主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。
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2014/07/07 (Mon)06:56
ブルーマで思わぬ道草を食ってしまったが、ロッシェ夫妻からの依頼を終えたあと、ちびのノルドは当初の予定通りレーヤウィンへと向かっていた。
「ハァ…気が重いなぁ」
スキングラッド支部長のバーズ・グロ=カシュによると、どうやらレーヤウィンの戦士ギルド会員が仕事をせず酒場で暴れているらしい。ちびのノルドに課せられたのはトラブルの回避と原因の究明ということだったが…
「やだなぁ、身内同士のいざこざに巻き込まれるなんて」
ちびのノルドは、まるで気乗りしない様子でため息をついた。
そもそも今回トラブルを起こした男たち…三人の戦士、インペリアルのヴァントゥス、レッドガードのレーリアン、オークのデュボクはちびのノルドよりも古参で、キャリアが上だ。
それをわざわざ新人のちびのノルドに説得に向かわせたのは、このところ活躍の目覚しい新人に渇を入れさせることで、自分達がいかに恥ずべきことをしているかを自覚してもらい、今一度性根を真っ直ぐに伸ばしてもらおう、という魂胆らしいのだが。
「…マッチポンプにしかなりませんよね、どう考えても」
もとより若干の対人恐怖症の気があるちびのノルドにとって、これ以上に気の進まない任務はなかった。
** ** ** **
「おーい、もっと酒持って来い、酒ェ!」
「なにが戦士ギルドだアホらしい、やってらんねぇーぜ!」
「ヒャッハァー!」
レーヤウィンの門を潜ってすぐの場所にある小さな宿<ファイブ・クロウ旅館>。
扉を開けた途端に屈強な男たちのばかでかい歓声が聞こえたとき、ちびのノルドはここに来たことを光の速さで後悔した。
「…うぅわー」
「あんた、戦士ギルドの人間かい!?あいつらをなんとかしとくれよ!」
背を向けて立ち去ろうとしたちびのノルドの肩を、旅館の女主人ウィッセイドゥトセイがガッシリと掴む。
「飲んで暴れて好き勝手し放題、客は寄りつかないし、あいつら金も払わない!どうしてくれるんだい、この惨状を!」
「ゴメンナサイすいません本当に申し訳ないです許してくださいどうかお願いします」
激怒するウィッセイドゥトセイに、ちびのノルドは泣きながら平謝りをする。
…自分は何もやってないのに、なんでこんなに必死こいて謝らなきゃならないんだー!?
そんな疑問を抱きながらも、しかし社会でそんな理屈は通用しないことを身に沁みて理解しているちびのノルドはひたすら頭を下げ続けるばかりである。
その最中にも、現地の戦士ギルド会員たちはやりたい放題である。
「酒が切れたぞー!女将ッ、早く代わりを持ってきやがれェーッ!」
「もうあんたらに飲ませる酒なんかないよ、この穀潰しども!」
怒鳴り散らす戦士たちに、ウィッセイドゥトセイは気丈にも怒鳴り返す。
一方、はじめは下手に出てなんとか穏便に事を収めようと考えていたちびのノルドの感情も爆発寸前になっていた。
肩を怒らせながら大股で戦士たちに近づくと、ちびのノルドは岩のように固く握った拳を震わせながら叫んだ。
「なにやってんですか!なにやってんですか!いったい、なに、やってんですかぁーっ!」
「なんだぁこのチビは?おい女将、ここはいつから女衒をやるようになったんだァ?」
「ぜ、ぜげっ…!?」
「こんな下の毛も生えてないようなガキをあてがわれたって嬉しくもなんともねえぜ俺たちはよォーッ!」
「生ーえーてーまーすー!剃ってるだけですぅーっ!」
レッドガードのレーリアンとオークのデュボクにからかわれ、ちびのノルドはマスクの下で顔を真っ赤にして叫ぶ。
その直後、どうやら三人の中ではリーダー格らしいインペリアルのヴァントゥスが二人の仲間を制すると、一歩前に出てちびのノルドと向かい合った。
「あーわかったわかった。ところで実際問題、おまえ、何者なんだ?」
「…戦士ギルドのアリシアといいます。レーヤウィン支部が問題を起こしてるからって、わざわざシェイディンハルから飛んできたんですよ」
「ハッ、ご苦労なこったな。仕事しろってか?いいさ、やってやるさ、仕事があるならな」
「…はい?」
素っ頓狂な声を上げるちびのノルドに、ヴァントゥスが肩をすくめてみせた。
「いいか、俺は『戦士ギルドに行けば食うには困らない』って聞いたから会員になったんだぜ?ところがどうだ、最近はブラックウッド商会に仕事を奪われっぱなし、俺達はお飯の食い上げだ。これが酒でも飲まずにいられるかってんだ」
「…はあ」
ブラックウッド商会、最近よく聞く名前だ。
新興の組織で、かつて帝国に雇われた傭兵を中心に活動しているらしい。格安の料金で仕事を請け負うことで戦士ギルドの顧客を奪っている、とブルーマ支部で話を聞いたことをちびのノルドは思い出した。
…そうだ、そのブラックウッド団の本部が、たしかこのレーヤウィンにあったのではなかったか?
「もっとも、ちびちゃん、おまえさんが仕事を探してきてくれるってんなら話は別だがね」
「それくらい自分でやってくださいよ!」
途中まで納得しかけたものの、ヴァントゥスの最後の言葉にちびのノルドは思わずキレかけた。
けっきょくこいつら、暇にかこつけて体よくサボッてるだけか!
「とにかくっ、仕事があろうとなかろうと、もうこの店で騒ぐのはやめてください。さもないと、どうなっても知りませんよ?」
「おうおうおう、随分と偉そうなクチをきくじゃねぇか、チビスケよぉ。オレたちは当分ここを動く気はねえぜ?なんとかしたけりゃ、実力でどかしてみるんだな。ま、無理だろうがな」
ちびのノルドを馬鹿にするように、デュボグが巨体を揺らしながらぎろりと睨みつけた。
「わかったら、大人しくシェイディンハルにでも帰るんだな。ホラどうした、『私の力じゃ、あの三人をどうにもできませんでしたー』って言って、泣いて帰れよ!このガキ!」
そう言って、デュボグがワインの入ったシロメのマグカップをちびのノルドに投げつける。
それはちびのノルドの頭に命中し、ガゴン、音を立てて床に転がり落ちた。
頭からワインをおっかぶったちびのノルドはしばらく硬直し、なにが起きたのか把握できないまま立ち尽くす。
…いま、わたし、なにをされたんだろう?
マスクの内側にまで入ったワインが顎の先で滴り、全身に葡萄のベタついた感触がまとわりつく。
「ガーッハッハッハッ、見ろよ!あれで戦士のつもりかよ、まるで悪戯されたいじめられっこだな!」
ちびのノルドを指さして馬鹿笑いを上げる三人の戦士たち、一方で女将のウィッセイドゥトセイも「これはだめだ」と額を手で覆う。
ああ。
ちびのノルドは妙に冷静な気持ちで自分自身を見つめながら、いまの状況を理解した。
いま、わたし、この場にいる全員に見下されてるんだ。
ちびのノルドはさっき自分に投げつけられたマグカップを拾い上げ、それをじっと見つめる。
そして。
グシャリッ!
「…な」
三人の戦士たちは、目の前の小さな少女が合金製のマグカップを片手で握り潰したのを見て絶句する。
ちびのノルドはいま、たしかに「ぶちギレて」いた。
「痛い目見なきゃわからないなら…相手になりますよ」
「おいおいマジになるなって、ちびすけちゃん。ほんの冗談じゃねーか」
「黙れよ。このクソカスども」
「あ、いまキレた。オレもキレた。こいつ、潰す」
はじめは笑顔でとりなそうとしたが、ちびのノルドの挑発を受けて三人の戦士たちが拳をかまえる。
** ** ** **
「…ちょっとは反省しました?」
「くくぅー…ちくしょう、わかった。参った、降参だ」
一対三の大立ち回りは、ちびのノルドの圧勝に終わった。
途中から劣勢と見た戦士たちが武器を抜き、あわや喧嘩が殺し合いに発展かとも思われたが、ちびのノルドはかまわず三人をぶちのめしたのであった。
いちおう騒ぎは収まったものの、店はちびのノルドが来る前よりも酷い状態になり、ウィッセイドゥトセイが白目を剥いて叫ぶ。
「あんたまで暴れてどーすんだいっ!」
** ** ** **
「うひゃーっ、雨だ雨!はやく屋根の下に入らないと」
ファイブ・クロウ旅館を出たちびのノルドは、土砂降りの中に肌を晒されて思わず身を縮こめた。
雨が多い気候とはいえレーヤウィンはどちらかというと熱帯に近いので気温自体はそれほど低いわけではなく、またスカイリム出身のちびのノルドは寒さには慣れていたが、それでも衣服が濡れるのはあまり喜ばしいことではない。濡れた衣服は体温を奪い、体力を下げるからだ。
ファイブ・クロウ旅館でのいざこざに一応の決着をつけたあと、ちびのノルドは三人の戦士とともに顧客探しに奔走することになった。
本来ならば仕事探しは三人に任せてシェイディンハルに帰っても良かったのだが、あの三人をそこまで信用できるかどうかは疑わしかったし、もし顧客を得られずまた問題を起こすようなことがあれば、ちびのノルドの信用を大きく下げることになる。
そんなわけでいま、ちびのノルドは方々を尋ね回って戦士ギルドの力を必要としている人間を探していた。
といっても三人の戦士が言った通り、レーヤウィンのシェアはブラックウッド商会の独占状態にある。それに宿で騒ぎを起こした手前、そんな連中に仕事なんか頼めるかと門前払いを喰らうことも多々。
諦めてまた酒に逃避しようとする戦士たちを張り倒しつつ、ようやく彼女は<三姉妹の宿>で依頼人となりそうな人間とコンタクトを取ることに成功したのだった。
「ブラックウッドの連中は仕事が手荒いし、どうも胡散臭いから、あまり頼む気になれなかったのよねぇ。といっても、戦士ギルドの能力も疑わしいものだけど」
「あ、それ、わかります」
「なんですって?」
「ナンデモアリマセン」
「…本当に大丈夫なのかしら」
三姉妹の宿、通称「レーヤウィンの高級なほう」にてちびのノルドが接触したのはマルガルテという、普段は商取引のコンサルタントとして活動している女性だった。
金と密に関わる仕事だから逆恨みでもされたのか、護衛でも必要としているのか…と思いきや、さにあらず。彼女の依頼は本業とは関係のないものだった。
「じつは私、趣味で錬金術の研究をしているのよ。でも、このあたりの店ってどこも品揃えがあまり良くないのよねぇ。そこで、戦士ギルドに錬金術の材料の調達を頼みたいのだけど」
「ハァー、錬金材料ですか」
優雅というか、金のかかる趣味だなぁ、などと思いながら、ちびのノルドは適当に相槌を打つ。
「それで、どんなものを?」
「オーガの牙、ミノタウロスの角、といったところかしらね。新鮮であればあるほどいいわ、お金の心配ならしないで。こんなの、ブラックウッドの連中に頼んだら、どんな怪しいモノを掴まされるかわかったもんじゃないからね。その点、戦士ギルドは仕事に関しては実直というか、馬鹿正直だと聞いているから、安心できるわ」
「あ、あはは…」
戦士ギルドの連中にせこい詐術を使う脳味噌などないだろう、という、遠回しに「あいつらはバカだ」という言葉を聞いて、ちびのノルドは苦笑いする。
もっとも、バカだからこそ信頼できる、というのだから、ある意味では名誉なことなのだが…
しかし、オーガやミノタウロスからトロフィーをもぎ取るのはけっこうな重労働だ。あの三人に務まるだろうか?と、そこまで考えて、ちびのノルドはかぶりを振った。
こういう仕事こそ、むしろ戦士ギルドの本分だ。余計な心配をする必要はないだろう。
「それじゃあ、契約の細かい部分を詰め…」
「待って、慌てないで。いきなり本契約は結べないわ、せっかちさんね。えーと、私はブラックウッドの連中をあまり気に入ってないけど、戦士ギルドに対する信用もそれほど持ち合わせていないわ。残念だけど…状況を考えて、身内贔屓を抜きにすれば、それは理解できるわね?」
「え、ええ…」
「だから、まあ、試験というわけじゃないけど、手始めにエクトプラズムを一ポンドほど持ってきてくれないかしら?」
「え、エクトプラズムですかぁ~?」
「たしか、すぐ近くのゼニタール大聖堂の地下墓所でゴーストが出没して神官たちが困っていると聞いたわ。そのゴーストを退治してエクトプラズムを入手すれば、教会からも報奨金が貰えて一石二鳥じゃない?」
「えー、まあ、そう、なんですけど…」
「なにか問題でもある?」
「…いえ、ないです」
どうにか仮契約を取りつけ、ちびのノルドはその場から辞退する。
せっかく仕事を手に入れたとはいえ、彼女の顔はじつに浮かなかった。
「…ゴーストかぁ…」
** ** ** **
「こんなのしかないですか?」
「こんなのとか言うな。だいたい、拳で霊体を殴ろうってやつが珍しいんだから」
「う~ん…あんまりしっくりこないなぁ」
レーヤウィンに一軒のみ存在する鍛冶屋<ディヴァイディング・ライン>にて。
ゴーストを相手にするため銀製、またはエンチャントが付与されたガントレットを探しに来たちびのノルドは、店主のトゥン=ジィーウスが用意したものを一通り試着したあと、不満げにため息をついた。
ちびのノルドはゴーストが苦手だ。
幽霊が怖いから、という感情的な理由はさておき、通常の武器や拳撃では傷一つつけられない、というのが一番の理由だった。世の中には拳でゴーストをしばき倒す達人も存在するらしいが、生憎ちびのノルドはその方法を知らない。
そのため今回、教会地下のゴーストを退治するための武器を用意することになったのだが…
「銀製の剣や斧ならあるがなぁ。小手やなんかの、本来防具に使う代物ってなると、やはり難しいぞ」
「わたし、刃物は苦手なんですよねー」
「メイスはどうだ?」
「や、そういう問題では…」
積極的にあれこれ薦めてくるトゥン=ジィーウスに、ちびのノルドは煮え切らない返事をするばかり。
付き合いきれん…そう思い、立ち去ろうとしたトゥン=ジーウスがふと顔を上げた。
「そういえば、お前さんに合いそうな武器があったな」
「武器、ですか?」
「本当は客に預けられた代物で、修理を頼まれたんだったかな、ところが何年経っても引き取りに来やがらないから、いまは倉庫で埃を被ってるはずだ」
なんだったら売ってやってもいい、見てみるか?
そうトゥン=ジィーウスに促されるまま、ちびのノルドは店内にある倉庫へと足を踏み入れた。
** ** ** **
「うわ、いるなぁー…」
レーヤウィンのシンボルとも言える、ゼニタール大聖堂の地下霊安室にて。
あちこちを漂っている複数のゴーストの姿を目撃したちびのノルドは、若干腰が引けながらも一歩足を踏み出した。
「やだなぁ。怖いなぁ。幽霊嫌いなのに…」
そういえば、最近も幽霊絡みの事件に巻き込まれたような?
そんなことを考えつつ、いや、躊躇しても仕方がない、ちびのノルドは覚悟を決め、新調した「武器」を手に、ゴーストの集団の中心へと踊り出た。
『ショォォオアアアアァァァァ』
「ふんっ!」
ゴーストに、ちびのノルドの一撃が炸裂する!
その両の手に握られていたのは、トンファー…シロディールでは滅多に見られない、異国の打撃武器である。
エンチャントこそされていないが、末端の留め具に銀を使っているから、その部分で殴ればゴーストにダメージを与えることができるはずだ…という、トゥン=ジィーウスの言葉通り、初撃をまともに受けたゴーストは身体が真っ二つに切り裂かれ、塵のように崩れ落ちた。
「怖くない、怖くない、怖くないっ!」
決死の形相でぶつぶつ呟きながら、ちびのノルドは無我夢中でトンファーを振り回す。
「人間とおなじ、人間とおなじ、人間とおなじ!」
トンファーを握ったのは初めてだが、格闘技とおなじく護身用の棒術などを学んだ経験のあるちびのノルドの動きは決して素人のそれではない。
「イヤァァァァァッッ!!」
『クガゲハァァァァ!』
演舞の型のような動きに翻弄されるゴーストに、白銀の軌跡を描く一撃が叩き込まれる!
一方、ゴーストの攻撃方法は対象を凍りつかせる冷撃魔法に限定される。しかしよく観察してみれば、その発動の前後の瞬間は隙だらけなのである!
おそらく生前はたいして武道や魔術に精通していない一般人だったせいもあるのだろうが、怨念だけで強くなれるなら誰しも苦労はしないのである。
「フンッ」
ボサ、ドサドサッ!
やがて教会の安全を脅かしていたゴーストはふたたびその魂の行き場を現世に失い、霊的な物質をその場に残して消滅した。
あとは、この場に残された奇妙なもの…エクトプラズム、錬金術の材料として重宝されているらしいが、いったい何に使うんだか…それを回収すればひとまず依頼は完遂できる。
しかしちびのノルドの表情はどこか浮かないまま、自らの手に握るトンファーを見つめ呟いた。
「…これ、悪くないけど。やっぱり、あんまり慣れないなぁ」
ちびのノルドは、この異国の武器をけなしているわけではない。
ただ、どうせ扱うならちゃんと指導を受けたい、あるいは関連書籍だけでも目を通して最低限の所作を身につけたい、というのが本音だった。きちんと扱えたなら、きっと、もっと強くなれる。
しかしシロディールにいる限り、その願いはどちらも叶うことはないだろう。
「まぁ、気長に考えますか」
いま考えても仕方のない悩みは脇によけておくとして、ちびのノルドはあらかじめ用意していた麻の袋を取り出してエクトプラズムの回収をはじめた。
** ** ** **
「こんなもので如何でしょうか?」
「あら、まあ!仕事が速いわね、戦士ギルドもそう見捨てたものではないわねぇ」
依頼人であるマルガルテ夫人の邸宅にて。
ちびのノルドが回収したエクトプラズムは規定量を満たしていたようで、無事に本契約を結ぶことができた。
「それでは翌日以降、別の担当者が改めて伺いに参りますので」
「あら、あなたが材料を集めてくれるんじゃないの?」
「や、私、本当は別の支部に所属しているので。そろそろ戻らないと」
「ああそう、そういえばこのあたりで見ない顔だものね。ここのギルドが起こした不祥事の調査に来たのだったかしら?残念だけど、仕方がないわね」
「恐れ入ります」
マルガルテに見送られながら、ちびのノルドはうやうやしく一礼すると、その場を辞退した。
** ** ** **
「仕事、見つけてきましたよ」
「おおそうか、有り難ぇ!こっちもなんとかモノになりそうな案件を幾つか見つけたところだ」
ファイブ・クロウ旅館にて。
レーヤウィン支部所属の戦士ギルド会員たちと合流したちびのノルドは、早速成果を報告した。
彼らとは成り行きで殴り合いにまで発展してしまったが、いまではそのことを水に流し、戦士ギルドに所属する同志として接している。わだかまりが残っていないわけではないが、この際、気にしないほうが得策だろう。
「よかったねぇ。これであたしもようやくツケが払ってもらえそうだよ」
「済まなかったな、女将さん。もう迷惑はかけねぇよ」
さんざん戦士たちの横暴に悩まされてきたウィッセイドゥトセイも、いまではそれほど怒っていない様子で話に加わる。
「ところで、あたしからも仕事の依頼をしたいんだけどねぇ」
「なんだい?なんでも言ってくれよ、力になるぜ女将さん」
「そうかい嬉しいねぇ。それじゃあ…」
「まずは店を掃除しな!」
ちなみに、宿つきの酒場は昨日ちびのノルドが屈強な戦士たちを相手に大立ち回りを演じてから一切手がつけられていない。乱雑に散らかったままだった。
「こんなの戦士の仕事じゃねぇ…金は出るのかい?」
「バカ言うんじゃないよ!あんたたちが散らかしたんだから!」
「なんで私まで…」
「つべこべ言わずにほら、さっさと手を動かす!でないと衛兵に通報するからね!」
もちろん原因は自分たちにあるのだが、なんとなく釈然としない様子で掃除をする三人の戦士とちびのノルドに、ウィッセイドゥトセイが激を飛ばした。
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