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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2012/05/02 (Wed)06:53
「待てよ、おい…待てって!話を聞けよ!」
「ん、なんじゃ?」
 ゴブリンの巣窟と化していたアッシュ砦で一晩を過ごしたリアは、ウェイノン修道院へと向かう道中で言い争いをする2人の若者の姿を見つけた。



「五月蝿いぜ、兄貴!このまま、あのクソッタレどもの好き勝手にさせていいってのかよ!」
「いいか、これは家族の問題だ。親父の助力がなけりゃあ…」
「その親父はいま飲んだくれで役に立たないだろうがよ。家族の問題ってなら、あとはもう俺たち2人でどうにかするしかねぇだろうが!」
「これ、これ、これ。そこな童どもよ」
 議論が白熱し、いよいよ掴み合いの喧嘩になろうかというとき、リアは諍いを止めに入った。
 突如現れたゴスロリ服の幼女(しかもババア口調)に、2人の若者は驚きを隠せない。
「な、なんだコイツ」
「喧嘩はよさぬか。往来でみっともないとは思わんか、のう…ワシで良ければ、力になってやらんでもないがの?」
 慈母のような優しい眼差しで若者たちを諌めるリア。
 数千年という永い時間を、器を変えながら時代のうつろいを眺め続けてきたリアの、人間…特に若者に対する視線は温かい。
 人間がまだ「造られし奴隷」だった時代に生まれ、「ウォッチャー(観察者)」としての使命をまっとうするために永い時間を生き、最期にはかけがえのない「仲間」と「感情」を得た。
 リアは人間ではない。が、冷たい機械でもない。感情を持つ「生きた機械」、それがHEL-00…「リア」と呼ばれた生命体なのだ。



 だが、そんなことは知る由もない2人の若者(どうも兄弟らしい)にとって、リアはただ生意気な小娘にしか見えない。
「あのなお嬢ちゃん?俺たちはいま大事な話をしてるんだ、わかるか?子供の遊びに付き合ってるヒマはないんだ、わかったらママのところへ帰るんだ、いいな」
「ワシに両親などというものはおらぬし、こう見えてもお主らよりは長生きしておる。年の功というのは期待できるときにアテにするものじゃよ?」
 リアはまったく平静そのものといった表情でそう言う、が。
 若者の表情にはさらに深いシワが寄っただけ。あー、やっぱり「想像力豊かな子供(笑)」だと思われてる。典型的な厨二病患者だと思われてる。きっと成長したら当時の妄想は黒歴史になるとか思われてる。
 困った、という表情でリアは首筋を掻くと、ならばと言った。
「要は、ただの小娘ではないことを証明すれば良いのじゃな。どれ」
 リアは懐から古びた鉄製のダガーを取り出した。アッシュ砦でゴブリンが持っていたものを拝借したのだ。そいつを素手でぐにゃりと曲げ、兄弟の前に放り出す。
「おいおい、こんなオモチャで何を…おぉ!?」
 苦笑しながら曲がったダガーを拾った兄の方(おそらく子供用の玩具かなにかとタカを括っていたのだろう)は、手の中に納まった刃物のずっしりとした重量感に驚きを隠せなかった。
「ほ、本物…なのか?」
「ケッ、阿呆らしい。なにか事前に細工してたんだろ?なら、コイツを」
 弟の方が、身につけていたロングソードをすらりと抜くと、リアに手渡した。
「こいつを曲げることができたら、協力を頼んでやってもいいぜ?」
「ふんぬ」
 弟の方が言葉を言い終えないうちに、リアは膝でロングソードを弓なりに曲げる。
「あーッ!!俺の大事な剣!?」
 まさか(というか当然というか)本当に曲げられるとは思っていなかった弟の方は、無残にも折り曲げられた剣を見て悲鳴を上げた。
「あー、あー、あー、あー」
「え、な、大事なものだったのか?ならばこう、こうで…」
 ぐにょ。
 リアはふたたび力をこめ、剣を元通りに曲げようとした。いちおう真っ直ぐにはなったのだが、それでもどこか曲がっているような、歪んでいるような。
「あー、あー、あー、あー」
「す、スマン…」
 やれと言われたことをやっただけなので、本来ならリアが謝罪するいわれはないのかもしれないが、それでもあからさまに落胆する弟の方を見て、リアは罪悪感に苛まされたのだった。

「成る程、農場をゴブリンにのう」
 けっきょく。
 オディール兄弟と名乗る若者たちに助力を乞われたリアは、道すがら事情を聞くことになったのだった。ちなみに弟のアントゥスは、歪んだ刀身がひっかかって鞘にうまく収まらないと愚痴をこぼしている。
 もっぱら状況説明は兄のラルスの役割だった。
「あの連中、作物を荒らしたり家畜を殺したり、まさに好き勝手放題さ。人間じゃないから抗議も通用しないしな。おまけに凶暴で、しかも武装してる。手がつけられない」
「さっき、父親の助力がどうとか言うておったが…?」
「…親父は、戦争の英雄だった。元軍人で、凄腕の剣士だったらしい。いまじゃ、しがない農場主だがね。大分前におふくろが死んで、それ以来は畑仕事もせずに一日中飲み屋で酒ばっか飲んでる有様さ…同情の余地もなくはないが、それも10年近く続けば愛想も尽かすさ」
 父親の話をするラルスの態度は愛憎入り混じっており、複雑な家庭事情を思わせた。このあたりは、いわゆる人間として生を受けたわけではないリアにとって理解し難い感情だ。
「親父が駄目人間になってからは、俺とアントゥスで農場を切り盛りしてきた。で、今回のゴブリン騒動さ」
「クソ親父はアテになんねーし、街の連中の誰一人として手を貸してくれるヤツぁーいねえ。こうなったら俺たち2人でゴブリンどもを退治してやろうぜって、そういう話をしてたワケよ」
 血気盛んにそう語るアントゥスを見て、リアはつくづく手を貸すことにして良かったと思わずにはいられなかった。
 物腰を見た限りオディール兄弟に兵役経験はなく、基礎体力はあるものの剣の扱いは素人同然だろう。ゴブリンがどれだけいるのかはわからないが、おそらく兄弟だけだと返り討ちに遭う可能性が高い。
 将来有望な若者を、農場の肥やしにするには忍びない。



「来たぞ…」
 3人がオディール農場に到着したのとほぼ同時に、周囲からゴブリンの群れが姿を現した。
「ひぃ、ふぅ、みぃ…数はそれほど多くないが、油断は禁物じゃの」
 ゴブリンの群れを鋭い視線で見据えるリア。
「ギョエエェェェェエエエエッッッ!!」
 咆哮とともに襲い掛かってきたゴブリン目がけて、リアは牽制のつもりでトランクを振り回す。



 ゴガッ!
「ギヒィェェェエエエッッ!!??」
 トランクの角が見事にゴブリンの顎を捉え、口蓋を完全に破壊する。
 リアがそのままトランクを振り抜くと、ゴブリンは宙を一回転してぶっ倒れ、そのまま起き上がってこなかった。
「むむ、このトランク思っていたより相当に頑丈じゃのう。このまま武器として使えるに相違ない」



 すでに空は赤みがさしはじめ、戦闘もたけなわである。
 数が少ないと思っていたゴブリンだったが、実際には次から次へと援軍が押し寄せてきて収拾がつかない状態になっている。これまで意想外に善戦してきたオディール兄弟も、さすがに疲労が隠せない。
「チックショウ、まだ出てきやがんのかこいつら!?」
「童、そこを退いておれッ!」



 いままさにアントゥスの頭上に斧を振りかぶらんとしているゴブリンに、リアは突進する。
 周囲のゴブリンともども蹴散らし、リアは華麗に着地した。右手にカタール、左手にトランク。妙な2刀流の完成である。
「これで全部、か…?」
 息をせき切らしながら、ラルスが周辺を観察する。
 ゴブリンどものやかましい叫び声がなくなり、これまでの激戦が嘘のように静寂があたりを包みこむ。
『環境探査フィールド展開。オディール兄弟を除く四方100メートル以内のクラスD生命体反応、なし。警戒レベルをイエロー2からグリーン4に引きさげます。お疲れ様でした、ゼロシー』
 リアの脳内で、支援システムが状況を告げる。相変わらず、一部の言動に意味不明な箇所があるが…
「どうやら、もう安全のようじゃな。お主ら、よく頑張ったのう。2000年前なら惚れていたかもしれんな」
「…あんた、そんなんに長生きしてたのか?」
「冗談じゃ。これ、そんなにヒクでない」
 本当は冗談でもないのだが。
 どうやらオディール兄弟はリアのことを「魔女」かなにかだと思っているらしい、もちろんこの世界のフォーマット的には「戦闘用アンドロイド」よりも「魔女」のほうが、得体の知れない存在を受け入れるための理屈としては理に適っているのだろうから、あえてリアも訂正はしないのだが。

 是非お礼がしたい、というので、リアはオディール兄弟に連れられてコロールの街にある宿「グレイ・メア亭」へと足を運んだ。
「それにしてもこの親父様、まさか本当に朝から晩まで酒を飲んでいるとはの」



 ジョッキでビールを仰いでいる兄弟の父ヴァルス・オディールを睨みながら、リアは若干説教くさい口調で言った。
「息子が命をかけて土地を守っていたというのに、自分は酔っ払っていたとは良い御身分じゃのう?嫁に先立たれて傷心なのは理解できんでもないが、さらに2人の息子も失うところだったと考えることはできんかったのか?」
「もういいよ、姐さん」
 沈痛な面持ちでうな垂れるヴァルスを責めるリアを、ラルスが諌めた。さりげなく呼び方が変わっているが、あえてツッコミは入れないことにする。
「これ以上は家族の問題だ。心配してくれるのは有り難いけど、親父のことは俺に任せてくれ」
「う、うむ、お主がそう言うのならば、仕方がないのう。スマヌ、出過ぎた真似をしたようじゃ」
「いいんだ。たまにはガツンと言ってやらないとな、親父にも良い薬になっただろう」



 オディール一家と別れたリアは、今回の騒動の謝礼として受け取った剣を一瞥した。
 父親のヴァルスが現役時代に使っていた剣の一つ、魔法剣「チルレンド」。蒼白く発光する刀身を眺めながら、リアはぽつりと呟く。
「ううむ、これはまさしく名工が鍛えしワザモノに相違ない。見事なり…」
「ウィー。ヒック。だから俺ぁ、シェイディンハルなんかには行ったことないんだって」
 リアの傍らで、ひどく酔っ払った若者がうわごとをボソボソと呟きつづけていた。
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無題
ひさしぶりにTES4のSSを更新しました。
投げたわけじゃ、ないんだよ。本当だよ。
いちおう完成までは書き続けたいなぁ…
グレアム@BBA 2012/05/02(Wed)07:03 編集
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