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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2024/11/24 (Sun)02:34
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2020/06/25 (Thu)06:11


 
 
 
 
 

State of Decay: YOSE

【 Yankee Oscar Sierra Echo 】

Part.3

*本プレイ記には若干の創作や脚色が含まれます。
 
 
 

 
 
 
ノーマン:「痛むか?」
クレイブ:「平気に見えるか?まあ、戦場で銃弾をぶち込まれるのに比べたら、格別に酷い怪我ってわけでもないさ。感染さえしてなけりゃあな」
 
 
 
 
 
 
 壊滅したレンジャーステーションでゾンビと化したトーマスに噛まれたクレイブは、ロッカーに僅かに残されていた医療品で応急処置を施してから、規定量を超える鎮痛剤の服用でどうにか身動きが取れるようになっていた。
 この場を立ち去る前に、キャンプ地周辺の生存者の存在を確認しなければならない。
 三人はタナー山地北部の湖沿いに並ぶロッジを一軒ずつ見て回ったが、残念ながら中にいたのはゾンビばかりで、生存者は一人も見つからなかった。
 引き返す途中で発見したテント内の荷物に、ノーマンは一挺のライフルを発見する。黒色のグラスファイバー製ストックを装備した、ボルトアクション式のマーリン983。本来は威力の高い.22ウィンチェスターマグナムを使用するはずだが、所有者はそれを.22LR用に改造したらしい。
 狩猟用か、はたまた護身用か…
 
 このあたりにはゾンビしかいないことを確認した三人は、給水塔近くの倉庫へと向かった。そこにはクレイブが指摘した通り空色のトラックが停めてあり、彼がトーマスの亡骸から回収したキーはまさにこの車のためのものだった。
 ノーマンが運転席に乗り込もうとしたまさにその瞬間、クレイブが無造作に身につけていた無線機から女性の声が聞こえてきた。負傷したクレイブにかわり、ノーマンが応答する。
 
 
 
 
 
 
女性の声(リリー):「ハロー?しばらく連絡がないけど、調査は進んでる?」
ノーマン:「すまないが、君は何者だ?タナー山地…レンジャーステーションに立て篭もっていた人たちの仲間か?」
リリー:「…!?ええ、そうだけど。あなたは誰?」
ノーマン:「短い時間だったが、我々はトーマスという男と協力してこの付近の生存者の捜索をしていた。彼は負傷者の手当てのためにレンジャーステーションに残っていたが、我々が外の調査から戻ったとき、彼とその同行者は全員死んでいた。君の仲間は全滅だ」
リリー:「…… …… …!!」
 
 無線機の向こう側から、ハッと息を呑む声が聞こえる。
 それからしばらくの間は返事がなく、無論そのまま突っ立って相手の言葉を待っている余裕などないので、クレイブとラムダが荷台に乗ったことを確認したノーマンは、すでにエンジン音に惹かれて集まりつつあるゾンビを蹴散らすようにトラックを急発進させた。
 間もなく川にかかる橋を通過しようかというとき、三人は木製の吊り橋が真ん中から崩落しているのを目撃する。
 
クレイブ:「クソッタレ、橋が壊れてやがる!これじゃあ、車で渡るのは不可能…だな?おい、そうだろ?」
 
 はじめは独り言のようだったクレイブの口調が、段々と運転席のノーマンに言って聞かせるように変化する。
 しかしノーマンは車の速度を落とすことなく、むしろアクセルを全開にして崩落した橋に突っ込んでいった。
 
ノーマン:「これでも俺は、かつてニューイングランドで大型トラック用のV12気筒ディーゼルエンジンを搭載した自作モーターサイクルで荒廃した世界を放浪していた男…これくらいの隙間は飛び越えてみせる!」
クレイブ:「いや、その自分語りは何の保証にもなってねぇな!?」
ノーマン:「あっ、橋だ」
クレイブ:「イヤミかてめぇ!」
 
 
 
 
 
 
ラムダ:「いっけええぇぇぇぇ!」
クレイブ:「うおああぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
 
 ガタンッ、わずかに角度のついた箇所に乗り上げると同時にサスペンションの軋む音が響き、車体が宙に浮かぶ。
 あまり高く跳ねたわけではなく、向かい側に無事着地できたのはテクニックというよりも運によるところが大きかったのだろうとクレイドは思う。着地と同時に荷台を揺らした衝撃は、鎮痛剤でぼんやりした頭にも危機感を覚えさせるものだった。もちろん、川底に転落するよりはマシだったが。
(だいたいは着地に失敗して落下するうえ、本作はオートセーブ専用でやり直しがきかないため、転落した場合でもそのままゲームを続行せざるを得なかった。それはそれでおいしい展開ではあったが…)
 
 
 
 
 
 
 南へと続くたった一本の道路を流すように走っていたとき、ふたたび無線機から応答があった。先刻と同じ女性からだ。
 
リリー:「えぇと…聞こえてる?」
ノーマン:「ああ。できれば、君たちはどこにいる何者なのかを教えてくれると有り難いのだが」
リリー:「私はリリー・リッター。あなたがレンジャーステーションで会った、トーマス・リッターの…娘よ」
ノーマン:「…そうか。お悔やみを申し上げる」
 
 なんてことだ、死んだ人間の身内だったか…
 それからまた束の間の沈黙が続いたが、やがてスピーカから諦めにも似た、ため息に近い笑い声が響くと、ほとんど投げやりな態度でリリーが話し始めた。
 
リリー:「私はあなたとどう接すればいいのかわからないわ。だって、そうでしょう?父と協力して生存者の捜索をしていた、目を離しているあいだに父たちが死んでいた、という話を、額面通りに信じれると思う?」
ノーマン:「あるいは俺たちは性質(タチ)の悪い強盗団で、君の父親とその仲間を殺して身ぐるみを剥いだあと、君に嘘をついて襲う算段を立てているのかもな」
リリー:「ええ、そう。そうね、もちろんその可能性もある」
ノーマン:「それに俺たちは今のところ、身の潔白を証明する手段を持たない」
リリー:「まったくだわ。ああ、もう!私の仲間、特にそのうちの一人は、この事態を快く思わないでしょうね。けど、あなたの態度からは真摯的な公平さを感じられるわ。私、自分の直感は信じることにしているの」
ノーマン:「いい心がけだ、お嬢さん。その誠実さを見込んで正直に告白するが、俺の仲間がゾンビ…そういう呼び方で不都合はないと思うが…あるいは、それに類する"なにかと不自由な連中"に噛まれて怪我を負っている。映画のようにバケモノの仲間入りをしちまうのか、あるいは感染や発症に別の条件があるのか、俺には判断の材料がない」
リリー:「怪我人がいるのね?それは私たちに朗報とは言い難いけど…だけど、ゾンビから攻撃を受けても、必ず感染症に罹ると決まったわけではないわ。なかには回復する人もいる、そして、もちろん、そうでない人も」
クレイブ:「安心したよ。フルパワー戸愚呂みたくに100%中の100%ってわけじゃないってことか」
ノーマン:「いまのは聞き流してくれ、亡者の流言だ。俺たちはタナー山地へキャンプに来てたんだが、しばらく自然と一体化して世俗的な文化と断絶するありがたい生活を送ってたせいで、いまいち状況を把握できてない。世間がゾンビー・パラダイスと化してるのに気づいたのも、つい先日のことだ。できれば君たちと合流して、状況の打開…もしくは改善に向けて協力し合いたいと思っている」
リリー:「そうね、怪我人の治療も必要でしょうし…いいわ、その提案を受け入れましょう。私たちはスペンサーズミルの教会に立て篭もっているの、このあたりに教会は一件しかないから、迷うことはないはずよ」
ノーマン:「いちおう聞いておきたいんだが、キリスト教系かね?プロテスタント?」
リリー:「カトリックよ。アセンション教会、でもどうして?ひょっとして、宗教上の理由で立ち入れない…とか?あなた、イスラム教徒?」
ノーマン:「いいや、俺自身は敬虔なスパニッシュ・カトリックの家の出でね。ミドルネームにパトリックという洗礼名も持っている。ただ、十字架の立った三角形の屋根を探しているときに、ロシア正教やモスクの教会が視界に入っても、そこに君たちがいるだろうという発想には結びつかない可能性が高い」
リリー:「だったら、安心して三角形の屋根を探してと言っておくわね」
 
 そこでふたたび無線機越しの会話が途切れた。
 片手でハンドルを操り、もう片方の手で観光マップを開くノーマンに、クレイブが荷台から話しかける。
 
クレイブ:「教会?随分とまた、ありがたい場所に立て篭もっているもんだな?」
ノーマン:「ああ。ひょっとしたら、神様のご加護がゾンビから守ってくれるかもしれない」
クレイブ:「まったくだ。いや、誤解しないで欲しいんだが、俺は別に皮肉を言いたかったわけじゃあないぜ?たとえ終末が訪れても、信仰の心が失われることはない。俺の親父も、よく聖書の一節を好んで暗誦していたもんだよ。"我はアルファでありオメガである、始まりであり終わりである。渇く者には命の泉の水から値なしに飲ませよう"……」
ノーマン:「ヨハネの黙示録、第21章6節か。気をつけなよ、不信心者は水を与えられるかわりに、火と硫黄の燃える池に投げ込まれることになるんだからな」
ラムダ:「地獄の火の中に投げ込む者たちである?」
クレイブ:「腹を切って死ぬべきである!」
ノーマン:「某おたくソングのフシで不穏な単語を並べるのはやめるんだ」
クレイブ:「核兵器(ヌカランチャー)!」
 
 元ネタがわからないと無闇に危険な発言をしているだけに見えるからやめるんだ。
 あちこちで小グループを形成し、エンジン音を聞きつけて追いかけてくる無謀なゾンビたちを回避しながら、トラックは「CHURCH OF THE ASCENSION」と書かれたアーチをくぐり抜ける。その先に、コンクリート製の塀に覆われた木造の質素な教会が見えた。
 駐車スペースにトラックを停め、三人は金属製の門へと近づく。一見したところ、教会は今回の騒動が起きる前とそう様子は変わっていないように感じた…塀の上に張り巡らされた有刺鉄線と、ライフルを手にした女性の立つ、急ごしらえの見張り台を除けば。
 
 
 
 
 
 
 トラックのエンジン音を聞きつけてか、教会から三人の男女が応対のために飛び出してきた。そのうちの一人は明らかに機嫌を悪くしており、不快そうな態度を隠そうともしていない。
 
男(アラン):「ガッデム!こいつら、車で来やがったのか!?くそったれのゾンビどもが押し寄せてくるぞ、まったく、リリー、こんな脳無しどもをわざわざ賓客として招くとはな!」
リリー:「よかった、無事に辿り着けたのね?」
アラン:「無事?無事とはな。彼らのうち一人はとても"無事"になんか見えやしないがね!」
 
 つばの広いレンジャー帽をかぶった歳かさの男は気を昂ぶらせ、羽ばたく鳥のように腕を激しく上下させる。一方、藤色のパーカーを着たブロンドの女性は、そんな男など隣にはいないような態度で愛想の良い笑みを向けてきた。
 大学生か…ひょっとしたら、ハイスクールの生徒かもしれない。少なくとも、二十歳を越えてはいないだろう。彼女が無線で会話したリリーに違いない、とノーマンは見当をつけた。
 続いてもう一人、赤いVネックのセーターを着た恰幅の良い男が一歩前へ進み出てきた。地元のレストランのオーナーか何かだろうか、というノーマンの根拠のない想像はすぐに否定されることになる。
 
男(ウィリアム牧師):「ようこそ、アセンション教会へ。私はウィリアム・マルロニー、この教会の牧師です。さあ、中に入って。怪我人の容態を見てみましょう、私には医療の心得があります」
クレイブ:「ハロー、牧師様。会えて嬉しいよ、治療と説法のサービスを同時に受けられることを期待してもいいのかな?こんな世の中を生きるには、ありがたいお言葉が必要だ」
ノーマン:「俺はノーマン・パトリック・ガルシアだ。車や電化製品、水道なんかの修理を請け負う便利屋で生計を立ててる。隣が女房のラムダ・ガルシア、そしてやたら口喧しい怪我人は友人のクレイブ・マクギヴァン。無線機で話したとおり、我々は北のタナー山地でキャンプ旅行に来ていたところを今回の騒動に巻き込まれた」
リリー:「お会いできて光栄だわ、ミスター・ノーマン。こういう状況で手に職があるというのは素晴らしいことね!少なくとも、この教会で仕事にあぶれることは無さそうよ。それと、私の隣にいるガニー(鬼軍曹)はアラン・ガンダーソン。彼はトランブルバレーの森林保護官なの」
 
 それはなんでもない人物紹介だったが、ノーマンはリリーが「森林保護官"だった"」、とあえて言わなかったことに気づいた。いつか世界が元通りになり、元の職に復帰できる希望を捨てないでいるのか、あるいはかつての文明的生活が過去のものとなってしまったことを認めたくないのか。それとも、森林保護官としての職務に未だ誇りや権威を縋っている(それは大いにありそうなことだ)アランに精一杯の気遣いを見せただけなのか。
 当のアランもリリーの配慮に気づかぬほど鈍感なわけではなかったが、それは彼の機嫌をなだめる役には立たなかったようだ。
 
 
 
 
 
 
アラン:「仲良しごっこがしたいなら勝手にするがいいさ、だがな!このアポカリプスは、そんなヌルい寄り合いが生き抜けるほど生易しいものではないんだ!まったく、リリー、貴様はあのくそったれな役立たずの兄よりも不愉快だぜ!」
リリー:「紳士的な忠告をどうもありがとう、アラン。けれどね、一つだけ言わせてもらうと、あなたにそんなことを言う権限なんてどこにもないのよ!あなたはこのコミュニティのリーダーか何かのつもりでいるかもしれないけど、あなたが二週間前までライフルを持って森の中で狩猟家やハイカーをいびり倒していたからといって、ここにいる全員が無条件にあなたに従うだろうなんて思わないことね!」
 
 それは中々に痛快な一撃だった。アランのような男に気後れすることなく振る舞えるのはたいした精神力だな、とノーマンは思う。
 我こそは生存者たちの指導役である、という振る舞いをアランが常日頃から見せているのは想像に難くなかったが、実際の意思決定や意見の取り纏めはリリーの役割なのだろうな、とノーマンは判断した。
 もちろん、周囲がゾンビ渦に呑まれている状況で、生存者たちの間に不和が生じていること自体はあまり歓迎できることではない。
 諸々の不安や懸念が渦巻くなかで、リリーが場を仕切りなおすように一つ咳払いをすると、ふたたび人好きのする笑みを浮かべて言った。
 
リリー:「さあ、来て頂戴。あなたたちを教会の案内ツアーへご招待いたします」
 
 
 
 
 
 [次回へつづく]
 
 
 
 
 


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