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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2024/05/18 (Sat)22:00
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2012/11/30 (Fri)07:28
 パチ、パチンッ。
 火のはぜる音にぼんやりと耳を傾けながら、3人組の兵士…戦士ギルドの闘士たちはうろんな時間を過ごしていた。
 表情は疲れきり、鎧は傷だらけで酸化し、腰に下がっているはずの武器はない。
 戦士の1人であるオークのブラグ・グロ=バルグは、憔悴しきった表情でつぶやいた。
「まさか、こんなことになるとは…」
 その声につられて、他の2人がいっせいにため息をついた、そのとき。
 ガラガラガラガラガラ。
 洞窟の中にあって、車輪が回転するやかましい音が反響した。あまりの異音にコウモリが騒ぎ、ネズミたちが右往左往している。
 やがて音が止まると、3人組の戦士たちの目の前に、積荷を満載した荷車を引いてやって来たちびのノルドが、肩を上下させながら登場した。



「…っ、ぜぇ、はぁっ、はぁっ、はぁあーーー……」
 小柄な女性が、ゆうに3桁キロはあろうかという巨大な荷物を引いてきたというあまりに異様な光景に、3人組の戦士たちは思わず立ち上がり、呆気に取られた表情で彼女を見つめる。
「ど、どうも…シェイディンハルから来ました、アリシアです。皆さんに、その、救援物資を届けるよう任務を仰せつかりまして。けほっ、えー、その…間に合った感じですか?」
「驚いたね…」
 息を切らせながらも、必死に状況を説明するちびのノルドを見つめながら、ブラグは感嘆の声を上げた。



 ゴブリン戦争。
 シロディールのゴブリンには無数の部族が存在しており、それぞれがシャーマンのミイラ化した頭部を加工して作った儀礼杖<ゴブリン・トーテム>を崇拝している。
 ゴブリン・トーテムは権威の象徴であり、他の部族のトーテムを手に入れることは、すなわち相手のすべてを手に入れることに他ならない。多少の知性がありながらも原始的な欲求から行動するゴブリンたちは、つねに、敵対部族のトーテムを奪い取ろうと諍いを続けているのだ。
 この、トーテムの奪い合いを俗に<ゴブリン戦争>と呼ぶ。
 そしてゴブリン戦争は人間たちから非常に恐れられ、忌避されている。
 たいていの場合、ゴブリンの部族同士の縄張りは一定の距離を保ちながら存続していることが多い。
 しかし、ひとたび戦争が起きれば、部族の縄張りと縄張りを結ぶ直線上の土地はすべて灰燼に帰し、ゴブリンは目についたものすべてを破壊しながら目標まで直進していく。そして、その進行ルート上に人間の生活圏があることもまた、珍しいことではないのだ。



 哀れゴブリン戦争に巻き込まれた人間はただ破壊と殺戮の饗宴を見守るしかなく、住処を破壊され、あらゆるものを奪われ、そして殺される。
 殺されることなく逃げ出せたら僥倖だ。もっとも以後は、難民としてキャンプでの不自由な生活を強いられることになるだろうが。



「そんなわけで、ゴブリン戦争を集結させる方法は2つ。1つはトーテムを奪い去り、そもそもの争いの原因を取り除いてやること。そしてもう1つは…」
「すべてのゴブリンを根絶やしにすること。単純明快だけど、口で言うほど単純じゃないわよねぇ」
 ちびのノルドから補給品を受け取り、新品の鎧と武器を手にした戦士たちは、口々に話し合った。
 最初に口を開いたのが、ボズマー(ウッドエルフ)の剣士エリドア。そして2つ目の物騒な解決法を口にしたのが、レッドガードの弓使いリェンナ。
 巨躯を活かしたハンマー使いのブラグは、補給品の一部である肉料理を一気にたいらげると、満面の笑みを浮かべた。
「ただまあ、ウチのボスはやる気みたいだがな。なんせギルド会員を総動員でゴブリンの巣窟を一層しようってんだ、よっぽどゴブリンどもの暴走が腹に据えかねたらしいな」
 もともと、ゴブリン狩りは「戦士ギルドの稼業の一つ」と言ってしまえるくらい、活動内容としてはメジャーだ。ただし、これほどの大規模な総力戦となると、そうそうあることではない。
 現在シェイディンハル周辺では4つのゴブリン部族が抗争を繰り広げており、それに伴う人間の生活圏への被害も尋常ではない。トーテムさえ奪えば戦争は終結するが、ゴブリン関係のトラブルの解決役を請け負う戦士ギルドに、トーテムだけ持ち去るなどという賢しい真似ができるはずもない。そういうのは盗賊ギルドの仕事だが、盗賊ギルドは端からゴブリンに関わることを拒否していた。
 となれば、あとはもう、全面戦争しかない。
「さーてまあ、装備も新調した。久方ぶりの温かい食事も腹にたっぷり詰め込んだ。となりゃあ、あとは食後の運動ってのがセオリーだな?」
「ええ、そうね。いい加減に、この馬鹿騒ぎも終わらせなきゃ」
 ギルドの戦士たちが、さっきまでとは比べ物にならないほど活き活きした表情で立ち上がる。
 もとより彼らが困窮していたのは、戦闘が予想外に長引き(当初予想されていたよりも遥かに多くのゴブリンが潜伏していた)、物資が底をついたためである。酷使された武器は破損し、食料はなくなり、どうしようもなくなっていたところへちびのノルドが登場したわけだ。



「さてと、わたしも一暴れしたい気分です。行きましょうか」
 3人の兵士が完全武装できるだけの装備と大量の雑貨を運んできたちびのノルドも、どこにそんな元気が隠れていたのか、ピンピンした様子でストレッチをはじめた。
「…ところで、アンタの分の武器は?まともな鎧も装備してないみたいだけど」
「あ、わたしには必要ないんです。ご心配なく」
「そ、そう?」
 丸腰のまま戦場に向かおうとするちびのノルドにリェンナは遠慮がちに声をかけるが、当のちびのノルドはまったく意に介さない。
 まるで自殺行為としか言いようがない脆弱な装備を見て、リェンナとエリドアは互いに顔を見合わせた。
「…アイツ、大丈夫なのかねぇ?」
「僕に聞かないでくれよ」



 そこから先の展開は、まさに乱戦だった。
 ゴブリン戦争に巻き込まれ、犠牲になった作業員の遺体が放置されたまま破棄された鉱山で、剣が、鎚が、矢が、そして拳が飛び交う!





「ヤァーーーッ!!」
 叫び声とともに繰り出された拳が、ゴブリンの肉体を、骨格ごと破壊する。
 ゴブリンとて雑魚ではない。常に争いを求める彼らの獰猛さ、闘争本能は恐るべきもので、連達を剣士でさえ油断をすれば命を危険に晒すこともある。
 そういう相手の大群に身一つで立ち向かうちびのノルドの姿を見て、ギルドの戦士たちは言葉を失った。
 彼女の一撃は剣のように鋭く、戦鎚のようにすべてを叩き潰し、矢のように装甲を貫く。
 その技を繰り出す肉体はまさに全身凶器と呼ぶに相応しく、有象無象をちぎっては投げる無双ぶりは戦神タロスもかくやといった有り様である。
「クソッ、このままじゃ埒が明かんな!」
 いくら倒しても沸くように出てくるゴブリンの軍団に辟易しながら、ハンマーの一薙ぎで周囲を一掃すると、ブラグはちびのノルドに向かって叫んだ。
「ここは俺たちが喰い止める、おまえは先に進んでトーテムを奪うんだ!」
「わ、わかりました!」
 いきなり重要な仕事を任されたちびのノルドは多少狼狽しながらも、襲いかかってきたゴブリンの戦士の両腕を付け根から破壊し、鉱山の最奥へと続く道を急いだ。



『ムェーイ、グルルルルル…』
 ようやく奥地まで辿り着くかと思われた矢先、意味不明な奇声とともに、装飾が施された司祭服に身を包んだゴブリンがちびのノルドの目前に立ち塞がった。



「ご、ゴブリン・シャーマン!?」
『ウルルルゥゥゥゥァァァアアア…!』
 ドワーフ製の高級斧(いったいどこから略奪してきたのやら)を天に掲げたゴブリン・シャーマンの傍らに、首のない腐敗死体が出現する。もちろんただの死体ではない、強力な魔力によって支配された生きる屍、ゾンビだ。
 恐れも、容赦も知らぬ地獄の尖兵がちびのノルドに襲いかかる!
 見た目よりも遥かに力強く、素早く振るわれる爪はたいていのものを切り裂き、その爪によって傷をつけられた者に猛毒を感染させる。
 しかし、そのことを知っていてもなおちびのノルドは冷静さを失わず、相手の動きを見極めようとする。
 やがて大振りの一撃をすかして無防備になったゾンビの両膝を素早く踵で踏み抜き、ちびのノルドは相手の脚を破壊する!
 身体を支えられなくなり、膝をついたゾンビの背後に素早く回ると、ちびのノルドは続けざまに強烈な肘を叩き込んだ!あえなくゾンビの背骨は砕かれ、腐った内臓が肋骨とともに胸の、腹の皮膚をつきやぶって飛び出し、地面に撒き散らかされる!
 いかにゾンビといえど、ここまで酷く損壊してはもう戦うことはできない。



『グググ……ッ!』
 悔しさと怒りで斧を握る手に白い筋を浮き立たせながら、ゴブリン・シャーマンは間髪いれずにちびのノルドに襲いかかる。
 ゾンビを倒した直後、寸分の猶予も許さぬまさに直後ならば、斧の一撃で首を叩き切ることもできるはず。息を整える暇も、ターゲットを切り替える余裕も与えずに殺せる、そのゴブリン・シャーマンの思惑は、残念ながら外れた。
 ビシュンッ!
 弾丸が空気を切り裂いたような擦過音とともに強烈なハイキックが繰り出され、ゴブリン・シャーマンの握っていた斧がはじき飛ばされる!
『ビエッ!?』
 予想外の一撃に狼狽するゴブリン・シャーマンの心臓目がけて、ちびのノルドはすかさず拳を突き出した!



 フィニッシュ・ヒム!
 心臓を完全破壊し、ゴブリン・シャーマンの息の根を完全に止めるちびのノルド。
 しばらく痙攣したのちにゆっくりと倒れたゴブリン・シャーマンを一瞥し、ちびのノルドはふたたび先を急ぐことにした。



 祭壇へと辿り着いたちびのノルドは、地面に突き立てられた趣味の悪い杖を手に取る。過去に命を落としたシャーマンの頭部を加工して造られた、多大な魔力を秘めた杖<ゴブリン・トーテム>。
「こんなものがあるから、争いがなくならないんだ…!」
 ちびのノルドは嫌悪の感情を隠そうともせずにつぶやくと、杖の両端を握り、力を込めた。
 バラバラに砕けるゴブリン・トーテムを見つめながら、ちびのノルドは「これでいいんだ」と思い……



「なにぃ、ぶっ壊しただと!?このバカッタレが!」
 ズゴンッ!!



「~~~っぁ~~~~~…!」
 すべてが終わり、シェイディンハルの戦士ギルドへと引き返したちびのノルドを待っていたのは、シェイディンハル支部長バーズ・グロ=カシュの罵声と、容赦のない拳骨だった。
「あれは魔術師ギルドが、喉から手が出るほど欲しがる貴重なマジック・アイテムなんだぞ、この馬鹿が!そもそも『奪うだけでいい』とブリーフィングで言った意味を少しでも考えなかったのか、テメェはよ!?」
「…ぅ、ぁう…ごめんなさぃ……」
 どうやら、良かれと思ってやったことが裏目に出たようで、叱責を受けるちびのノルドは泣きながら謝るばかりである。
 しかしバーズ・グロ=カシュの怒りは収まらないようで、なおも罵声を上げ続ける。
「まったく、元傭兵だからっつって雇ってみれば、とんだ役立たずだ!ノルドってのはみんな、お前みたいな筋肉だけが取り得の脳足りんなのか?それとも身体の小さいお前だけが特別に脳の容量が少ないのか?今回だけは特別に許してやるが、次に同じような間違いを仕出かしやがったら、木人に縛りつけて剣術の稽古台にしてやるからな、この短小め!」
 そこまで一気にまくし立てると、バーズはぷいと背を向けてしまった。
 しかしちびのノルドはどうしていいかわからず、しばらく床にぺたんと座ったままおろおろしていると、すぐに振り返ったバーズがちびのノルドを蹴り飛ばして事務所から叩き出してしまった。
「まだいたのか、このゴキブリ野郎!さっさと出て行け!」
 廊下に突っ伏すちびのノルドを見下ろしながら、近くにいた戦士ギルドの兵士は「やれやれ」と肩をすくめた。
「アレも、けっこう気難しい性格だからなあ。ま、ご愁傷様」
 誰も手を貸してくれないので、仕方なく自力で立ち上がったちびのノルドは、故郷スカイリムでの傭兵生活を思い出していた。そこでもちびのノルドは厄介者扱いされ、どれだけ戦果を上げても褒められず、些細なミス一つで激しく罵声を浴びせられたものだ。
 元傭兵なら戦士ギルドが適職だ、というアドバイスを受け、はるばるシェイディンハル支部まで足を運んだちびのノルドだったが、いまではそのことを後悔しはじめていた。



[ to be continued... ]



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2012/11/27 (Tue)06:08
「魔術師ギルドでトラブルがあったそうだな」
「え?え、あぁ…いや~さすが、耳がお早い」
「耳が痛い、の間違いじゃないのか?それに、部下の管理は上に立つ者の務めだからな」
 帝都港湾地区。
 貧民街のとある一軒家にミレニアは来ていた。



 アルマンド・クリストフは、表向きは善良な市民だ。しかし裏では盗賊ギルドの幹部として暗躍している。そしてミレニアが会いに来たのは善良な市民のほうではなく、盗賊ギルドの幹部としてのアルマンドだった。
「死霊術師が徒党を組んで魔術師を襲撃、か。気になる話だが、それは俺たちの領分じゃないな」
「ええ、まあ」
「それよりも、ギルドのために一つ、仕事をしてみる気はないか?グレイ・フォックスの勅命だ」
 グレイ・フォックスの勅命。
 アルマンドの口から飛び出したその言葉に、ミレニアは無意識に息を呑んだ。
 グレイ・フォックス。盗賊ギルドの創始者にして、謎多き人物。性別不詳、出身地不詳、年齢不詳。顔は常にマスクで覆われており、決して人前に姿を見せることはない。
 御伽噺の登場人物か、もとより実在しないのではないか…盗賊ギルドのメンバーですら、そのように語る人物である。一説によると、300年前からまったく姿形を変えずに存在を続けているとか。
 かくいうミレニアも、グレイ・フォックスの実在性については懐疑的だった。尾鰭のついた噂話ばかりが広まっているせいもあるが、それでも盗賊ギルドがシンボル的に存在をでっち上げているだけなのでは、と考えていたのだ。
 しかしグレイ・フォックスの名を出したアルマンドの表情は真面目そのものだった。
「最近、この貧民街で納税が義務付けられたのは知っているか?」
「え、いえ。っていうか、それって…」
「そう。いままで、帝国は貧民街からは税を徴収してこなかった。こう貧乏人ばかりでは、取立てにかかる費用のほうが高くつくからな。しかし、赤字になってでも貧乏人から税金を巻き上げようとする者が現れた」
 そこまで言って、アルマンドはため息混じりに一つの名前を出した。
「ヒエロニムス・レックス」
 帝国騎士にして、すべての衛兵を束ねる衛兵隊長。誰もがグレイ・フォックスの実在性に懐疑的なここ帝都において唯一その存在を信じ、グレイ・フォックスの捕縛に人生を捧げる正義漢である。
「富める者から奪い、貧しい者に与える…そんなグレイ・フォックスの信条が、ヤツには許せんらしい。偽善だ、とな。ま、義賊ってのは民衆受けはいいが、衛兵どもの給料になる税金を払ってるのは、被害者の富豪どもだからな」
 そう言って、アルマンドは笑い声を上げた。
「そんなわけだから、衛兵どもが俺たち盗賊ギルドを目の敵にするのは、わからんじゃない。しかしレックスが厄介なのは、そう…あいつは、純粋に正義漢からグレイ・フォックスを捕まえようとしていることだ。バカなやつだよ…賄賂は絶対に受け取らないし、目的のためなら手段を選ばない」
「それで、貧民街の住民から税の取り立てなんて、無茶な真似を?」
「そういうことだ。今回おまえに頼みたいのは、貧民街から取り立てられた税金と、納税記録の奪取だ。それらはレックスの執務室にあるだろう」
 レックス…帝都衛兵隊長の執務室といえば、警備塔の上階にある。警備塔は衛兵の詰め所にもなっており、まさに衛兵の巣窟。
「かなり難しい任務になるだろう。もし無理だと思うなら、やめても…」
「大丈夫です、全部このミレニアちゃんに任せてくださいッスよ!」
 語尾を濁すアルマンドに、ミレニアは一点の曇りもない表情で言った。
「このわたしの手にかかれば、衛兵隊長の執務室だろうが、王様の寝室だろうが、ちょちょいのちょいで侵入してやりますよ!」
「(…本当にこいつで大丈夫かなあ……)」
 能天気に答えるミレニアを見つめ、アルマンドは一抹の不安を覚えつつ、任務に送り出すのだった。





「とはいえ、やっぱり目の前まで来ると、緊張するなあ」
 安請け負いをしたものの、警備塔は誰でもやすやすと侵入できる場所ではない。
 すでに夜は更け、この時間に外を出歩く者といえば衛兵か、戸締りの無用心な家の戸を探して回る泥棒くらいのものである。
「で、わたしは泥棒なわけで。しっかし、特例の仕事も久々なのだわさ」
 通常、盗賊ギルドのメンバーは「命令によって特定のものを盗む」というようなことはしない。
 各々が金持ちの家に入り、決して見つかったり、人を傷つけたりすることなく金目のものを持ち帰り、それをギルド専属の故売屋が買い取る、というのが普遍的な活動内容である。もちろん盗品であるうえ、利益の一部が上納金として差し引かれることもあり、かなりのマージンを取られることになるのだが。
 それでも普通の故売屋は盗品を扱いたがらないし、単独で盗品の販売ルートの開拓など画策しようものなら、それこそ盗賊ギルドと敵対する破目になる。
「貧しい者から盗むなかれ、仲間から盗むなかれ、何者も殺めることなかれ。ま、盗賊家業ってのは制約が多くて大変なのだわ」
 ミレニアは頭の中で盗賊ギルドの掟に関する説明を反芻しながら、人目につかない岩陰を見つけると、そこにいつも背負っているバックパックを下ろした。



「やっぱり、特別な仕事のときは、コレじゃないとダメだよねー」
 そう言って、ミレニアは漆黒の盗賊衣装を取り出しはじめる。
 特別な仕事とは…優秀なギルド会員のみに与えられる任務のことであり、それはギルドの幹部を通して与えられる、グレイ・フォックスからの密命である。
「稀代の大泥棒、天下の義賊から与えられた特別任務。こりゃあ、ハリキらないワケにはいかんでしょ」
 着替えを済ませたミレニアは、バックパックを目立たないように隠匿し、すっくと立ち上がった。



「ジャーン!大盗賊ミレニアちゃんの完成なのだー!」
 普段の冒険者姿とはまったく違う衣装に着替え、ミレニアは不適に微笑んだ。
 じつはこの衣装、盗賊ギルドから与えられたものでもなんでもなく、また特別任務のときに衣装を着替えなければならないという決まりもない。この衣装はミレニアが自前で用意したものであり、わざわざ着替えたのは、たんに「気分の問題」でしかなかった。
 だからといって、この衣装が機能的であり、隠密任務に適していることを疑う余地はない。
「さーて問題は、この警備塔には入り口から堂々と入るしかないって点なわけですが」
 ミレニアは頭を捻った。
 通常の建物であれば上階の窓から侵入するなり、天井から侵入するなり、とにかく正面入り口から入るなどという手は使わない。がしかし、この警備塔はそういった「第二の侵入口」と成り得る箇所がまったく見当たらないのである。
「あんまり気が進まないけど、まあ、仕方ないか」
 ミレニアは警備塔の入り口近くの茂みに隠れると、大きく息を吸い、悲鳴を上げた。
「きゃあーひとさらいー!だれかたすけてー、あーれー!(←棒読み)」
 最初のほうは大きな声で、そしてだんだん遠ざかっていくように聞こえるよう、序々に声のボリュームを落としながら、ミレニアはまるで大根役者丸出しな演技で声を張り上げる。
 ややもせず入り口が開き、数人の衛兵が飛び出してきた。
「いったいなにごとだ!?」
 飛び出してきた衛兵に紛れるように、ミレニアは見つからないよう姿勢を低くしたまま入れ違いに警備塔へと侵入する。
 帝都衛兵の被る鉄製ヘルメットは、視界を大きく狭める。そのことを知っていれば、たとえ魔法など使わなくとも、透明人間であるかのように振舞うことは可能だ。
 警備塔の1階にはまだ衛兵が残っていたが、ミレニアは手近にあった小物を投げて注意を逸らし、衛兵が余所見をしている隙に上階へと続く階段を上がっていった。



「2階は寝室になっているのかぁ。しっかし、みなさん、お疲れのようで」
 チ、ン…ゴーグルの暗視機能をオンにし、周囲をざっと見回してから、ミレニアが小さな声でつぶやいた。
 重苦しい全鉄製の鎧から開放され、リラックスしきった様子で睡眠を取る衛兵たちは油断のかたまりだった。おまけに鼾や歯軋りがひどく、これなら多少の物音を立てても階下の衛兵たちには気づかれないだろう。
 ベッドの手前には個人用のチェストが置いてあり、その中身が気になったりもしたが…
「フツーの盗みなら、いつでもできるしね。いまは任務に集中、集中っと」
 わずかに沸き起こった欲求を振り払うと、ミレニアはさらに上の階へと進んでいった。



 やがて、目標であるレックスの執務室へと到着する。
「それにしても、よく寝とるなー。こんなんなら暗殺も簡単にできるんじゃなかろうか」
 でも、殺気を向けたらさすがに起きるかな?などと考えながら、ミレニアはレックスの寝顔を一瞥する。
「なんか絵描き道具とか置いてあるし。ツラに似合わないなー。キモイなー」
 そういえば、最近もなんか絵画絡みの事件に遭遇したような?
 たぶんこの趣味は公のものではないだろうから、この部屋にある絵を何枚か失敬して帝都中にばら撒けば、それはそれで楽しいことになりそうだが…
「ま、余計なオプションを考えてミスしたら、それこそ目も当てられないし。ここは任務に集中、っと」
 カタブツの衛兵隊長だというから、たぶん、納税記録を凝った場所に隠したりなんかはしていないだろう。身内を疑うのでなければ、執務室に盗みが入るなどとは思わないはずだ。



「あった。これだ」
 机の中をさっと調べ、ミレニアは目的のものを発見する。
「えー、なになに…アダンレルから金貨3枚、アムゼイから金貨1枚、カルウェンから金貨2枚、エトセトラ、エトセトラ…うわー、ホンットーにせこい数字だわこれ」
 おそらくは義に固いグレイ・フォックスを誘い出すための挑発なのだろうが、それにしたって、もうちょっとやりようはあるんじゃないかと思う。
「貧民街の住民から取り上げた税金の入った袋も、あんまし重みがないしなー」
 そう言いながら、ミレニアは金貨の入った麻袋全体に紐を巻いてガチガチに縛り上げる。
 金貨の入った袋をそのままの状態で持ち歩くと、金属同士が擦れ合う「ジャラジャラ」という音がかなりやかましくなる。紐を巻いて音を立てないようにするのは、ミレニア流の対処法だった。
「さーて、用は済んだことだし、さっさと帰るとしますかな」
 そう言って、階段を下りようとしたとき。
 スルッ。
「…う、えっ?」
 目的を達成した、という安堵からの油断か。



 ドシーーーン!
 階段から足を踏み外したミレニアは、眠っている衛兵の上に落っこちてしまった。
「(…や、ややややややヤバイっ!?)」
 体重が軽いとはいえ、さすがに人が倒れこんできたら、目を醒ますに違いない。
 滝のような汗を流すミレニア。一方、ミレニアの下敷きになった衛兵は一つ寝返りをうつと、妙にはっきりした声で言った。
「…よせよ、こんなところで。みんなが見てるだろ」
 どうやら、寝言のようだった。
「よかった…」
 気を取り直し、ミレニアはそっと衛兵から離れてベッドから降りると、誰にも見つかることなく警備塔から脱出した。



 後日。
「なるほど、たしかにコイツで間違いない。よくやってくれた」



 ミレニアから納税記録を受け取ったアルマンドは、満足した様子で頷いた。
「あとで、グレイ・フォックスが貧民街の皆に然るべき額を返納することになるだろう。ちなみにそれらはグレイ・フォックスからのポケット・マネーから支払われるので、おまえが盗んできた金は、そのままおまえが報酬代わりに受け取っていいそうだ」
「え、えぇっ?」
「仕事内容に見合った額じゃないかもしれんが、金額以上に貧民街の皆のハートが詰まってる。大事に使うんだぞ」
 冗談ともつかない笑みを浮かべ、アルマンドは言った。
 ミレニアは乞食や泥棒の、あまり衛生的でないポケットに入っていたであろう金貨をつまみ、微妙な表情で見つめる。あんまり嬉しくない、とは、言えなかった。



[ to be continued... ]



2012/11/15 (Thu)06:59
「そろそろ、この街から離れる頃合かもなぁ…」
 そんなことをつぶやきながら、ドレイクはいまやすっかり馴染みとなったノーザングッズ商店へと足を運んだ。日用品を買い足すついでに、酒場で出会った女店主の娘ダー=マをからかうのが日課のようになって久しい。
 もともと、この街へはオブリビオン関連の書籍を集めるために来たのである。シロディールでも有数の書店と言われるレノワー書店へ足を運ぶのが目的だったのだが、実際はいささかアテが外れたと言わざるを得ない。
「オブリビオンの歴史や性質、その上澄みの資料なんぞはどうでもいい。もっと具体的な資料はないのか?…やはり魔術師ギルドや、帝国の秘匿文書庫あたりを探すしかないのか」
 そんなことを言いつつ、ノーザングッズ商店の戸を開けたドレイクを出迎えたのは、いつになく落ち着かない様子の女店主シード=ニーウスだった。



「どうかなさったんですか?そういえば、娘さんの姿が見えませんが」
「そう、そのことについて、じつは貴方にお願いしたいことがあるのですが…」
 普段はおっとりした気立ての良い女店主のただならぬ様子に、ドレイクは面喰らいながらも表情を引き締める。
「実は私、ハックダート…コロールの南に位置する、小さな村です…そこに定期的に商品を卸しに行っているのですが、今月に入ってから少しばかり体調を崩してしまい、今回だけ娘のダー=マに商品の配送をお願いしたのです」
「それで?」
「ところが、もうとっくに帰ってきていいはずなのに、音沙汰がないのです。私が心配性なだけかもしれませんが…もしかしたらトラブルでも起こしたんじゃないか、道中で何者かに襲われたんじゃないか、そう思うといてもたってもいられなくなって」
「娘さんは一人でハックダートに?」
「ええ。愛馬のブラッサムに乗って…まだら模様の馬です。あまり外見的な特徴はありませんが、鞍に名前が彫ってあるので、それを見たら判別がつくかと。その…書体が特徴的なので」
 体調を崩しているからか、精神的に不安定だからなのか、あるいはこの喋り方が素なのか、シード=ニーウスはところどころ独特な間をあけて話を続ける。
 それと、「書体が特徴的」という部分でちょっとだけ言葉に詰まったのはなぜだろう?
「なにぶんお転婆な娘なので、心配は無用ではないか、とも思うのですが。本来なら、彼女のお友達にまず知らせようかとも思ったのですが。すでにこの街を発っているようで…エルフの女の子です」
「エルフ?ああ…」
 錬金術師シンデリオンの弟子とかいう、あのそそっかしい娘か…と、ドレイクはひとりごちる。
 なぜかグレイ・メア亭で偶然居合わせたが、あのときはロクな目に遭わなかった。換金目的でアイレイドの遺跡から拝借したウェルキンド石を、ゴスロリ服の少女に相場の半額で売る破目になったのだ。
 まあ、その後ダー=マと親密になれたので(もちろん、節度ある範囲で)、あまり気にはしていないが。
「いいでしょう、娘さんのことはわたしも気がかりです。ちょっとばかりハックダートまで行って、様子を見て来ますよ」
「本当ですか?ありがとうございます!…なんとお礼を言っていいやら……」
「まあまあ。ここは同郷の士、ということで」
 そのドレイクの言葉に、シード=ニーウスは微妙な表情を浮かべた。
 ああ、選択肢を間違えたっぽいな…ドレイクは内心で舌打ちをする。おそらく、シロディールの文化的な生活に慣れたアルゴニアンにしてみれば、ブラックマーシュのことなど思い出したくもないのだろう。





「ここがハックダートか…」
 小さな村とは聞いていたがな、とドレイクは漏らす。予想以上に孤立した、というか、寂れた村だ。
 ノースカントリー厩舎でまだら馬を借り、山道を越えた先にあったのは、半ばほど廃墟と化した寒村だった。
 道中で一度だけ魔物に襲われたものの、それ以外のトラブルは一切なし。ダー=マがトラブルに見舞われた形跡も発見できなかった。とはいえ道中で山賊に襲われ、どこぞのアジトにでも連れ去られていたら、その時点でお手上げなのだが…
「まあ、どうせ村人の歓待でも受けて長居しているだけなんだろうさ」
 そんなことを言いながら、ドレイクは馬を停めることができる場所を探しはじめた。
 それに、なんだかんだ言って年頃の娘だ。もし村に若くて良い男でもいれば、間違いが起きることだってあるだろう。もっとも、そんな理由で村に居着くようになっていたら、シード=ニーウスにどう説明したものやら検討もつかないが。
 あれこれ考えつつ、ドレイクは焼け落ちたまま放置されて久しい邸宅跡に馬を停める。
 ふと脇に目をやると、そこには自分が乗ってきたのと似たようなまだら馬が暇そうに蹄を鳴らしていた。



 『フ”ζ:」⧺ム』…鞍には、そう書かれているように見えた。
「ナニコレ」
 思わずドレイクは眉間に皺を寄せ、まじまじと鞍に刻まれた謎の記号の集合体を見つめる。
「ブラッサム…と読めなくもない…のか?」
 まるで宇宙人かなにかが書いたような文字をどうにか判読し、ドレイクは微妙な唸り声を上げた。
 あまりにも下手糞な字だが…どちらかというと、わざと限界まで字体を崩して書いてあるようにも見える。いわゆるギャル文字というやつか?お転婆だとは聞いていたが、なるほど、母親が言葉を詰まらせるのもわからないではない。
「特徴的な書体、か」
「おい貴様、こんなところで何をしている」
 ドレイクの背後に、何者かが立ち尽くす。腰にメイスをぶら下げているが、こういう孤立した環境にあって自衛や狩りのために武器を携帯するのは別段珍しいことではない。
 一つ咳払いをし、ドレイクは努めて平静を装って言った。
「スマン、厩舎が見当たらなかったのでな。勝手に馬を停めさせてもらった…最近このあたりに、アルゴニアンの娘が来なかったか?この村の雑貨店に、商品を卸しに来たはずだが」
「知らんね」
 村人はそっけない態度で答える。
「それより、この村では余所者は歓迎されない。特に用がないなら、とっとと出て行くんだな」
「そうするさ」
 ドレイクはそう言って、威嚇するようにわざとアカヴィリ刀の鞘をカチリと鳴らすと、ダー=マが商品を卸す先であるというモスリン衣料雑貨店へと向かった。





「そんな娘のことなんかぁ、あたしゃ知らないよォ!」
 店主のエティーラ・モスリンは、開口一番、そう言い放った。
「むしろこっちが居場所を知りたいくらいだよォ!この村の住民たちはぁ、月に一度届く品物を頼りにぃ生活してるんだからさぁ!品物が届かないとぉ、困るんだよォ!」
「…そのわりに、品揃えはやけに充実してるじゃないか」
 女店主の妙な口調には触れずに、ドレイクは冷静にぐるりと店内を見回し、指摘する。
「まるで今月分はもう届いてるみたいな分量だな?」
「こんな小さな村じゃさぁ、いつ今回みたいなトラブルがあるかわからないからさぁ!いざってときのために在庫を多目に取ってあるのさぁ!余計なことばっかり考えるんじゃないよさぁ!」
「…タグの日付が先日付けなんだが?」
「そいつは去年届いた品物なんだよさぁ!」
「今年付けだが」
「相手が書き間違えたんだよさぁ!」
「…そうかい」
 これ以上突っ込んでもマトモな反応が得られそうにないと判断し、ドレイクは質問を中断する。
 どうやらダー=マは、この村に到着する前にトラブルに巻き込まれたわけでも、この村を発ったあとに消息を絶ったわけでもないらしい、ということだけはわかった。
 どう考えても、この村でなんらかの事件に巻き込まれた可能性が高い。
「しかし、文明的な土地柄だったら、もっとましな誤魔化し方を考えそうなもんだがね…」
「余所者が余計な詮索ばっかりするんじゃないよさぁ!冷やかしなら出て行きなよさぁ!」
 女店主モスリンの罵声を背に浴びながら、ドレイクは店を後にした。





「しかしまあ、どいつもこいつも、似たような反応しか返しやがらんな」
 午後一杯を聞き込み調査に費やしたドレイクは、井戸がある村中央の広場で腕を組み、嘆息した。
 農婦、神父、宿屋の主人など、この村の住民ほぼすべてに話しかけてみたものの、成果はなし。誰も彼もが「そんな娘は知らん、余所者は出て行け」の一点張りである。
「村での統率は取れているみたいだが、如何せん、やり方がなってないな」
 孤立した村でずっと暮らしていれば、世間と感覚がズレるのも無理はないが、とドレイクはつぶやく。
 たとえばこれがもっと文化的な土地柄であったなら、もしダー=マの消息について知られたくないことがあったとしても、もっと警戒されずに済む、上手い誤魔化し方をするだろう。
 然るにダー=マの愛馬が放置され、ダー=マが運んできたであろう品物を店頭に並べたまま、「知らぬ、存ぜぬ」を押し通すというのは、やり方が稚拙というほかない。
「田舎者の大根役者め」
 ドレイクは、この村に着いたときからずっと後を尾けてきている村人…ナッチ・ピンダーといったか…に聞こえるよう、わざと声を高くして言った。



 その日の夜、村に唯一存在する民宿<モスリン亭>の客室で睡眠を取っていたドレイクは、何者かが階段を上がってくる「ギシ、ギシ」という音で目を醒ました。
「…古い建物ってのは、ホントに、泥棒泣かせだよなァ?」
 手元に置いてあったアカヴィリ刀に手を伸ばし、ドレイクは寝たフリをしつつ周囲を警戒する。
 やがて足音の間隔が短くなってくると、不意に何者かがドレイクに襲いかかってきた!



「随分ストレートな出迎えだな、えぇ!?」
 トゲつき棍棒の一撃を回避し、ドレイクは襲撃者の姿をまじまじと見つめる。
 腰を麻紐で縛ったぼろぼろのズボン一枚という、異様な出で立ちはまるで蛮族のようだ。角ばった顔面に飛び出し気味の眼球はヒキガエルか、魚介類のそれを思わせる。
「…なんだ、コイツは!?」
 てっきり村人の誰かが襲ってきたものとばかり思っていたドレイクは、相手の容姿に驚きを隠せない。
 醜くはあるが、奇形とか人間離れとかいうほどの醜悪さではない。が、その絶妙なバランスが余計に心理的不安を掻き立てた。
『いあ!いあ!くとぅるふ・ふたぐん!』
 謎の叫び声を上げながら襲いかかってくる蛮族の棍棒の一撃を、ドレイクはアカヴィリ刀の柄で受け止める。が、しかし。
「くおっ!?くっ、な、なんて馬鹿力なんだ、こいつ…っ!?」
『ああああああぁぁぁぁぁぁぁああっっっ!!!』
 ぎりぎりぎり、貧相な見た目からは想像もつかない怪力に押され、ドレイクは動揺する。
「クッ、この野郎…ッ!!」
 だが、力に力で対抗するほどドレイクは単細胞ではない。



 相手の馬鹿力を利用し、ドレイクは柔術の要領で蛮族を投げ飛ばした。
 つづけざまに蛮族の首筋を刀で突き刺し、絶命させる。刃先を抜いた瞬間に返り血を浴びないよう、ドレイクは角度に気をつけながらゆっくりと刀身を引き抜く。
「フーッ、…いったい、なんだってんだ、こいつは」
 あまり清潔とはいえないベッドのシーツで血を拭い、刀身を鞘に収めながら、ドレイクはつぶやいた。
「いままでは、品物をタダでぶん獲るために村人がグルでやらかしてたもんだと思ってたが…どうも違うな、そっちは主眼じゃない。村の風習か…カルトの臭いがするな」
 首筋から鮮血をしたたらせている蛮族の死体を見つめながら、ドレイクは状況を分析する。
「いずれにせよ、もう一眠り…てな気分じゃなくなったことは確かだ。夜のうちに、もう一度探りを入れておくとするかな」
 そう言って、ドレイクは死体を残したまま部屋を後にした。



「おーい親父、いないのか?」
 下階に下りたドレイクは、誰もいない受付に向かって声をかけた。
「参ったな、ルームサービスでも頼もうかと思ってたんだが。あと、部屋の清掃も」
 一晩経ったらとっとと出て行け、と喚き散らした店主の顔を思い出し、ドレイクは苦笑する。
 ふと視線を落としたドレイクは、薄い埃が積もった床に、やけに脂っぽい足跡が二階の客間まで続いているのを発見した。あの蛮族のものだろう。
「…どのみち、掃除は必要かもな」
 足跡を逆に辿ると、どうやら蛮族は外から来たのではなく、最初からこの建物に潜んでいたらしいということが窺える。
 やがて地下室への入り口を発見し、ドレイクは何とはなしにつぶやいた。
「横溝正史か、これ」
 とすると、さっきのは忌み子かなにかか。
 そんなことを考えながら梯子を下りていくと、目の前に広がっていたのは地下室などではなく、天然の洞窟郡だった。
「驚いたね、どうも」
 感嘆の声を漏らし、ドレイクは周囲を見渡す。
 やがて、鉄格子の向こうに捕らえられたアルゴニアンの少女の姿を発見し、ドレイクは急いで駆けつける。
「おい、大丈夫か!?」
「あ、あなたは…!」
 にわか造りの独房に捕らえられていたのは、見間違うはずもない、シード=ニーウスの愛娘ダー=マだった。
「どうやら無事のようだな。またキミの可愛いダミ声が聞けて嬉しいよ」
「助けに来てくれたの!?」
「麗しき、心配性の母上に感謝するんだな。とはいえ、まさかこんな事態になってるとは思いもよらなかったが。これはいったい、どういうわけだ?」
「わたしにもよくわからないわ。ただ、この村の人々は異教の神を崇拝していて、その神様の助けを借りるために、わたしを生贄に捧げるって言ってた」
「トンデモねーな。まあいい、いま鍵を開けて…」
 ドレイクがそう言いかけたところで、ダー=マの視線に気がつく。



「う、う、後ろ!」
 ドレイクの背後には、いまにも棍棒を振りかぶらんとしている蛮族の姿が見えた。
『イシャアアアァァァァァァアアッッッ!!』
 蛮族が奇声を上げながら、頭をかち割らんと棍棒を振り下ろす瞬間、ドレイクの手が素早く動いた!
 バシ、バシィッ!
 振り返ることすらせず、ドレイクは鞘で蛮族のみぞおち、次いで首筋を殴打する!
 ぐるり、眼球が裏側を剥き、だらしなく口泡を飛ばしながら吹っ飛ぶ蛮族を尻目に、ドレイクは呼吸一つ乱すことなく、言った。
「醒走奇梓薙陀一刀流鞘術…二首背打」
「し、死んだの…?」
「殺してはいない。本来この技は倒れた相手の心臓を突き刺すのとワンセットなんだが、まぁ女の子の前で無益な殺生もいかんだろうと思ってな」
 そう言いながらドレイクは刀を抜き、鉄格子にかけられた錠前にピタリと刀身をあてた。その姿は、ビリヤードのキューの構えにも似ている。深呼吸。
「コォ…鉄閃!」
 ガキャン!
 金属音とともに錠前が落とされ、鉄格子が耳障りなきしみ音を立てながら開く。
 油断なく周囲に視線を配りながら、ダー=マはドレイクに警告した。
「気をつけて。この洞窟にはまだ、さっきみたいなやつが何人もいるわ」
「オーケイ。帰るまでが遠足なら、それまで大人しく良い子にしていようじゃないか」



 地下洞窟を脱出し、外に出た頃にはすでに夜が明けようとしていた。
「わたし、馬を取ってくるわ!」
 そう言って、ダー=マが焼け落ちた邸宅跡まで駆け出す。
 フウ、一安心のため息をつきながら、ドレイクはなにやら教会が騒がしいことに気がついた。
 戸が開いたままの教会に近づき、そっと顔を近づける。



「これでようやく、我が村にも繁栄を取り戻すことが…」
「かつて村を焼き払った帝国に復讐を…」
「それよりも、<彼の者>の飢えを満たすために血を流す生贄の確保が最優先では…」
 口々にそんなことを漏らす村人の会話を聞いて、ドレイクは薄気味の悪さをおぼえる。
 やがて村人たちは、いっせいに怪しげな呪文を唱えはじめた。
「…もう関わらないほうがいいな」
 そう言って、ドレイクはそっと教会の戸を閉じた。





「本当にありがとう。なんとお礼を言って良いやら」
「じゃあ感謝の気持ちはカラダで示してもらおうかな」
「見損ないました。じろじろ見ないでください不快です死にます」
「冗談だよ…」
 馬を駆り、2人は晴れてハックダートの脱出に成功したのだった。
「それにしてもあの村、なんだったのかしら」
「あまり深く考えないほうがいいぞ。あと、あんたの母親には金輪際あの村に近寄らないよう警告しておいたほうがいいな」
「そうね…」
 そんな会話を交わしながら、ゆっくりと馬を歩かせていたところへ。
「おい、生贄が逃げるぞーッ!!??」
 教会から出てきた村人たちが2人を発見し、武器を手に追ってきた!
「おおう、こいつはヤバイな。山道を全力で逃げるしかないが、お嬢ちゃん、馬の扱いは?」
「任せて、わたし乗馬は得意なの。それにブラッサムなら、どんな悪路でも走破してみせるわ!」
「そいつは頼もしい、お転婆娘の鏡だな!よぉし、行くぞッ!!」
 かくして、鬼のような形相で追いかけてくるハックダートの村人と、逃げる2人の壮絶なチェイス・レースがはじまったのであった……



[ to be continued... ]



2012/11/12 (Mon)16:58
 TES4SS(というか現在のグレさんのTESプレイ環境下)において、使用しているMODのリストを作りました。

http://reverend.sessya.net/tes4_modlist.html

 現在私が書いているSS記事は有志が製作されたMODなくしては作れなかったものなので、せめて使用しているMODに関する最低限の情報を掲載することは義務というか、けじめかなあと。むしろもっと早くやるべきだったんですが…
 ちなみに製作者名に関しては、MODを入れたのがかなり前ということもあってDL先がわからなくなってたり(あるいは無くなっていたり)、DLしたファイルにReadMeが添付されていなかったり、ReadMeに製作者名が記載されていなかったりと、判別しない例が多々あったからです。
 もちろんわかっている範囲内で記載することもできるのですが、私は博愛的共産主義者なので、不公平があってはならない…ということで、今回は記載しない方針で統一しました。
 バージョン情報に関しても、ほぼ同様の理由で記載していません。

 MOD名の下、()内の説明文は便宜的につけたものなので統一性がありませんがご了承ください。
 それと、MODリストは第三者にMODの内容を紹介するために作ったものではありませんので、MODそのものに関する質問や、DL先に関する問い合わせには答えることができません。名前をググるなどして自分で調べてください。

 もし記載情報に不備等がありましたら、コメント頂けるとありがたいです。



2012/11/06 (Tue)13:47
 星空の下で、いつもと変わらぬ夜闇と静寂があたりを包む。
 松明を片手に定時パトロールをこなす王宮騎士は、休憩室に置いてある読みかけの本のことを考えながら、あくびを噛み殺した。
「はやく交代の時間にならないかなぁ…」
 並の衛兵との格の違いを体言する白銀の鎧に身を包み、卓越した剣と弓の業を持ち併せながらも、やはり人の子である。
 皇帝陛下が暗殺されたとはいえ、早々に日常に変化が訪れるわけでもない。
 すわマッポーめいた波乱の時代の幕開けか、などと煽られたところで、王宮騎士という要職にあってさえ「いままで通りに仕事をしていれば、いままで通りの給料が貰えて、いままで通りの生活ができる」のである。
 当然、危機感など生まれるはずもなく…



 任務のことなど上の空だった王宮騎士は、目の前に現れた漆黒の影に、すぐに気づくことはできなかった。
「ドーモ。ナイトスレイヤーです」
「え?あ、あぁ、どうも…」
 声をかけられてようやく相手の存在に気がつき、あまつさえ丁寧な口調で(いささか奇妙な訛りがあるようだが)挨拶されたことに対し、王宮騎士はまったく警戒することなく言葉を返す。
「こんな夜中に外を出歩いては危険だ。早く家に帰…」
 そこまで言いかけて、王宮騎士はようやく、相手の風貌の異様さに気がついた。
 王宮騎士の装備とはおよそ対を成す、漆黒の全身鎧。素顔をすっぽりと覆い隠すメンポ。
「…そういえばお前、さっき何と名乗った?ナイトスレイヤー(騎士を殺す者)だと?」
 なにかの悪い冗談か、コスプレかなにかか?
 そう思いながらも、武器の柄に手をかけた王宮騎士の目の前で、相手のメンポが不気味な光を放った。赤黒い炎がゆらめき、メンポに機械的な書体で「騎士」「殺」の文字が浮かび上がる。



 禍々しいフォルムの長剣を抜き放った正体不明の存在…<ナイトスレイヤー>は、先程までのフレンドリーな態度を一変させ、重く低く、そして邪悪極まりない口調でつぶやいた。
「騎士、殺すべし」
「ア、アイエエエエエエ!?」
 ナイトスレイヤーの非情な一撃を受けた王宮騎士の悲鳴が、帝都にこだまする。



「…いい身体つきをしているな」
「ひ、ひぇっ!?」
「勘違いするな、筋肉を褒めたのだ。脂肪のことではない」



 咄嗟に豊満なバストとヒップを手で覆い隠したちびのノルドに、老獪な騎士の奥ゆかしいツッコミが入った。
 最初にナイトスレイヤーの犠牲者が出てから一週間の時が経った明くる日、帝都刑務所地区に建つ帝国軍騎士長のオフィスにちびのノルドは召喚されていた。
 執務室のデスクに鎮座しているのは、長年帝都の平和を維持してきた老練の騎士アダムス・フィリダその人である。
「ちびのノルド…いや、アリシアと言ったか。知っての通りいま、帝都にはナイトスレイヤーを名乗る正体不明の悪漢が暗躍している。やつは帝都軍の中にあって腕利きの集団と名高い王宮騎士ばかりを闇討ちにしているのだ」
「そのー、相手に心当たりとかはないんですか?過去に誰かの恨みを買ったとか…」



「心当たりなんぞ、幾らでもあるわい。こちとらは、誰に恨まれようとも帝都の平和を守るために存在しているのだからな。だが、夜襲をかけたとはいえ騎士を次々に手討ちにするほどの実力を持った相手ならすぐに正体くらい割れそうなものだが、いまのところ、手がかりはない」
「ハァ…それで、わたしは何をすればいいんです?」
「聞くところによると、君は我が帝都の商店組合から信頼されているそうじゃないか。なんでも、数々のトラブルを解決したとか。そこで君に頼みたいのは、ずばりナイトスレイヤーの討伐だ」
「と、討伐?」
「いかにも。本来ならば内密に処理したいところだったが、現在我々は皇帝暗殺を企てた謀反人の捜索に手一杯で、他のことに割ける人員を確保できておらん。戦士ギルドや魔術師ギルドに依頼することも考えたが、彼らは彼らで身内のトラブルを解決するので精一杯らしい。そこで傭兵の出番というわけだよ…そう、君のような」
 そう話すアダムスの表情は、真剣そのものだった。





 帝都植物園地区、泣く子も眠るウシミツアワー。
 ナイトスレイヤーを討伐すべく、ちびのノルドは囮の騎士を引き連れて帝都を散策していた。
「本当に、きみがアダマスの雇った傭兵なのかい?どうにも頼りない感じがするが」
「不満があるなら、自分達だけで事件を解決すればいいんじゃないですかネー…」
 わりと当然の疑問を口にする囮役のイティウスに、ちびのノルドはなげやりに答える。
 今夜のみ、帝都では騎士の巡回を禁止し彼らを控え室に待機させていた。治安の悪化が懸念されるが、もし今夜ナイトスレイヤーが現れるのならば、間違いなくイティウスが狙われるはずだ。
「これで今夜なにも起きなかったらどうするんでしょうね」
「まだ考えてない」
 即答するイティウスを見て、ちびのノルドはため息をついた。
 が、そのとき。



「ドーモ、イティウス=サン。ナイトスレイヤーです」
 ズドンッ、重々しい炸裂音とともに、突如2人の目前に漆黒の鎧が降誕した。メンポにどす赤黒く浮かび上がる「騎士」「殺」の文字、スリットから噴き出す炎の如きオーラが禍々しく揺らいでいる。
「あ、あれがナイトスレイヤーかっ!?」
「…わたしが関わる事件って、なんでこんなのばっかりなんだろう……」
 ナイトスレイヤーの異容を目前に、ちびのノルドは頭を抱える。



「騎士、殺すべし!」
 ザシャアッ、超重量級の全身鎧姿からは想像もできない驚異的な跳躍力でナイトスレイヤーは飛び跳ねると、2人に襲いかかってきた。
「フッ、面白い、ナイトスレイヤーとやら!貴様の実力、確かめさせてもらうぞ…」
 イティウスはシルバー・ロングソードを抜き、不適な笑みを浮かべると、これ以上ないほどにカッコつけて見栄を切る。
「帝都衛兵隊3番隊隊長、白金騎士イティウス・ハイン。推して参るッ!!」
 そう叫び、ナイトスレイヤーに立ち向かおうとした、そのとき。
「あなたは余計なことしないでください、相手を誘き寄せるための、ただの囮なんですからッ!」
「おぶぉはぁっ!?」
 背中に拳打を叩き込まれたイティウスが、彼方まで吹っ飛ぶ。
「あなたに万が一のことがあると、わたしが困るんですよ!頼むから引っ込んでてください!」
 まったくもう、と漏らすちびのノルド。
 いつの間にか姿を消したイティウスを探して首を巡らせ、ちびのノルドに焦点を合わせたナイトスレイヤーは、低く思い声音で一言、つぶやいた。
「…邪魔立てするか、小娘」
「あなたの相手はわたしです」
 まったく物怖じする様子もなく、ちびのノルドがスッと拳を構える。



「フンッ!」
「ハアァ、イヤァーーーッ!」
 振り下ろされた剣の一撃を受け止め、ちびのノルドはカウンターを繰り出す。
 喉下を殴打されたナイトスレイヤーは苦しそうに咳こみ、肩を上下させた。
「ムッ、…やるな小娘」
「小娘じゃありません、ちゃんと成人しています。背は低いですがおっぱいはそれなりに大きいです」
「態度が大きいのはよくわかった」
 喉元をさすり、ナイトスレイヤーはふたたび剣を構えなおすと、素早くも力強い剣戟を繰り出してきた。
 だがしかし、近接格闘術に特化した戦士のちびのノルドに対し、接近戦を仕掛けるのはあまりにもウカツ!わざわざ相手の得意フィールドで戦っていることに、ナイトスレイヤーは気がついていなかった。
 長剣のリーチを活かすこともなく振るわれる剣を、ちびのノルドは紙一重でかわしていく。
「(…剣を振るだけ?フェイントを仕掛けることもなく、これだけ接近しているのに手癖の悪さや足技を見せることもない?)」
 もろもろの疑問を脳裏で反芻させながら、ちびのノルドは反撃の機会を窺う。
 これだけの重装に身を包んでいるのであれば、全力で戦っていてはすぐに疲れてしまうはず。持久戦には弱いはずだ…戦場で研ぎ澄まされた観察眼で、ちびのノルドはナイトスレイヤーの実力を見極めようとした。
「(一撃は重いけど、当たらなければどうということはない。これは剣術道場で習うような、まるで型にはまった動きだ。戦場を知らないキレイな剣だ…)」
 もしかして、ナイトスレイヤーの正体は…
「フ、クゥッ!」
 絶え間なく攻撃を繰り返していたナイトスレイヤーが、一瞬、ただ一瞬だけ疲れを見せる。しかし、それが致命的なミスだった。
 ちびのノルドの眼光が鋭く光り、閃光のような足蹴りがナイトスレイヤーの顔面に炸裂する!
「イヤーッ!」
「グワーッ!」



 強烈な一撃を受けたナイトスレイヤーのメンポが割れ、ヘルメットがはじけ飛ぶ!
「あ、あなたは!」
 殺人的な威力の蹴りが直撃したにも関わらず、一命を取り留めたナイトスレイヤーの、露わになった素顔を見てちびのノルドが驚きの声を上げる。
 それは以前、帝都で権力を利用して狼藉を働きまくった挙句、べろべろに酔っ払ったちびのノルドの暗躍によって刑務所送りになった騎士オーデンス・アビディウスであった。
 つるりと禿げ上がった頭頂部に視線を集中させながら、ちびのノルドが口を開く。
「なぜ、あなたが…というか、刑務所で服役中だったんじゃ」
「なに?小娘、俺のことを知っているのか?」
 ちなみにオーデンスは、自分を罠に嵌めた相手がちびのノルドであることを知らぬままだ。
「アー、イエ…ところで、なんでそんな格好をしてるんですか?」
「フン。獄中で、俺を逮捕した同僚どもへの恨みを募らせていたところへ突如、アビスと名乗るナイトソウルと邂逅したのだ。理由はわからんが、アビスはすべての騎士を恨んでいるようだった。利害が一致したため俺はアビスを己が身に憑依させ、ナイトを殺すナイト…ナイトスレイヤーとして生まれ変わったのだ!」
「…あの。あなた刑務所にいたんですよね?頭の病院じゃなく?」
「信じてないな」
「ア、ハイ」
「まあいい」
 ナイトスレイヤー、もといオーデンスはふたたび剣を構えると、叫んだ。
「ここで貴様を殺し、俺を捕縛したイティウスを殺し!俺は復讐を完遂させる!」
「そのプランは却下させて頂きます!」



 カッコつけてポーズを取っていたオーデンスの顔面に、ちびのノルドは全身全霊を込めた膝蹴りを叩き込む!
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
 その一撃で、勝敗は決した。
 頭蓋が破砕され、脳髄に深刻なダメージを受けたオーデンスは、よたよたと二、三歩後退し、ふらつく。それでも最後まで倒れなかったのは、強力なナイトソウルのおかげであったろうか。



「ベリーグッバイ!」
 最後にそう叫ぶと、オーデンスはその場で四散爆散した。



「…とまぁ、そんなことがあったんですよ」



 後日、帝都商業地区のフィードバッグ亭にて。
 騎士隊長のアダムス・フィリダから事件解決の報酬を受け取ったちびのノルドは、本日の仕事を終えて祝杯を上げている商店会のみなさんに混じってジョッキを呷っていた。
 隣には、すっかり顔馴染みとなった故売屋の女店主ジェンシーンが座っている。
「あんたも作り話が上手くなったねぇ」
「ホントなんですってば。たしかにウソくさいですし、改めて話してみると、自分でも頭が痛くなるくらいバカバカしい話ですけど」
 そもそも自分がこんなバカみたいな事件に巻き込まれたのは、商店会が自分のことをアダムスに口添えしたせいだ…酔って朦朧としながら、ちびのノルドはそんな愚痴をこぼす。
 かくして、夜も更け…帝都はふたたび、平和な日常を取り戻したのである。



[ to be continued... ]




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