主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。
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2013/10/02 (Wed)13:21
「俺の名はクレイブ、傭兵だ。今日もウェイストランドの旅がはじまる…」
「これはこれは、懐かしい面々がお揃いで。今夜は祝杯を上げねばなりませんな」
アンダーワールド、ナインス・サークルにて。
たんなる冷やかしで言ったのか、それとも職業的無意識から来る接客態度の表れなのかはわからなかったが、アズクハルの生温かい声を聞いて、俺はマスクの下で申し訳程度の愛想笑いを浮かべた。
ミスター・クロウリーとともにアンダーワールドへ帰還した俺は、図らずもけちなバーテンの営む酒場でリトル・ムーンビーム(本名は以前聞いたような気がしたが、忘れた)と再会したのだった。彼女とは過去に一度仕事をしたことがあり、リベットシティで別れて以来行方不明になっていたことを気に煩っていたのである。
「Hey、リトル・ムーンビーム。戻ってきてたのかい」
「あたしをその名で呼ぶことを、あんたに許した憶えはないんだけどねぇ…まあ、いいわ。例のホロテープの件もあることだし。それにしても、あんたも物好きよね」
物好き、というのは、アンダーワールドに好んで居ついてることを言ってるのだろう。おまけにグールの女と懇意にしているというのだから、物好きなんて表現はかなりマイルドなほうだ。
「しかし、ま、うん…無事で良かったよ。しかし、できることなら…」
「もっと早く戻ってきて欲しかった?驚いたわよ、入り口をくぐって早々、『あのネクラなスムーズスキンに殺られたんじゃないのか』って言われたんだもの」
「…だよな」
無粋な配慮や隠し事をせず、思ったことをずけずけと口に出すのはグールの性分みたいなものだ。そういうところが気に入ってるからこそ、俺はこの場所を気に入ってるのだが。
裏話…じつはリトル・ムーンビーム(本名マジで忘れた)が行方知れずになってたのは本当の話で、ミスター・クロウリーともどもコンソールからムリヤリ呼び出したという次第。死んでたわけではないので、AIがきちんと機能してなかったのだろう(彼女絡みのクエスト終了から相当時間が経ってたのと、ミスター・クロウリーが倉庫から不動だったことを鑑みると、未だに移動中だったとは考えにくい)。
ちなみにFOOK2の彼女はけっこう良い品を取り揃えているので、歴史博物館でのクエストが終わったら早々にコンソールでアンダーワールドに呼び寄せても良いかもしれない。チューリップも相当に良い品を揃えているので、思い入れを抜きにしてもアンダーワールドがかなり有用な拠点になることは間違いない。
逆に、パラダイス・フォールズのプロントがなぁ…中華アサルト(FOOK2ではAK系列のアサルトライフル全般)を20挺渡しても品揃えが改善されないのは不具合なのか仕様なのか。
オヤジがジェファーソン記念館で斃れる直前、浄水プロジェクトを完成させるために必要と謳っていたG.E.C.K.(エデンの園創造キット)なるものを入手するため、俺はVault87へ向かうことにした。
といっても正面からの侵入は不可能に近く、あまりに濃度の高い放射線量が計測されているため迂回路を探す必要がある。BoSの連中が言うには、ランプライト洞窟から侵入できる可能性があるとのことだったが…
「ここは子供だけが入れる場所だ、ムンゴ(薄汚い大人ども)は出て行け!」
ズダーン、洞窟に一歩入った俺を待っていたのは、カラシニコフの洗礼だった。
両爪先の間に見事に着弾した穿を見つめながら、顔を上げた俺は眉をひそめる。というのも、銃口から硝煙を上げるカラシニコフを手にしていたのは、年端も行かない少年だったからだ。
「いきなり眉間を撃ち抜かなかったことを、褒めるべきか、考えが甘いと言うべきか、ちょっと悩んでるよ」
「あんたはまだ銃を抜いてない。もしあんたが腰にぶら下げてるイチモツを使う気なら、口の中狙って2発ぶち込むまでだ。できないと思うかい?」
「…ちょいと粋がり過ぎるきらいはあるが、少年、こういうのに慣れてるな?迷いのない目、たいして乱れてもない呼吸、たいしたもんだ」
「あんた、きちがいか?銃で狙われてるんだぜ、まったく調子狂うよなァ」
そう言うと、少年は銃口を下げてため息をついた。
どうやら俺に敵意がないことは伝わったようで、なによりだ。
「で、あんたナニ様?リトル・ランプライトになんか用?それとも道に迷ったのかな、あるいは自殺志願者とか?」
「ブー、どれも外れだ。そんなんじゃあハワイ旅行には行けないぜ?俺はヴォールト87って施設への侵入口を探してる、ブラザーフッドオブスティールっていう、ブリキのカタマリみたいな連中が言うには、この洞窟に繋がってるそうなんだが」
「ヴォールト?あんな場所に何の用があるんだよ?あそこはいまバケモノで溢れ返ってるんだぜ」
「知ってるのか」
「知ってるよ、道筋もね。と言っても、いまは閉鎖中なんだけどさ。黄色くてデカい、オッサンみたいなバケモノが出てくるからバリ作って塞いじまったよ」
「スーパーミュータントが?ヴォールトから、だって?」
「…でー、ここまで聞いてもまだ行きたいのかい?せっかく積んだバリを取っ払って、バケモノだらけの通路を開放するだけのリスクを僕らに背負わせたいわけ?」
「生憎と、外せない野暮用があるもんでね。それじゃあ、取り引きしないか?少年、仲間はいるのかい?こんな洞窟じゃあ物資も碌に確保できないんじゃあないのか」
「たまにスカベンジャーと取り引きくらいはするさ。それが、あんたを奴隷商人と断じて眉間をぶち抜かなかった理由でもある。彼らに感謝するんだね」
「そいつはどうも。そうだな、もしヴォールトへの道を開けてくれるなら、銃と弾薬、食料、衣料品を提供しよう。前払いでだ」
「前払い?ぼくらを馬鹿にしてる?あんた、どうして物資だけ横取りされて殺されると思わないんだい?」
「もしそんなことするくらいなら、とっくに俺を殺して装備を剥ぎ取ってるだろ。生かして利用したほうが得な相手を見分けるくらいのインテリジェントはあると思ったんだが、見込み違いだったかな」
「…つくづく、おかしなムンゴだ、あんた」
「それに道を開けてくれたら、黄色いオッサンどもは出来る限り俺が始末しておいてやる。得意なんだ、そういうのは。専門家と言ってくれてもいいが」
「わかった、わかったよ。じゃあ先に物資を持ってきてくれ、そうすればヴォールトへの道は開放してやる。ただし騙そうなんて思うなよ!ちょっとでもおかしなこと考えてみろ、脳天ぶち抜くからな」
そう言ってから、少年は形ばかりの恫喝とともに銃口をふたたび持ち上げる。が、もう撃つ気がないのは明らかだ。
俺はややオーバーなアクションで肩をすくめてみせると、一度洞窟を後にした。
意外と思われるかもしれないが、俺ってば基本的に子供には優しい、というか、甘いのだ。
まして彼らは、少ない情報から推察するに、奴隷商人やスーパーミュータントといった脅威に対し日常的に立ち向かっているようだ。そして恐らく、彼らのコミュニティに属する大人の協力者はいない。この不毛の地で、子供だけで強く生き抜くその姿勢、まさしく尊敬に値する。
他人にたかり縋ることしか考えていないクソッタレな自称善良の民がはびこるウェイストランドで、多少生意気だからといって、どうして彼らに厳しく接することができようか?
そんなわけでいま、俺は少年たちのために物資をかき集めているところなのだが…
「子供用の服?そうかい、あんたにもついにねぇ…」
「や、あのね姐さん、そうしみじみ言われると、俺すっげー申し訳ない気分になるっていうか…ていうか、わかってて言ってるよね!?」
アンダーワールドの装具屋にて、まるで親戚の結婚を祝う叔母のような表情を見せるチューリップ姐さんに、俺は思わず裏返った声を出してしまう。
そんなこんなで物資を集めた俺は少年の覚え目出度く、ようやく洞窟の中に入ることができたのだった。
「あのマクレディに認められるなんて、兄さん、やるじゃないか」
「まーね、それにしてもだ。その服どうよ、キマッてるだろ?大人顔負けの子供達ってからには、ファッションもビシッと着こなさなくっちゃあなるめぇ」
どうやらここは、リトル・ランプライトと名づけられた子供だけのコミュニティらしい。
俺はリトル・ランプライトの食糧事情を管理しているエクレアと名乗る少年と雑談を交えつつ、彼らにまつわる諸事情を聞いていた。ちなみに、門番として俺の前に立ち塞がったソルジャーの名前はマクレディというらしい。市長の肩書きを持ち、リトル・ランプライトの現最高権力者なんだそうだ。
性格はやや粗暴だが頭が切れ、仲間想いで、銃の扱いも上手い。なるほどカリスマ的存在というやつだ。英雄待望論なんてのは俺のもっとも嫌う概念だが、それでも子供には指標となる存在が必要だろう。
そんなことをグダグダと話しつつ、新しい衣類など望むべくもない環境で新品の衣類に身を包んだ子供たちを見つめながら、俺はちょっとした自己満足に浸ったりするのである。
「まったくね。それに、食料も…洞窟キノコ以外の食料なんて滅多に手に入らないから、本当にありがたいよ」
「洞窟キノコ?なんだそれ」
「知りたい?死体に…」
「いや、やっぱいい」
どうやら彼らは、俺が思っていた以上に過酷な環境に居るみたいだ(本人たちがどう自覚しているのかは知らないが)。
食事に関して言えば俺はかなり好き嫌いがあるほうで、基本的にパッケージされた食品しか食べる気がしない。衛生云々よりも文明的なものに触れると安心する性質なのだろうと思う。逆にラッドローチやミレルークの肉なんぞは、どんなに新鮮で栄養価が高くて美味であっても口にする気にはなれない。
「のっくのっく!このマスクってブラザーフッドのだよね!秘められた物語の匂いがぷんぷんするであります!」
「たしかにすごい装備だけど、女の子が被るにはごつ過ぎやしないかな…」
「そうかい?彼女は気に入ってるみたいだけどな」
商店(土産物屋、らしい…当人曰く)を管理しているニックナックと、双子の妹でゴシップ好きのノックノックと対面。武器弾薬の管理は彼らに任せることになるだろう。
それにしても、なかなかどうして個々の役割分担がきちんと機能しているもんだな、と俺は思う。これもマクレディのリーダーシップの成せる業か。
「アンタ、私みたいな子供にこんな格好させるなんて頭おかしいんじゃないの!?」
「プリンセス!俺はあなたの下僕です!どうか犬と呼んでください!」
「くぉの、変態!変態ッ、変態ッッッ!!!」
「ありがとうございます!ありがとうございます!ありがとうございます!」
Vault87へと続く道、スーパーミュータントが跋扈する通称「殺人通り」を封鎖するバリケードの監視を担当している少女プリンセスが着ているのは、俺がコンスタンティン砦で回収したMOD装備だ。
ついでに武器も無骨で小汚いソウドオフなんかじゃなく、華麗で小柄な容姿に鋭い攻撃性を秘めた彼女のキャラクターに合うよう、.44Magnum装填のデリンジャーLast Standを持たせてみる。
どうやらこのあたりで、抑えてきた俺の理性が飛びかけたようだ。
「子供だけの国…子供だけ…ここが天国か。俺のヴァルハラはこんな場所に存在していたというのかッ…!これもオヤジの導きのおかげ、ありがとうオヤジッ…オヤジ、フォーエヴァー…!」
すでにG.E.C.K.を回収するという当初の目的も忘れかけ、子供だけが存在を許されるキャッキャウフフな環境に俺は心を奪われていた。
俺の暴走はさらに加速する。
「先生…小さい先生…ッ!俺は、俺はもう…俺はもう…ッ!」
「わっ!?ちょ、ちょっと、なにするのよっ!?」
「小さい先生、俺の病気を治してください!俺の心の奥底に巣食う病魔を、先生の幼い肢体でどォか!」
「キャアーーーッ、誰か助、助けてっ、マクレディーーー!」
「先生ーーー!先生ーーー!俺、小さい先生とそるふぁそふとしたいですっ!」
どう見ても犯罪です本当に(ry
後で駆けつけたマクレディに本気で銃弾を叩き込まれたのは当然の成り行きである。V.A.T.S.の一時的に代謝を高める効果を利用しなければ死んでいるところだった。
血まみれになりながらぶっ倒れる俺に、マクレディは鬼のような形相で叫んでいたという。
「ぼくの目が腐っていた!こんなムンゴを入れるんじゃなかった!」
一度死に掛けたのと、意識が回復した後にリトル・ランプライト住民全員の前で土下座したことで一応許してはもらえたが、次に暴走したら確実に息の根を止めるとマクレディに釘を刺されてしまった。
ただマクレディよ、プリンセスを見るときに目尻が下がっていたのを俺は見逃さなかったぞ。
「いいスーツだろ。脅すつもりはないが、俺に感謝しろよ」
小声でそう耳打ちした俺の頬に、マクレディのパンチが炸裂したのは言うまでもない。
以来、俺はリトル・ランプライトで「ケツみたいな顔をしたド変態クソムンゴ」なる非常に不名誉な渾名を拝名することになるのだが、どこも間違ってないので否定できないのは悲しい事実である。
「さて、そろそろシリアスに戻るとしますかね」
殺人通りを抜け、Vault87への侵入に成功した俺はスーパーミュータントを薙ぎ倒しながら施設内を突き進んでいく。
コンスタンティン砦、か…ナショナルガード補給所だったか?とにかく地下施設の武器集積所で入手したP90を手に、俺は血の海と化したフロアをぐるりと眺め回した。
このP90はウェイストランドでもっともメジャーな10mm拳銃弾仕様に改造されており、装弾数の多さと威力の高さからちょっとしたバランスブレイカーとなっている。集弾性も悪くない。
道中、フォークスを名乗るスーパーミュータントと出会った。
常人並みの知能を持ち、争いを厭う彼は仲間に幽閉されていたのだそうな。もちろん、証拠はない…頭から信用するのは危険、と言いたいところだが、通常、スーパーミュータントの知能はせいぜい人間で言う幼児止まりで、はっきり言ってレイダーなんかより相当バカだ。
そもそも騙し討ちだのといった概念があるかどうかすら疑わしい連中の中にあって、まともな話し合いができるだけでも信用に値する。それに、まぁ…もし利用するだけ利用して俺を排撃するつもりなら、そのときに始末してやればいいだけの話だ。
「しかし、ここは何なんだ?いままで、色々なヴォールトを見てきたが…ここは何の実験施設だったんだ?」
「ヒューマン、FEVウィルスというのを知ってるか?大戦中に開発された人類強制進化ウィルスと呼ばれるもので、核攻撃を受けた際にワシントン中に流出したものだ。脆弱なヒューマンが、日常的に放射線を浴びても問題なく生きていけるのはFEVを大なり小なり摂取し遺伝子が変質しているからだ」
「なんだって?」
「そして、FEVを本来の目的通りヒューマンに投与して作られるのが…オレたち、スーパーミュータントだ。強靭な肉体と引き換えに知能が低下し、無性化によって繁殖が不可能になる。しかし我々は、本能的にヒューマンを攫い、ここに遺された実験装置のFEVを利用することで仲間を増やしてきた」
「つまり…スーパーミュータントは大戦中に政府が研究していたスーパーソルジャー計画の名残ってことなのか?その研究施設がこのヴォールト87だと?」
「そういうことだ」
フォークスの口から語られる、衝撃の事実。
どこから現れ、なんのために人間に敵対するのか、その一切が謎に包まれていたスーパーミュータントの真実が、こんな形で判明するとは。フォークスは仲間に争うことの無意味さを説いたが、賛成だの反発だのという以前に主張の意図そのものが理解されず、その特異性を恐れられ独房に幽閉されてしまったらしい。
そして独房内に設置されていたターミナルから研究施設に遺された情報を調べるうち、知識と教養を深めていったという。
「ところでフォークス、G.E.C.K.という装置のことを知らないか?」
「G.E.C.K.だと?端末に情報があったな…フムン、あの装置に価値を見出すヒューマンがいたとはな。しかし、あれは非常に扱いが難しい装置だぞ?表面的には環境回復を謳っているが、その本質は物質の再構成、ただそれだけに過ぎない。扱いを間違えると、とんでもないことになる」
「いや、心配はいらない…と、思うね。俺は科学者じゃないから詳しくは知らんが、G.E.C.K.はあくまで補助的な装置としてしか使わないらしい。ワシントン全域の、放射能に汚染された水質を改善するため、G.E.C.K.のプログラムを改変・流用して浄水装置に組み込むんだと」
「なるほど、悪くない発想だな。ただ、G.E.C.K.が安置されている部屋は高濃度の放射線に覆われている。とてもではないが、ヒューマンでは耐え切ることはできないだろう。水質改善、清浄な水などというのは我々スーパーミュータントにとっては縁のない話だが、それでもオマエには恩がある。オレがG.E.C.K.を取ってこよう」
「すまない。恩にきる」
「お互い様だ」
こうして、多少はヤマがあったり迂回路を通ったりはしたが、結果的にはスムーズに目的を達成することができた。
煙草をふかしながら待っていた俺に、フォークスがスーツケース型の装置を差し出す。
ドクター・スタニスラウス・ブラウンの遺物を手に取り、一通り眺め回してから、オレは感想を口にした。
「これが、G.E.C.K.か…機能の割には小さいもんだな。あの幼女趣味のオッサン、天才と謳われただけのことはあったようだ」
「幼女趣味?」
「や、こっちの話。ところでフォークス、あんたはこれからどうするんだ?」
「オレにとっては、もうスーパーミュータントは同族でも仲間でもない。旅に出たいと思う…オレが他のスーパーミュータントと違うのには、なにか理由があるはずだ。オレにしかできないこと、天命が必ずあるはず。それが何なのか、それだけは端末の情報からだけではわからなかった。それを探したい」
「立派な心がけだな。ただ、人間には注意しろよ?特にスティールの連中には…あいつらに、スーパーミュータントの区別なぞつかんからな。そうそう、以前、あんたと似たようなスーパーミュータントを見かけたことがある。アンクル・レオと名乗ったか…あんたの助けになるかは知らんが、探してみるといい」
「気遣いに感謝する。達者でな、ヒューマン」
こうしてフォークスと別れた俺は、研究者達の待つワシントン記念館に戻るためリトル・ランプライトへ続く道へと引き返したのだが…
突如足元に放り込まれたものを見て、俺は目を疑う。フラッシュ・バン?パルス・グレネード?あるいは、それらの機能を複合させた改造型か。非致死性の、標的の無力化に特化した投擲物にプリントされたエンクレイブのロゴを発見し、俺は力なく呟いた。
「オゥ、シット」
次の瞬間、すさまじい閃光と轟音、そして電磁場が発生し、それに耐えることなく俺はフロア・タイルの上に無様に転がった。視界の端に、全身を漆黒のパワーアーマーで固めた特殊工作員たちの姿が写る。
『ターゲットA-1の無力化を確認。これより拘束します』
『ターゲットA-2を確保。機能に問題はないと思われます』
「まったく、貴重な電子装置を持っている相手にパルス兵器を使うやつがあるか!次からは気をつけろ、そんなものがあればの話だがな」
『申し訳ありませんでした。了解しました』
そして、パワーアーマー部隊に混じって近づいてくる白いロングコートの男。
「て、てめぇ…ッ!」
「君の父上が私に放った10mm弾は、けっこう効いたぞ。見ての通り、死にはしなかったがね」
そこにはかつて、ジェファーソン記念館でオヤジと壮絶な銃撃戦を展開したアウグストゥス・オータム大佐の姿があった。
「あまり私を嘗めるなよ、小僧。さあ、もう一度私のゲームに付き合ってもらおうか…!」
オータム大佐の怨嗟の声を聞き届けた直後、俺は意識を失った。
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