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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2024/04/20 (Sat)22:42
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2016/02/06 (Sat)15:07






『持ち帰ったのですね、ドーンブレイカーを…』
 死霊術師マルコランを討伐しメリディアの祭壇へ帰還したトレーズは、神殿から持ち帰った一振りの剣を見つめた。
 聖剣ドーンブレイカー。
 不死者を焼き払い、この世ならざるもの…定命の理から外れた者を殲滅するためにメリディアが造りだした、対アンデッド用の宝具。
『聖堂には安息が訪れました。しかし、いと悲しきことに世はいまだ不浄に満ちています…その剣をもって忌まわしき不死者どもを討ち払い、死者に安らぎをもたらすのです』
 ドーンブレイカーを使い、世にはびこる死霊どもを退治せよと下命するメリディア。
 この場合、剣の下賜は褒美である。デイドラ・プリンスより与えられる強力なアーティファクトを受け取らぬ理由などないはずであったが、トレーズは剣を祭壇に奉げると、うやうやしく頭を垂れて膝をついた。
「メリディア様、無礼を承知で申し上げます。私は、この剣を受け取ることができませぬ」
『…理由を聞きましょう』
「私にはメリディア様が四千年前に我が一族に御下賜された、扱い慣れたるこの宝剣がありますゆえ。私はこの剣を振るい、邪なる者どもを滅ぼしてみせましょう」
『では、デイドラ公たる私が直々に与える褒美をいらぬと申すのだな?』
「はっ。失礼は承知のうえ、慈悲を請いはいたしませぬ。私は怒りを避くるに値せぬ者なれば、ただ黙って罰を受け入れる所存。このドーンブレイカーはいつか来たりし敬虔なる信徒に、聖なる御心をもってお与えくださいますよう」
『殊勝なことだ。よい、罰など与えまい。汝、揺るがぬ光とともにあれ、忠実なる従徒よ』
「有り難き御言葉。では、私はこれにて失礼いたします」
『ああ、それと…』
「なんでしょう?」
『たまには掃除に来てくださいね』
「…… …… …は」
 メリディアの言葉の真意を、トレーズは計りかねる。
 聖堂に侵入を試みる不死者どもを退治しろ、という意味だろうか?まさか言葉通りの意味ではあるまいが…
 信者の姿が見えぬ寂れた祭壇をあとに、トレーズはキルクリース山を下りる。途中、鎧の中で眠っていたミルムルニルがトレーズの意識に語りかけてきた。
『じゃじゃ馬娘がしとやかに振る舞うこともあるとはな。まこと奇ッ怪よの』
「やかましい。奇怪とか言うな」
 こいつ、私の行動をすべて監視してるんじゃないだろうな…そんなことを考え寒気を覚えながら、トレーズは聖堂で起きた出来事を思い返す。
 竜は…ミルムルニルは、『物事には段階がある』と言った。『お前が理解する必要がある』とも。ただ答えを言葉で聞くだけでは駄目なのだ、と。
 率直に言って、トレーズにはミルムルニルの言葉も、言葉の意図も理解できなかった。
 そもそも人間と竜とでは思考に根本的な差異があり、生物的にもまったく異なる存在だ。人間と同じ言葉を喋るからといって、相手を人間と同じように考えるのは危険だとトレーズは思っていた。
 そういうわけで…人間とはまったく異なる思考体系を持つ生物にツッコミを入れて何になろうかと、トレーズはミルムルニル相手に真剣に怒りを発露させることはあるまいと務めていた。たとえ、どんなに無礼なことを言われようと。
『普段からそのようにしておれば嫁の貰い手もあるだろうに』
「うわーもぉうるっさいなこのビッグ爬虫類!」








「いいか、あれを…」




「こうだ」
 ズギュンッ!

 マルカルス、アンダーストーン砦。
 ヴォルスキーグでのアンデッド退治を終えたトレーズは休息がてら、サルモール司法高官のオンドルマールと魔法談義に華を咲かせていた。
 召喚呪文で花瓶の上のリンゴを呼び寄せたトレーズに、オンドルマールはややためらいがちに口を開く。
「遠くの物を引き寄せるだけなら、変性系統の呪文で事足りると思うのだが?」
「もちろん、術の届く範囲内であれば念動力で充分だ。召喚呪文の利点は距離を問題としないところだ、どれだけ遠く離れていても呼び出すことができる」
「変性系統の念動力と召喚術では根本的な理論(ロジック)からして違うからな」
「そう。で、たんに…リンゴを召喚するだけなら大した苦労はない、が、たとえば今のように『アンダーストーン砦の花瓶の上に置いてあるリンゴ』といったような、特定の物を召喚しようと思った場合は、ちょっとした手間がかかるわけだな」
「タグづけが必要になるな。形式上は、無機物が対象でも『契約』という単語を用いるが…それで、君はこの実験で私になにを証明しようというのかな?」
 オンドルマールの質問に、ニヤリ、トレーズは笑みを浮かべると、手を広げて語りはじめた。
「たとえば武装していない状態で街道を歩いていたとするな。それで、突然山賊に襲われたとする。そういう状況で、召喚呪文を使って武器と鎧を召喚!瞬時に装着して戦闘態勢に入る、といったようなことがやりたいわけだ」






「…わざわざ、そんな手間をかける理由は?」
「カッコイイだろう!?ヒーローみたいで!」
 目を爛々と輝かせるトレーズ、しかしオンドルマールの表情は明るくない。
 たんに子供じみた発想に呆れただけではなく、彼女のアイデアの実現には技術的な困難が伴うことを理解しているからだ。
 内にこもるようなため息をついてから、ピッ、オンドルマールは人差し指を立てて言った。
「率直に言って、それはおすすめできないな。特に鎧は…召喚する位置の問題だ。おそらく君は、鎧を召喚と同時に装着することを想定していると思うが…召喚した鎧と肉体の座標が重なった場合、両者は一体化してしまう。重大な障害を負う可能性のみならず、死に至る危険性が高い。それに敵と交戦している状態で召喚位置の座標を精密に設定するのは難しい、多くの武具召喚魔法が物質ではなく霊的エネルギーを利用するのはそういう理由だ」
「それはわかっている。物質的な武具召喚のデメリットについては実験済だからな」
「実験?」
「召喚対象が他の物質と重なったらどうなるか、だ。ためしにマッドクラブを使って、似た個体のマッドクラブを位置座標を重ねて召喚したらどうなるか試してみた」








『キュー』
『キュー』
「うわああああああ」







「…見事に一体化したよ」
「そうか…」
 かつて実験で微妙なキメラを創造したことを思い返すトレーズに、オンドルマールは「わざわざ実験しなくてもわかるだろ…」という表情を向ける。
 しかしすぐ、別のことに関心が沸いたオンドルマールはトレーズにある質問をした。
「君はマッドクラブを召喚できるのか?珍しい魔法を使えるんだな」
「ほう、珍しいか?もしや、特別な…」
「いやマッドクラブを召喚したがる魔術師なんかいないからな。そんな魔法があること自体に驚いている」
「見せてやろうか?」
「いや、いい」
「おりゃー」
「いいって!」




 ズギャアァァーーーァァアアン!!

 オンドルマールの制止も聞かず、テーブルの上にマッドクラブを召喚するトレーズ。
 彼女の予想外の凶行にオンドルマールは思わず悲鳴を上げた。
「いったいなにを考えてるんだ!?」




見上げたカニ毛が出と~る
『きゅい~』




キタ━━━(゚∀゚)━━━!!




キタ━━━(゚∀゚)━━━!!




キタ━━━(゚∀゚)━━━!!

「カニだ!うまいぞ!」
「それ今やる必要あったのか!?」

 と言いつつ、一緒に食べるのだが。
 茹でたマッドクラブの殻を丁寧な手つきで剥がしながら、オンドルマールはどこか遠くを見るような目をしながらつぶやく。
「海鮮かぁ…」
「川だけどな」
「うん」
「海鮮といえば、ハンマーフェルにいた頃は海産物ばかり食べてたな」
「ハンマーフェルにいたのか?大戦のときに?」
「ああ。大戦終結後の五年間は沿岸部での一進一退の攻防が続いてな、ずっと漁港にカンヅメだ。あのときはもう魚なんか見ただけで吐き気がしたものだが、今となってはそれも懐かしい」
「海の幸かぁ…ここの料理人の腕も悪くはないんだが、なにせこう、陰気な山奥だとレパートリーに乏しくてな。たまには魚が食べたい」
「この砦の厨房は頼めば貸してくれるのか?」
「アントンは嫌がるだろうが、サルモールの名に逆らうほど愚かではない」
「そうか。なら、こんど材料を持ってきてやろう。ハーブ入り海鮮バタースープを作ってやるぞ」
「それは楽しみだ。ここ最近聞いた話の中ではいちばん嬉しい提案だな」




 その後、二人はおおよそ仕事とは関係ない話題で夜明け近くまで盛り上がった。
 そのうちオンドルマールが眠くなった目をこすりながらつぶやく。
「いかん、もうこんな時間か。すっかり話し込んでしまったな、これは今日の業務に影響が出そうだ」
「文官も大変だな…付き合わせて悪かった」
「構わんよ、たまには同胞と普通の会話をするのも悪くない。なにせ隠微な状況だからな」
「せいぜい未来のために頑張るとしようか、互いに。私も宿に戻るよ」
 話している間に少量ならざるアルコールを頂いていたため、トレーズはすこし夜風で酔いを冷ます必要を感じていた。

 アンダーストーン砦を出て守衛に一瞥をくれ、水の流れ落ちる音に耳を傾けながら、トレーズはタムリエルの今後の行く末について僅かばかり思いを馳せる。
 多くのサルモールと、トレーズの戦う理由には大きな剥離がある。
 サルモールが耳の丸い人間族を憎んでいるのは第二紀におけるタイバー・セプティムの征服戦争に端を発しているが、トレーズはそれよりも前、自身のルーツである第一紀のアイレイド滅亡にまでさかのぼる。
 そして他種族を粛清しアルトマーのみが住まう国となったアリノール(旧サマーセット島)で着々と計画を進めていたサルモールとは違い、トレーズはドミニオン(アルドメリ連合軍)に入るまではヴァレンウッドでボズマーとともに狩人として生計を立てていた。また入隊後も彼女が所属していたのはヴァレンウッド軍であり、アリノールには足を踏み入れたことがない。
 トレーズはアルドメリ軍人ではあるが、厳密に言えばサルモールではなかった。
 エルフによる大陸の再支配という理念は一致していたが、その根源的な理由、背景などにいささかの不一致があるため、同じアルトマーであるとはいえ、トレーズはサルモールとはあまり話が合わなかったのだ。
 いまそのことを思い出したのは、むしろ、オンドルマールとの会話でそうした相違をまったく感じさせなかったせいかもしれない。
 自分はアルドメリに与するアルトマーの中でも異端だ。そのことはわかっている。
 彼との会話でそういう気にならなかったのは、オンドルマールがあまり偏見を持たない人間だからか、あるいはたまたまそういう話題に結びつかなかっただけだったか。いずれにせよ、「同胞と普通に会話すること」が稀少な体験となってしまうのは、トレーズにとって、スカイリム情勢が不安定というだけの理由ではなかった。
 おそらくアルトマーがタムリエルを平定しても、この違和感は一生拭えないままだろう。
 だがそれでいい、とトレーズは思う。なぜなら彼女にとってアルトマーによるタムリエルの支配は理想実現へ向けての第一段階に過ぎないのだから。
 そのためにはタロス信仰などというふざけた概念を破壊し、耳の丸い人間族を端々に至るまで根絶排除粛清し、この世界を綺麗に掃除する必要がある。
 トレーズにとって今のタムリエルは汚れた部屋も同然だ。ゴミを片付け、すっかり住み着いてしまった害虫を駆除しなければならない。
「…とりあえず、また明日(もう今日だけど)から頑張るかあ」
 んっ、トレーズは大きく背筋を伸ばして欠伸をすると、宿を取ってあるシルバーブラッドに向けて若干ふらついた足取りで歩いていった。



>>to be continued...








 どうも、グレアムです。
 こっちはシリアスでギャグはアーケイドのほうに回す、みたいなことを以前書いた気がしますが、そんなこと関係なく和やかな話を織り交ぜてみました。本当はカニと空耳アワーネタはアーケイドのほうでやる予定だったんですが、召喚術まわりの話とあわせてこっちでやるほうが自然にインサートできたのでこんな結果に。
 武具召喚の構想の元ネタはあれです、ぶっちゃけ仮面ライダーです。変身!です。カメンライドです。今後ネタとして使うかはわかりません。
 我らがオンドゥル王子は、うーん…べつにフラグ立てるつもりは今のところないです。今回はあくまでトレーズが同胞相手なら普通の女の子みたいに接するという点を強調するためのエピソードなので。ノルドだらけのスカイリムだからヤサグレ度MAXなだけで、基本的に仲間意識は強いです。ソリの合わないサルモール相手に不満を漏らさない程度には。
 普段の態度の悪さは、周囲がオルフェノクだらけで常時キレてる草加雅人みたいなもんだと思ってください。ノルドは全員敵だ、そう思わなきゃ戦えないだろう!そんな感じで。死ぬわコイツ。














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無題
心を蝕もうとする夢がトレーズさんを徐々に闇に引き寄せて行く。
殺した者の魂を吸収する装具「ナリル・モリ」
その装具は、彼女の意に反して、やがてドラゴンボーンとは一線を画した別な存在に!

主人公のダークファンタジー色がだんだん強くなって来ましたね(≧∇≦)

うおー!なんか変身するのか!?
と思いきや、ああ、まだだった〜
もっとノルドとかドラゴンの魂吸収したらトレーズさんどうなっちゃうんだろう?ベルセルクのガッツさんみたいになるのかなぁ?
楽しみです(≧∇≦)

仮面ライダーの発想は無かった(>人<;)
オンドマンさんの言う通り、位置を間違えて召喚しちゃうと、スーパーヒーローが悪の権化に、あるいは福笑いになりかね無い!(≧∇≦)
合体ロボも実際にやると壊れかね無いらしいから、本当に難しいんでしょうね(>人<;)

極端な差別化をする反面、意外に先進的な考え方をお持ちなトレーズさんは結構魅力的に見えます(≧∇≦)
野生的なウッドエルフの中にあっても、エルフとしての高いプライドが、そうさせているのかもしれませんね。

お茶目なトレーズさんの今後が楽しみ(≧∇≦)
Nadia URL 2016/02/07(Sun)20:10 編集
無題
ダークファンタジー…なんだろうか!?主役が外道なのは確かですが(笑)

このストーリーでは因果応報とか、業を背負うといった要素はなるべく排除していく方向で進めるつもりなので、悪夢や精神を浸食していくような描写にもじつは別の意味が…という展開を想定しています
世の中には悪いことをしても報いを受けなかったり、虐げられる者の気持ちが理解できない人っていうのは確実に存在していて、そういう人間はフィクションでは大抵悪役に回って成敗されてしまうんですが、むしろそういうポジションのキャラクターを主人公に据えてもいいのかな、と思って
ドラゴンボーンはドラゴンの魂のみ吸収しますが、ナリル・モリの装具はアンデッド以外のあらゆる魂を吸収するので、強さのデタラメ加減はドラゴンボーンを上回ると思います(笑)

一生元に戻らない福笑いは笑い事じゃないですよね(笑)
悪用するとトデモナイ魔物を創造できそうな邪法ですが、蟹はともかく人間のような複雑且つ繊細な生物では合体後に生命を維持できないため悪用できない=実用的ではない、という裏設定を今考えました
合体ロボは構造の複雑さはもとより、空中で位置を合わせるのが難しいんでしょうね。たとえば戦闘機の空中給油も非常に難易度が高いらしく、安全な空域でないとまず行えないらしいですし

ヴァレンウッドでの生活は基本的に余所者扱いであまり居心地が良いものではなかったようです
トレーズがボズマーを狩猟家として尊敬はしていても、種としての友好意識がないのはそのためです
今の彼女には心から「故郷」と呼べる場所がないので、それがアイレイド復興の動機の一端なのかもしれません

根はお茶目で明るい娘なので、今後はそういう部分もアピールしていきたいです
グレアム@黒い剣士 2016/02/09(Tue)06:49 編集
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