主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。
生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。
http://reverend.sessya.net/
2016/01/21 (Thu)20:24
「マンモスいんざすかい!」
巨象が宙を舞うスペクタクルな光景には、さすがのトレーズも驚いた。
ちなみにマンモスはその後無事に着地した。象の足の固さは伊達じゃないようだ。
スカイリムで活動する反乱軍を討伐するためアルドメリ軍より派遣されたトレーズは現在、山賊などの不穏分子を排除するため各地を放浪していた。
お世辞にも現在のスカイリムの治安は安定しているとは言い難く、反乱軍との戦いを控えるいまの状況で、周辺の治安維持のために兵力を割かなければならない帝国の現状は好ましいものではなかった。
現地で活動を続けているサルモール諜報部は内戦の長期化による両勢力の弱体化を目論んでいるようだが、トレーズが所属する軍部はタロス信仰が根強く残るスカイリムが周辺諸国に与える影響と、万が一にでも反乱軍が帝国を打倒しスカイリムが独立を果たしてしまうことを憂慮しており、反乱軍の早期壊滅を目標としていた。
「これは、キャラバンが襲撃を受けたあと…ハッ、ネコしゃん!?」
リーチ地方へと続く道を歩いていたトレーズは、何者かの襲撃を受け壊滅したカジート・キャラバンを発見した。すでに金目のものは奪われたあとで、おまけに周囲にはトラバサミなどの罠まで念入りに仕掛けられている。
いったい、誰がこんな酷いことを…トレーズが推察するよりも早く、そう遠くない場所から複数の人間が争う音が聞こえてきた。
「スカイリムはノルドのものだ!」
「ぐあっ!?」
ドスッ、ストームクローク兵の矢を受け、帝国軍兵士が仰向けに倒れる。
どうやら帝国兵とストームクローク兵が交戦しているらしい、どちらも人数が少なく軽装であることから、双方ともパトロール中に偶然接触してしまったのだろう。
すくなくとも、この状況でトレーズがどちらに加担するのかは明白だ。
「ネコしゃんを襲ったのは貴様らか!タロス信仰者に死を!」
「ネコ…?えっ?」
矢を射かける帝国兵の背後から飛び出してきたトレーズ(それも、わけのわからない言いがかりをつけながら)の姿を見て、その場にいた全員が硬直する。
装備の重量をものともせず、闇を駆ける盗賊のような素早い身のこなしで剣を振るうトレーズは、面食らったまま矢の標的を選びあぐねるストームクローク兵たちを一瞬のうちに斬り伏せていった。
戦闘が終わり、帝国軍兵士たちは見慣れぬ黒騎士の姿に警戒を解くことなく質問を投げかけてくる。
「お前、何者だ。傭兵か…?」
「我が名はトレーズ、アルドメリ軍の百卒長だ。現在は特務にてスカイリムの反乱軍討伐にあたっている」
「あのエルフどものお仲間か。まあいい、この先へ行くなら注意したほうがいいぞ。山賊、反乱軍だけでなく、フォースウォーンも徘徊しているからな」
「フォースウォーン?」
「リーチ地方の先住民族だ。かつて大戦の混乱に乗じてマルカルスを制圧したあと、あのウルフリック率いる部隊に叩き出されて僻地に散っていった連中だよ。そのときの恨みがあるのか、やつら、同族以外の人間を見境なく襲ってくる傾向にある」
「つまり殺してもいいんだな?」
「構わないが、返り討ちに遭うなよ。連中の奇妙な文化には謎が多い。蛮族のような見た目に騙されるな、死ぬぞ」
「忠告には感謝しよう。だが、帝国人に心配されるほどヤワではない」
「…勝手にすればいいさ」
そのままフォースウォーンに殺されればいいのに、といったことをブツブツとつぶやきながら反乱軍兵士の死体の処分にかかる帝国軍兵士たちを無視し、トレーズはふたたび旅路を辿りはじめた。
帝国軍兵士の忠告通り、リーチ地方は少なくない数のフォースウォーンがコミュニティを形成しており、旅人やキャラバンを襲撃し略奪を繰り返しているようだ。
トレーズはサンガード砦にてフォースウォーンとはじめて交戦し、その戦闘能力の高さに驚かされることになる。
まず第一に数が多く、連携が取れており、ノルドの戦士をも上回る獰猛さで攻撃を繰り出してくるフォースウォーンの戦士に気圧されたトレーズは砦の地下へ逃げ込み、体勢を立て直すことにした。
やがてロストバレー要塞の頂上にまで登りつめたトレーズは、奇怪な容姿の魔女…ハグレイヴンが強力な兵士を製造するための儀式を執り行っている現場に出くわす。
フォースウィーン・ブライアハート。
生きたまま心臓をえぐり出され、ブライアハートを移植されたフォースウォーン最強の兵士。その者はすでに人間ではなく、圧倒的な力をもってフォースウォーンを導く不死なる存在として、あらゆる外敵を打ち滅ぼす。
『いざ死より蘇らん、我らが血を与えられし…新たな生命よ!』
ハグレイヴンたちの呼びかけに応じるように、儀式台の上で眠っていた男がゆっくりと身を起こす。さっきまで、たしかに呼吸一つしていなかったはずなのに…!
「うおおおぉぉぉぉぉぉッッ!!」
軍人として、このようにおぞましいものとは無縁だったトレーズは悲鳴に近い叫び声をあげながらハグレイヴンに斬りかかった。その首を落とし、立て続けにフォースウォーン・ブライアハートと対峙する。
苦戦を強いられたのち、トレーズは男の胸に宿るブライアハートを破壊して地に叩き伏せる。
「はぁっ、はぁっ…なんなんだこの連中、山賊なんかより余程脅威ではないか!こんな連中の話、アルドメリからも帝国軍からも聞いていなかったぞ…」
サルモール大使館はこの連中についてどう思っているのだろう?
その後もフォースウォーン討伐を続けたトレーズ、彼女をもっとも驚かせたのは、彼らがブレトンであったことだ。
「ちょっと待て…こいつらも我が祖先たるアイレイディーンの血を継いでいるというのか?ダガーフォールのブレトンはまだわかる、文化的だからな…だがこいつらはなんだ、蛮族そのものではないか!?」
あるいは…かつてアイレイドは奴隷であるネディック人を使って数々の実験を行っていたと聞く、そういった風習とリーチ地方由来のシャーマニズム的な文化が融合してこのような形に落ち着いたのでは?などと思ったが、ハグレイヴンの影響やノルド人との確執など、これまでフォースウォーンの存在すら知らなかったトレーズには理解できない部分が多すぎた。
頭痛を覚えながら、トレーズは誰ともなくつぶやく。
「ご先祖様…あなたがたを悪く言うつもりはないのです。ただ、ブレトンなどという種の創造と存続を許したのは明らかに失敗でした!私はその歴史の過ちを修正したいと考えています。彼らは必要ありません。アイレイドの血筋とアルトマーの誇りにかけて、フォースウォーンは絶滅させます」
エルフが支配するタムリエルに、こんな連中は必要ない。美しくないし。
そのことを強く実感したトレーズは、動物の頭部や人間のパーツといった悪趣味なオブジェで彩られた野営地を背に、誓いを新たにマルカルスへと向かった。
翌朝、石の都マルカルスへと到着したトレーズは、その堅固な要塞を前に口を開いた。
「ここが、すべての始まりの地か…」
マルカルス事件。
フォースウォーンの撃退と引き換えにタロス信仰の容認を求めたウルフリック、白金協定に抵触するその裏取引を帝国は秘密裏に認め、大戦時にマルカルスを制圧したフォースウォーンをウルフリック率いる私兵隊が排除した。
しかし裏取引の存在を察知したサルモール政府は帝国にウルフリック捕縛を命じ、彼らはその後数年間を牢獄で過ごすことになる。
サルモールと帝国への敵愾心を胸の内に秘めながら釈放されたウルフリックはウィンドヘルムの首長に選ばれ、その後、スカイリムを統治する最高位の権力者たる上級王トリグを殺害。その場から逃走し、帝国からのスカイリム独立を標榜する反乱軍「ストームクローク」を指揮するに至る。
「あのウルフリックを一時でも野放しにするなど…我が同盟もまだ甘いな」
サルモールの目から見て、フォースウォーンに支配されていたマルカルスをどう対処するのが最良であったかは判断が難しい。
ただ一つわかっているのは、タロス崇拝を求めた危険な反乱分子たるウルフリックを予防策なしに野に解き放ったのは失策だった、ということだ。あるいは、自分には思いもよらない理由があったのだろうか?
諸々の思いを抱え、トレーズはマルカルスの街へ続く扉を開いた。
…開いたら、片手にダガーを持った男が女を背後から刺そうとしていた。
「フォースウォーンのために!!」
「ちょっと待て」
基本的に人間同士が殺し合おうと構わない、どうでもいいというのが信条のトレーズではあったが、それよりも軍人としての身のこなしが、「民間人を傷つけようとする犯罪者」の動きを見過ごそうとしなかった。
ドガッ、トレーズが男の心臓を背から一突きにすると同時に、市場が悲鳴で包まれる。
「マルカルス市警隊だ!事態の制圧のため、誰もその場を動くんじゃあない!怪しい動きをした者は斬る!」
すぐに衛兵が集結し、男の死体と、トレーズを取り囲む。
男に狙われた、マルグレットという女性は怯えた様子を隠せぬまま、震える唇を動かした。
「いきなり襲われたんです、この、フォースウォーンの男に!もしこの…黒い鎧のかたに助けられなかったら、どうなっていたことか…」
「まさか、私を咎めはすまいな?」
被害者の証言を得て、トレーズは威嚇的なフォルムのダガーを鞘に収めつつ衛兵に同意を求める。
いくらトレーズの動きが素早いとはいえ、人混みのなか咄嗟に大剣を振るうのは困難を伴う。
トレーズの持つ短剣は戦闘用ではなく、動物の皮を剥いだり、屋外での活動に用いるためのものだったが、それでも殺傷能力は申し分ない。さすがに剣や斧の一撃を受け止めるには適さないが。
衛兵はしばらくトレーズの装備を観察したのち、身分を示すマークがどこにもないことを把握すると、やや戸惑いがちに質問を投げかけてきた。
「見慣れない格好だな。傭兵か?」
「どこかで聞いたような台詞だな…いや、私は傭兵ではない。帝国軍の支援のためアルドメリ軍より派遣された、トレーズという。マルカルスに駐在しているサルモール司法高官への謁見を望んで来た」
サルモール、と聞いて、束の間市場がざわめく。
しかし衛兵隊は慣れているのか、特に動揺することなく街の奥地に鎮座する石造りの砦を指差すと、トレーズに言った。
「王宮、アンダーストーン砦はあそこだ。もし首長へ挨拶をするなら、くれぐれも粗相のないようにな」
「案内ご苦労。私はこれで失礼する」
トレーズが立ち去ると同時に、混乱したまま立ち尽くす市民を衛兵隊が追い払った。
「みんな下がれ、事態は市警隊の手によってすでに沈静化した。ここにはもうフォースウォーンはいない、日常の業務に戻れ!」
フォースウォーン、フォースウォーンか…
そういえば、とトレーズはひとりごちる。
もしあの男がフォースウォーンなら、連中はあの狭いコミュニティに引っ込んでいるだけではなく、市民生活に紛れて復讐の機会を窺っているということか。となると、状況はトレーズが考えているよりも厄介なものである可能性がある。
隠れタロス崇拝者は表立ってサルモールと敵対するものではないが、あの連中は…白昼堂々刃物を振り回すとは。それもあの手口から見て、逃走は考えていないだろう。自己犠牲を厭わぬ献身、もっとも警戒すべき、性質の悪いゲリラ戦法だ。
「懸案事項が増えたな。まったく、面倒な連中め…」
マルカルスの王宮たるアンダーストーン砦に入ったトレーズは、リーチ地方におけるサルモールの活動を統括する高官のオンドルマールと対面した。
アルドメリ軍から派遣されたというトレーズを見つめ、オンドルマールが口を開く。
「軍がスカイリムの反乱戦力を制圧するため、帝国に兵を送るとは…先例のない話だな」
「馬鹿共のタロス信仰を野放しにしておくわけにはいかんのでな」
「まさか内戦における宗教的側面を本気で憂慮している連中がいるとは思わなかったな。悪く取らないでほしいが、現地で活動する諜報員にとってタロス信仰廃絶はあくまでも口実に過ぎない。軽視しているわけではないが、それより今後の対帝国政策における優位性の確保が大事なのだ」
「そんなことだから、ストームクロークのような連中をのさばらせる結果を招いているのではないか?」
「その点について否定はすまい。あの連中にはまだ利用価値がある」
それからしばらくの間、二人は異なる立場の人間として意見交換をする。
身分の高さで言えばオンドルマールのほうが上であり、特務を帯びているとはいえ一端の下級将校に過ぎないトレーズは本来なら対等な口をきけるはずはないのだが、そこはオンドルマールの気さくな性格と、トレーズの物怖じしない態度でどうにか会話が成立していた。
なによりエルフによる大陸の支配と、劣等民族の殲滅という理念が一致していたことから、両者の間に同胞としての信頼と共感が芽生えていたことが理由として大きい。
一通り話を終えてから、トレーズは安堵のため息をついた。
「話の通じる相手で助かった」
「どういうことだ?」
「いや、その、な…スカイリムに展開しているサルモールだが、ちと、血の気が多すぎるのではないか?大抵話が通じないどころか、この間なぞ白昼の往来で襲いかかられたぞ。同胞相手にさえ見境を無くすのはどうかと思うぞ」
「なに、本当か?それは良くないな…今度大使館に戻ったときに通達しておこう。災難だったな」
「気にかけてもらえるだけで有り難い。あなたと話ができて良かった」
トレーズは柄にもない笑顔を見せ、兜をかぶりなおすと、街で宿をとるために石段を降りはじめた。
ここスカイリムで気を許せる相手は多くない。
同胞として話の通じる相手との会話を楽しんだことを思い返し、トレーズはふと、首をかしげた。
「そういえば、あいつの名前なんだっけ?…オンドゥルマール?」
>>to be continued...
どうも、グレアムです。ただあちこちフラフラするのもアレなんで、今回はリーチ地方まで足を伸ばしてみました。別にサムおじさんと酒飲み勝負したわけじゃないよ。本当だよ。
次回からスカイリム全土をぐるりと回って帝国ルートに突入する予定なんですが、トレーズの場合はあまり寄り道したり頼み事を聞くのも不自然なので、極力クエストを受けないようにします。受けたとしても日記には反映しない。
オンドゥルマール(ナズェマチガエルンディス!?)さんは話のわかるサルモールとして有名ですが、彼の場合はたんに最低限の聞く耳を持っているだけで、思想は典型的なサルモールなので、べつに善人ではないんですよね(人間にとっては)。それでも一定の支持を集めるのはやはりイケボの成せる業か。
もっともサルモール側でRPしていると彼以上に魅力的なNPCってそういないので(他の名無しサルモール司法高官は敵対行動取ってなくても平気で襲ってくるし)、いずれにせよ貴重な存在に変わりはないです。イケボだし。
PR
Comment