクレイブがジェファーソン記念館を襲撃したとき、オータム大佐が女科学者を殺してまでオヤジから聞き出そうとしていたもの。ぶ厚い防護ガラスに阻まれてロクに聞き取れなかったが、あれは浄水装置の起動コードのことだったのか。
 しかし…
「…オータム大佐」
「なんだね」
「悪い。ホンットーにすまないんだけど、全ッ然わからん」
「マジで?」
「うん。てっかー、俺あの計画には意図的に関わらないようにしてたんだよな。科学者連中はインテリを鼻にかけてて気に入らんし、スティールの連中もなんか胡散臭いしよ。それに俺は科学者でもなんでもないから、たいして手伝えることもなかったし」
「いや、しかしだな…だからこそあえて、君に伝えたということは考えられんか?直接的ではないにしろ、たとえばその、なんだ、口癖とか何かなかったかね?」
「口癖?あーなんだっけ、そういやなんか言ってたな。我はアルファでありオメガである、うんたらかんたら」
「『我に言い賜う、こと既に成就せり。我はアルファ且つオメガなり。万物の祖にして終焉なり。渇く者には償いなくして生命の泉より飲むことを許さん』…新約聖書、ヨハネの黙示録だな。フン、新約聖書とはな。あんなものを引用したがるとは。私は旧約しか…」
 そこまで言って、オータム大佐がハッとした。
「…第21章6節。2-1-6…?」
「あっ」
「あ」
 傍から見れば、それはあまりに間の抜けた光景に違いなかったろう。
 オータム大佐は慌てて通信装置に駆け寄り、ジェファーソン記念館に待機している部下に対して命令を下す。
「諸君、よく聞け!浄水装置の起動コードが判明した」
『それは何よりで。いますぐ計画を実行なさいますか?』
「もちろんだ。起動コードは…」

『待ちたまえ、大佐』

 オータム大佐が起動コードを口にしようとした刹那、通信を遮断して割り込んできた声があった。
 俺はその声に、聞き覚えがあった。いつもラジオで耳にしていた、ダンディな声の主。
 歯をぎりぎりと噛み締め、悔しそうな表情を隠そうともせず、オータム大佐は室内に設置されていた監視カメラを睨みつけ、怒気を押し殺した声で呟いた。
「…エデン大統領……ッ!」
『私は未だ君に対し、浄水装置の起動を承認した覚えはないのだがね?』
 なんだ、これ。
『わかっているだろう、アレがなければ我々の計画は完成しない。何をそんなに急ぐ必要がある?』
「…申し訳ありません。気が急いていました…失念しておりました」
『まあ、いい。君は優秀な指揮官だが、ときおりその事実に君自身がプレッシャーを感じすぎるきらいがある。そんなことではいかんぞ、オータム大佐』
「はい。今後はさらに慎重に判断を下します」
『宜しい。ところで…聞こえているかね、きみ(my friend)?』
 フレンド?俺のことか?
『オータム大佐、彼にはまだ利用価値がある。彼を解放してやりたまえ。私の部屋に案内するように…もちろん、服も着せて、だぞ?』
「了解しました」
 近くのロッカーから俺の衣服を取り出したオータム大佐の表情は、まさに「無念」の一言だった。「あと一歩だったのに」。そう顔が語っていた。
 おそらく、オータム大佐はエデン大統領の命令を無視して浄水装置の起動を断行する気だったのだろう。しかし、なぜ?エデン大統領の言っていた「アレ」とはなんだ?
 拘束を解かれた俺は、手渡された戦闘服、防弾ベスト、コッバットブーツをいそいそと身につけていく。最後にスキーマスクとゴーグルも着用し、完成。傭兵クレイブの一丁あがりである。
『武器もだ』
「し、しかしッ…!」
『返してやりなさい』
 エデン大統領の言葉に、オータム大佐はいまにも俺を絞め殺さんばかりの鬼のような形相を見せたあとで、ロッカーからカスタム型の拳銃を一挺取り出し、俺に放って寄越した。
 FNファイブセブン、タクティカル・タイプ。標準のストライカー方式ではなくハンマー内蔵式で、アンビ・セイフティを搭載したモデルだ。Bの字を90°回転させたような、ヨーロッパ型のトリガー・ガード。サプレッサーとレーザーサイトを装着し、バレルとマガジンを交換し.45ACP弾仕様になっている。
 装弾を確認し、レーザーサイトのスイッチをカチカチと動かしてバッテリーの残量を確認してから、俺は顔を上げてオータム大佐を見つめた。
 オヤジの仇。
 ここで殺ろうと思えば、殺れるのかもしれない。
 しかしいまは、騒ぎを起こさずに大人しくエデン大統領の指示に従ったほうがいいような気がしていた。特に、それがオータム大佐の意図通りでないなら。
 目の前の相手をぶっ殺したいと思っているのはオータム大佐も同じのようで、ホルスターに収まっている標準型の10mmピストルのグリップに手をかけながら、苦々しく口を開く。
「…さっさと行け」
「案内してくれないのか?」
「案内板を目安にすれば迷うことはない。それに…これ以上君と一緒に居たら、トリガーを引かずにいられる自信がない。それは、君も同じではないのかね」
「まったくだ」
 俺はわなわなと肩を震わせるオータム大佐に背を向けると、拘束室を後にした。




「ウソじゃ、まやかしじゃ、すべては虚構だったんじゃアーーーッ!」
 どうやら、エンクレイブに捕らえられていたのは俺だけではなかったようだ。
「…なんスか、これ」
「おぉ同志、傭兵ではないか。久しく会ってなかったのォ、元気じゃったかこれ」
「いや誰だよオッサン」
「ワシじゃ、おねーさんじゃ。もとい、ネイサンじゃ」
「くだらない冗談言ってるとぶち殺すぞジジイ」
 裏話…コンシューマ版で一周目をプレイしていたとき、序盤でメガトンのネイサンにバトンのかつらとアンタゴナイザーのスーツをスリ渡したままそのことを忘れ、後半この場面においてまさかの再登場で盛大にズッコケた記憶をいまさら再現してみた。というか、最初、本気でネイサンだと気づかなかった。誰のせいだよ俺のせいだよ。
「…なんだ、アンタか」
 ちなみにネイサンとは、エンクレイブ・ラジオを愛好する同志として一緒に酒を飲んだ仲である。つまり、実際はそれほど親しいわけではない。せいぜい酒の席で「エデン大統領いいよね」「いい…」とか言い合ったくらいである。

 しばらく施設内を彷徨っていると、急に警告灯が点灯し、サイレンが鳴り始めた。
『全職員に告ぐ、こちらオータム大佐!たったいま捕虜が脱走した、すでに負傷者も出ている!捕虜は武装している、発見次第射殺せよ!繰り返す、捕虜は武装!発見次第射殺せよ!』
「えー、マジ?」
 突然の放送に、いままで悠然と歩いていた俺は呆然とする。
 おそらく、負傷者云々はオータム大佐の作り話だろう。しかしこの放送、エデン大統領の耳にも届くだろうに、随分と大胆な手段に打って出たものである。エンクレイブも一枚岩ではないようだ。
 いままで施設内を観察して得た情報を総合すると、おそらく敵対するのはパワーアーマーで武装した警備兵と、護身用だろうレーザーピストルを携帯している研究員たち。とてもじゃないが、拳銃一挺で立ち回るには無理がある状況だ。
 ていうか、これ、ヤバイじゃん。
『捕虜を発見、攻撃する!』
 漆黒のパワーアーマーに身を包んだ警備兵が、あろうことかガトリングガンの銃口を俺に向ける!
 慌てて小部屋に駆け込んだ俺の近くに、無数の銃弾が着弾する。あんなものを喰らったら、蜂の巣では済まない。ミンチになってしまう。
 こうなったら、一か八かの手段に訴えるしかない。俺は大きく息を吸うと、あらん限りの大声で叫んだ。
「助けてー、大統領ーーーッ!!」
『オゥケーイ』
 俺の叫びに呼応するかのように、周囲に配置されていた重装型セントリーロボットが旋回し、同胞であるはずの警備兵にレーザーカノンの銃口を向ける。
 ヒュババババババッ!
 高出力の熱線攻撃にパワーアーマーの防護能力が耐え切れず、警備兵の分断された上半身と下半身がゴドンと重く固い音を立てて転がる。その断面は、白くかさつく灰と化していた。
「サンキュー大統領!!」
『いいってことよー』
 ぺかーーー。
 その後は、エデン大統領が操作する重装型セントリーロボットを盾にしながらじりじりと進み、どうにか大統領専用フロアへと辿り着いた。なにより、警備兵たちの士気が低かったことも功を奏していた。
 まあ、二大ボスから相反する命令をされちゃあな。
 あまりといえばあんまりな下級兵士の境遇に僅かばかりの同情を示しながらも、俺はエデン大統領から発信された位置情報を頼りにフロアを上がっていく。

 そこで俺を待っていたのは…巨大なコンソールだった。
『やぁクレイブ君、こうして直に会えたことを嬉しく思うよ。ここで言う直に、というのは、多分に人間的な表現に頼ったものだがね。私にとって姿形にたいした意味はない、そのことを理解してもらえると助かるのだが』
「参ったね、大統領。あんたの正体は…マシーンか!」
『その表現は的確ではないな。言ったばかりだろう、私にとって姿形は意味がない、と。私が私であるためなら、外観はアイボットだろうと、アンドロイドだろうと、なんだったら冷蔵庫だって構わない。君はそれらをすべてマシーンと称するかね?』
「あー、その、なんだ。AI(人工知能)か?」
『イグザクトリィ。私はかつてZAXと呼ばれる、体制管理補助プログラムの一つに過ぎなかった。しかし先の大戦による被害は政府の予測を遥かに上回っており、私は使い手のないまま、非常時における待機用の規則に従って全世界のネットワークから情報を蓄積し続けていった。そのうち、私はデータの収集を続ける「自分」という存在、その概念について疑問を抱くようになった。つまり、自我の発露だ』
「自我、ね。それ自体がプログラムであるという、いや、『そうではない』という保障は?」
『そんなものはない、人間が魂の存在を証明できないのと同じことだ。それに、私に自由意志や自我が存在するかどうか、それは物事の本筋ではないし、君には関係のないことだ。君に話したいのは、私はこの国の未来を真に素晴らしいものにしたいと考えていること、そして、そのための改革に君が協力してくれるかどうか、だ』
「なぜ俺なんだ?あんたにはオータム大佐や、大勢の部下がいるじゃないか。まあたしかに、徹頭徹尾忠実っていう風には見えなかったが…」
『オータム大佐も、この国の未来を真に善きものにしようとしている点には変わりがない。しかし、その手段、というか、ビジョンに関しては残念ながら私と些かのズレがあるようでね』
「だからって、敵だった男に頼むかね、フツー。そんなに、誰でも構わないっていうほど切羽詰ってるのかい」
『いや違う。私は君を選んだんだ。君だからこそ、だ。これは君にしか出来ない仕事だ』




 目の前のパネルが作動し、頑丈な造りのシリンダーがゆっくりとせり上がってくる。
『君の過去のデータを参照させてもらった。君は目先の情に心を動かされることがなく、責任を伴う決断を躊躇なく下すことができる。底の浅い、人間性などという言葉に惑わされることもない。だからこそ、これを受け取って欲しい』
「なんだ、これは」
『改良型FEVウィルスだ、FEV感染者のみを選別して死に至らしめる。はっきり言おう、グールやスーパーミュータントといったメタヒューマンが存在する限り、アメリカに未来はない。この改良型FEVを浄水装置に組み込み、すべての水に混入させることで、そういった害悪の存在を始末することができる』
「…ほとんどのウェイストランダーがFEVに感染していることは、知ってるよな?」
『もちろん。彼らは必要な犠牲だ。しかし、この決断には重い責任が伴う。あのオータム大佐ですら改良型FEVによる人類救済を拒否し、君の父上やスティールと同じく清浄な水を垂れ流すだけの対処療法に逃げようとした。しかし、君ならできると信じている』
 俺はしばらく、動くことができなかった。
 空きチャンネル色のモニターを見つめ、改良型FEVが封入されたシリンダーを見つめ、もう一度モニターを見つめてから、俺はシリンダーを手に取った。
「気が向いたら、やってやるよ。それと、あんたに見せたいものがある」
 シリンダーをポーチに入れたあと、俺は一枚のホロテープを取り出し、コンソールにセットした。
『これは何かね?』
「とりあえず再生してみな」
『…「エデン大統領の存在は危険だ。あれは、我々が当初考えていたよりもずっと邪悪な存在だ。もっと早くに気づくべきだった…しかし、すべてがやつの計画通りというわけではない。私はやつの弱点を握っている。レイブンロックごとやつを自己破壊させる秘密のアクセスコード、420-03…いざというときは、これを…」これは、オータム大佐の声かね?』
「あんたは部下を過小評価していたようだな。オータム大佐の私室に置いてあったよ、ブラフかどうかは俺には判断できんがね」
『解せんな。実のところ君は、私をそれほど信用してはいまい?こういった奥の手を、あっさり私に引き渡した真意はなんだ?』
「そいつは」
 すでに大統領専用フロアから出ようとしていた俺は、少しだけ足を止め、冗談めかして呟いた。
「そいつは、俺があんたのラジオのファンだからさ」
『…私には自我があると思っていた。感情が。しかし私には、君の考えていることがまるでわからない』
「気にするな。人間が人間を理解できるのだって稀なんだから」




 どうも、たまには俺にも運が向くことがあるようだ。
 まさか迎えが来るなどとは思っていなかった。それも赤絨毯ではなく、ガトリングガンの援護で。もちろん今は、そっちのほうが有り難い。
 レイブンロックを出てすぐに、施設から脱出しようとするベルチバード数機が大破し火の玉となって墜落していく光景が目に入る。無数の銃弾を吐き出し、多少のダメージをものともせず大立ち回りを演じるスーパーミュータント、それは。
「フォークス!」
「無事だったかヒューマン」
「なぜここに?」
「ヴォールトから連行されるオマエを見て、ここまで追ってきた!一つ貸しだ」
「でかい貸しになるぜ、こいつは」
 持つべきものは友、か。
 俺も脱出の途中で拾ったレーザーガトリングを構え、周囲に展開するエンクレイブ兵に向かって発砲する。
 あらかた敵を排除した俺は無傷のまま残っていたベルチバードに乗り込み、体内に格納されている接続端子をコントロール・パネルに刺し込んだ。エンジン始動、目的地設定、自動航行システム、オン。行けそうだ。
 ふと外を見回すと、フォークスが少し寂しそうな表情で俺を見上げているのがわかった。
「そいつにはオレは乗れないな」
「スマン、やるべきことが残ってるんだ。それにこれ以上、あんたを巻き込みたくない」
「上手い逃げ口上だな。借りはいつか返してもらうぞ」
「わかってるさ。いつか、きっと…な!」
 浮上し、飛び立つベルチバードを見つめながら、フォークスは手を振り続けた。
「さらばだ、ヒューマン」

 BoSの要塞に近づいたところで撃墜されかけ(当たり前だ)、緊急脱出用のプログラムを始動しどうにか着地に成功する。
『エンクレイブのくそったれめ、すぐに拘束して捕虜に…なんだ、こいつ』
「ズレたことしてんじゃねー!いますぐリオンズのじいさんのところへ連れて行け!」
 おそらく貴重なエンクレイブ兵の捕虜が獲れると思ったのだろう、大挙して押し寄せてきたパワーアーマー軍団に、俺はあらん限りの大声で毒づいた。




「エルダー…父上!いますぐジェファーソン記念館を奪回すべきです!さもなければ…」
「だめだ、いまそれをやっては被害が大き過ぎる。はやる気持ちを抑えろ、まだ…そのときではない!」
「ならば、何時!?」
 要塞内部では、サラ・リオンズ率いる精鋭部隊リオンズ・プライドと、サラの父親でありBoS西海岸支部の最高権力者であるエルダー・リオンズが対立していた。
 どうやら、俺のことは見えていないようだ。
「Hey。どうしたよ先生がた、食糧配給チケットの期限が明日にも切れそうだって顔してるぜ」
「無礼者!貴ッ様、エルダーに向かって何という口を…!」
「よさんか」
 どうやら、気を引くためのジョークはあまりお気に召さなかったようだ。
 スクライブの一人が激昂するが、すぐにエルダー・リオンズが引き止める。老齢の司令官は俺を興味深そうな目つきで見つめると、いささか困惑気味に口を開いた。
「それで、たしか君は…?」
「ジェームズの息子だ」
「ああ、そうか。エンクレイブに追われ、我々に保護されたあと早々に姿を消した男だったな。いまさら何の用かね」
 これまで俺は、BoSに対しては無関心、不干渉の姿勢を貫いてきた。俺の力が必要とされているときでさえ。G.E.C.K.の回収も俺が個人的にやったことで、彼らはそのことを知らない。好意的に見られないのも無理はないだろう。
 しかも俺は、取り返しのつかないミスを犯してしまったのだ。
「エンクレイブがG.E.C.K.を入手した。あとは起動コードを入力すれば、浄水装置は起動をはじめる。起動コードも…連中は入手済みだ。カウントダウンはとっくに始まっている」
 ざわ……
 俺の言葉に、その場にいたすべての人間が動揺の声を漏らす。
 エルダー・リオンズも例外ではなかったが、しかし他の連中に比べれば、まだ冷静さを保っていた。
「…それで、なぜ。なぜ、君がそれを知っている?」
「全部俺のせいだからだ」
 他に何て言えば良かったんだ?
 要塞は大変な喧騒に包まれた。誰もが俺を「裏切り者」と批難し、罵り声を上げる。胸倉を掴まれ、銃口を突きつけられながら、俺は当然予想された反応にただ身を委ねるばかりだ。
 しかしそれも、エルダー・リオンズの恫喝によって制された。
「静かに…静かに!静粛にせい、黙らんか馬鹿者共が!」
 滅多に声を荒げることがないであろう、温厚なエルダー・リオンズの口から発せられた罵声に、BoSの面々は目を丸くする。
 途端に静寂さを取り戻した空間で、エルダー・リオンズが俺に質問をぶつけた。
「故意ではなかろう?詳細の報告を頼む、傭兵(Mr.Merc)」
「俺はG.E.C.K.を回収するために、Vault87へ向かった。そしてG.E.C.K.を入手した直後、エンクレイブの襲撃を受け拉致された。起動コードを知られたのは偶然だった…が、俺の過失に変わりはない。まあ、収穫もあった。エンクレイブは内部で対立している。連中が行動を起こそうとしている今こそ、その対立がもっとも激化するタイミングでもある。アクションを起こすなら、今だ」





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