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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2024/11/24 (Sun)06:07
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2012/11/02 (Fri)06:55


 なんとなく作ってみた。いつのネタだよコレとか言わないでほしい。いまいち出来が微妙なのも言わないでほしい。
 いちおう専用に写真を撮影したんだ…
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2012/10/23 (Tue)00:56
 シェイディンハル城下町の、廃屋地下にある暗殺ギルド<ダーク・ブラザーフッド>の拠点。
 当面はここで活動することになったブラック17は、とりあえずの同僚であるヴィセンテが浮かない顔をしていることに気がついた。



「どうかした?」
「ん、いや。あぁ、ちょっと懸案事項があってね。どうしたものかな」
 しばらく思案したのち、ヴィセンテはだしぬけに言った。
「じつは、ちょっとしたトラブルがあってね。本来、君には関係のないことだが…協力を頼めないだろうか?」
「与えられた任務を破棄していい、という命令は受けていないわ」
「…控え目な物言いだね、相変わらず。引き受けてくれるなら、要点を話そう」
 ヴィセンテの問いには答えず、ブラック17は無言のまま先を促した。
 ゴホン、ヴィセンテは一つ咳払いをしてから、説明をはじめる。
「先日のことだ。我々に、ブルーマでの暗殺任務が用意された」
「ブルーマ…スカイリムとの国境沿いにある、ノルドの街ね」
 ブルーマは、シロディールの北方に位置する城塞都市だ。ノルドの支配する大陸スカイリムに近いことから、住民の大半はノルド民族で占められている。年間を通して雪が降り積もる、寒冷な土地である。
「我々は本部から、ブルーマに住む、とある貴族の暗殺を指示された。任務にはム=ラージ=ダーを向かわせたのだが、どうやら何らかのトラブルに見舞われたらしく、本来ならばとっくに仕事を終えて帰還していいはずなのだが戻ってくる気配がない」
「つまりわたしに、ブルーマまで行ってム=ラージ=ダーの無事を確かめてこい、と?」
「その通りだ。我々は暗殺者だが、すべての命を軽んじているわけではない。家族を簡単に見捨てたりはしないのだ。頼めるかね?」
 熱っぽく語るヴィセンテに、ブラック17は無言で頷く。あまり気乗りがしない、とは言えなかった。
 人殺しを楽しむ下衆共が、なにが家族だ。笑わせるな…そういう感情も、なかったわけではない。ブラック17自身も殺人によって快楽を得てきた下衆ではあったが、彼女はそのことを自覚しており、<人並みの幸福を得る資格などない><笑顔など必要ない>という信義のもとに自らを厳しく律してきた。
 ストイックな生き方をしてきたブラック17にとって、この<聖域>の住民たちのフレンドリーな態度が、いささか癇に障るものであることは事実だ。
 しかし今回に限っては、それとは少し異なる点から「気が進まない」のだった。
 それは、ム=ラージ=ダー本人の人格の問題である。
 突如仲間入りしたブラック17に対してほとんど誰もが例外なく友好的に接してくる中にあって、ただ1人だけ悪態をついてきたカジート、それがム=ラージ=ダーだった。
「(…友好的な態度が気に喰わない、とはいえ、『クッセェ猿』呼ばわりされて喜べるわけでも、ないのよねぇ)」
 ブラック17が望んでいるのは、極めてビジネスライクな関係だ。友好的だの、敵対的だの、そういうつまらない感情で心を乱されるのは願い下げだった。



「よりにもよって、おまえが応援かよ…」
「わたしも、命令がなければ貴方なんか見殺しにしておきたいのだけれどね」



 極寒の地ブルーマ。
『城壁の外にて待つ』…ム=ラージ=ダーが待機していたはずの場所に残された書き置きをもとにブラック17が向かった先には、こころなしか顔が青ざめているように見えるカジートの姿があった。
 たんに寒いからか、それとも他に理由があるのか…
 防寒用のローブで身を包んだブラック17は、相変わらず態度のでかいム=ラージ=ダーを見てため息をつくと、質問をした。
「それで…いったい、なにがあったの?ヴィセンテが心配してたわよ」
「ああ、畜生…おまえなんぞに頼らなきゃならねーとはな…とんだドジ踏んじまったぜ、まったくよぉ」
「つまり、任務を遂行できなかったってことかしら?」
「勘違いするんじゃねぇぞ!?」
 冷淡に言い放つブラック17に対して、ム=ラージ=ダーは憤懣やるかたなしといった態度で叫んだ。
「与えられた任務はちゃんとこなしたんだ、それもオプションまでちゃんと成功させてな!」



 幾分憤慨した様子で、ム=ラージ=ダーが言葉を続ける。
「俺様の任務は、バエンリンとかいうクソ貴族を事故に見せかけて殺すことだった…俺様は居間に飾られてる剥製を裏から外して、バカの頭上に落として殺してやったんだ。誰にも見つからないよう、誰も巻き添いにしないように、な」
「それで?」
「意気揚々とブルーマから出ようとしたところで、俺様はある女に仕事の話を持ちかけられた。もちろん、俺様の正体が知られてたわけじゃねぇ。たぶん、余所者なら誰でもよかったんだろうよ…」



「女の名前は、アルノラ。元盗賊で、ジョランドルって男とコンビで活動してたらしいが、ある日ジョランドルが仕事中に人を殺しちまったとかで、やばいと思ったアルノラは保身のためにジョランドルを衛兵に売ったんだそうな。だが、いままで2人で稼いできた財産の隠し場所はジョランドルしか知らなかった。ま、とんだ手落ちってヤツだ」
「それでアルノラはあんたに、ジョランドルから財産の隠し場所を探ってこいと頼んできたわけね」
「そういうこった。ところがジョランドルってやつは、警戒心が人一倍強くてな。なんでも衛兵が財産を狙ってるとかで、『テメエも衛兵の使いっ走りだろ!?』とか言って拒絶してきやがる。そんなわけだから俺様はわざと窃盗なんつーセコイ罪を犯して同じ独房に入り、ヤツの警戒心を解かにゃあならなかった」



「ご苦労なことね」
「うるせぇよ…で、ヤツが言うには、人を殺したのはアルノラで、自分はたんに身代わりにされただけだと抜かしやがる。そこでジョランドルは取り引きを持ちかけてきた…『アルノラを殺して、証拠のアミュレットを持ってくれば、財産は全部くれてやる』ってな」
「気前のいい話ね。信じたの?」
「信じたもなにも。ジョランドルは禁固刑で、当分は娑婆に出られねぇ。それにヤツぁ、金なんぞどうでもいいから、自分を裏切ったクソアマが死んでくれりゃあ残りの獄中生活を快適に過ごせるって、笑いながら言ってたもんだぜ」
「なるほどね。それで、あんたはアルノラを殺した?」
「いんや。俺様はギルドの任務以外で人は殺さねぇ…だから、俺様はアルノラに取り引きを持ちかけた。財産を山分けにする代わりに、アミュレットを寄越せ、ってな。どうせジョランドルにアルノラの生死を確認する術はねぇし、どっちがモノホンの殺人者だろうと、俺様は金が貰えればそれでいい」
「そしてジョランドルにアルノラのアミュレットを渡し、財産の在り処を聞き出した、と」
「ああ。財産の在り処は俺様の頭の中に入ってる。だがよぉ…」
 そこまで言って、ム=ラージ=ダーは急に肩を落とした。
「取りに行けねぇんだ。それどころか、このままじゃあこの街から出ることすらできねぇ。いったい、どうすりゃいいってんだよ…!?」
「なに落ち込んでるの。それを解決するためにわたしが来たんじゃないの」
「なに言ってやがる、なにが悲しくて俺様がテメエみたいな余所者なんぞ…余所者なんぞ……!!」
 わなわなと肩を震わせながら、ム=ラージ=ダーはがっくりと俯く。しかし次の瞬間彼の口から飛び出した台詞は、おそらく彼自身ですら予想もしていなかったものだろう。
「ああっ畜生、助けてくれ!このままじゃあ俺様は、一生この街から出られねぇ!俺様は寒いのは苦手だし、ノルドって連中はカジート嫌いで有名なんだ!頼むっ!」
「なにやけくそになってるのよ。助けるって言ったじゃない、任務なんだから」
「あ、ありがてぇ!」
「それで、なにがあったの?」
「あ、ああ。そうだ、肝心の部分を話さなくっちゃあな…」
 ブラック17に諭されたム=ラージ=ダーは、気を取り直して説明を続けた。



「ジョランドルが言ってた。『衛兵が財産を狙ってる』って話…ありゃあマジだった。どうやら俺様は見張られてたらしい、ジョランドルと別れてから、1人の衛兵、それも近衛騎士に後を尾けられるようになった」
「…待って、たった1人?それくらい、自分でどうにかできないのかしら?」
「どうにかって、どうしろってんだ!殺せってのか!?国家権力を敵に回すなんてゴメンだぜ!それに俺様は戦闘は苦手だ、こっそり仕掛けをするのは得意だが、ヤツはそんな小細工が通用するような相手じゃねぇ!それに逃げようとしても、ヤツは俺の顔を覚えてやがる。手配書でも作られた日にゃあ、俺様はもうマトモにシロディールを歩けなくなっちまうんだぜ!?」
「…それで?」
「それで…おまえなら、まだシロディールに来てから日が浅い。誰にも顔を覚えられちゃいないし、戦闘だって得意だ。だから、俺様の代わりに財宝を取りに行ってくれ。そしたら十中八九、ヤツが襲いかかってくるだろう。そこを返り討ちにしてくれりゃあいい」
「随分と都合のいい話よね。まあこの国の騎士の実力には興味あるし、乗ってあげるけど」
「ありがてぇ!おまえが戦ってる間、俺様は逃走の手筈を整えておく」



 別れ際に、ム=ラージ=ダーは念押しするようにブラック17に言った。
「しくじるんじゃねぇぞ!」
「はぁ。私欲で予定外の仕事に首突っ込んだ挙句、トラブルを起こしたやつの尻拭いとはね。とんだ災難だわ」
「う、うるせぇよ!」



 夜闇を彩るかのように、雪がしんしんと降り積もる。
「ここね…」
 ブラック17はム=ラージ=ダーに指示された場所へと来ていた。城塞都市からそれほど離れていない岩場の影に、容易に発見されないようカモフラージュされたチェストが安置されている。
「この中に財産があるってわけね」
「どうやらそのようだな」



 ブラック17の背後から、男の声がした。
「あのクソ猫が来ると思ってたんだがな。仲間がいたとは思わなかった」
「いきなり抜き身の剣をちらつかせるなんて、穏やかじゃないわね…わたし、ただの通りすがりなんだけど。って、言ったらどうする?」
「殺す。無関係だろうがなんだろうが、そんなことは関係ない」
 そこまで言って、フッ、ブルーマの騎士…ティレリウス・ロゲラスは、極めて不遜な笑みを浮かべた。
「アルノラもジョランドルも始末した。現在その財産のことを知っているのは、俺を除けば貴様と、あの猫だけだ。誰にも邪魔はさせん」
「証人を残さず抹殺していたのか。ム=ラージ=ダーが怯えるわけね…貴方、騎士にしておくには惜しいわ」
「俺もときどき、そう思うことがあるよ。公権力を自由に使えるのは魅力的だがね…たまに、殺し屋でもやっていたほうが性に合っていたんじゃないかと思うよ」
「勘違いしないで。貴方が殺し屋?笑わせるわ…」
「なんだと?」
「貴方には野盗か、山賊が似合いだと言うのよ。騎士?殺し屋?笑えない冗談ね。まぁ、現実って、そういうものだけど」
「愚弄するか、女ァッ!!」
 挑発するブラック17に対し、ティレリウスはこれ以上ないほどにわかりやすい態度で怒鳴りつける。
「その格好を見る限り、メイジかなにかのようだが…接近戦で騎士に勝てると思うなよ!」
「メイジ?ああ、ローブで判断したのね。まあ、魔法も使うけれどね…」



 ブラック17はローブを脱ぎ捨て、全身を覆う暗殺装束を見せびらかすように胸を反らす。
「貴方相手に魔法なんか必要ないわ。かかってらっしゃい」
「殺す!」
 ティレリウスは鬼のような形相を浮かべると、余計な予備動作の一切をなしに、ブラック17に斬りかかった。素早い。
 パワーとスピードの乗った一撃は、たしかに必殺と成り得るものだった。
 だが。
「な、消えたッ!?」
 剣を振り下ろした刹那、手ごたえがないことにショックを受けるティレリウス。目の前にいたはずのブラック17の姿を見失ったと思い込んだ直後、首筋に鋭い痛みが走る。



 ブラック17は消えたのではなく、わずかに上体を反らせただけだった。だが「自分の一撃が外れるわけがない」と思い込んでいる相手の知覚から逃れるには、それだけの動作で充分だったのだ。
 鋭い剣の一撃を避けると同時に繰り出された踵がティレリウスの首筋を捉え、ブラック17はそのままティレリウスを引きずり倒す。
「ぬあっ!?」
 視界が一転し、ティレリウスはわけがわからぬまま地面に突っ伏した。



 馬乗りになったブラック17がティレリウスの首筋目掛けて刃物を突き立てようとする。
「ばっ、ま、待てっ!い、いったいなにが…!?」
「命乞いもマトモにできないのね」
 未だに様子を掴みきれていないティレリウスを冷たく一瞥すると、ブラック17は容赦なく刃を走らせた。皮膚が切断され、総頚動脈、内頚静脈が斬り裂かれると、勢いよく噴き出した血液が純白の雪原をどす黒く汚した。
 温かい血が雪を溶かし、湯気を立てるさまを見つめながら、ブラック17はしばし殺人の快楽とその余韻に浸っていた。が、間もなくして自分を呼ぶ声に気がつき、すぐにその場を立ち上がる。



「おーい、すぐそこの厩舎で馬を確保してきた。さっさとズラかるぞ…おっと、お宝を忘れるなよ!」
 ム=ラージ=ダーだった。そういえば、逃走手段を確保すると言っていたか。
 ブラック17はチェストの中に入っていたものを掻っ攫うと、静かな足取りでム=ラージ=ダーの待つ場所へと向かう。
「希少価値のある書物が数冊に、変哲もない宝飾品が数点…くだらない」
 すべてを売ればそれなりの財産になりそうな戦利品を見つめながら、ブラック17は面白くなさそうにため息をついた。
「こんな物のために、何人死んだのかしら」
「なにぶつぶつ言ってやがるんだ、早く来いって!」
 のろくさ歩きやがって、などとつぶやきながら、ム=ラージ=ダーがブラック17を急かす。
「まあいい、今回のことは他言無用だ…俺は暗殺任務に手こずっていたが、おまえが来る頃には解決して帰る準備をしていた。そういう話で通しておいてくれ、その代わり財産は山分けだ。もともと死んだアルノラと分けるつもりだったからな、惜しかぁねえ」
 てっきり金目当てで協力してくれたと思い込んでいるのだろう、ム=ラージ=ダーの言葉に、ブラック17は言い様のない苛立ちを感じた。理由は自分でもわからなかったが。
 こんな物のために…
「金のためにやったわけじゃないわ。貴方に全部あげる」
「…へ?あ、あぁ、うん、まあ。…無欲なんだな?」
「黙って。お願い。死にたくないなら」
 苛つく……



[ to be continued... ]


2012/10/10 (Wed)15:02
「いた……」



 木の上から、周囲を巡回するネクロマンサーの様子を窺うミレニア。
 手にしていた棍棒を振りかぶり、思い切り投げつける。
「エイヤッ!」



「コペンハーゲンッ!?」
 ゴガッ!
 放たれた棍棒が勢いよく後頭部に突き刺さり、ネクロマンサーは奇妙な悲鳴を上げながらぶっ倒れる。
「うわ~、めっちゃ鼻血出てる…」
 スルスルスル、ミレニアは慣れた手つきで木を降りながら、さきほど自分が倒した相手を見てつぶやいた。
「…どうでもいいけど、なんかわたし、殺し屋みたいなムーヴ(動き)してる気がする」
 咄嗟に日用品(とか、そうでないものとか)を武器の代わりに使って立ち回れるその力は、たしかに暗殺ギルド向きと言えなくもない。とはいえミレニアは悪党でもシリアル・キラーでもないので、メンタル面で向かないのは確かなのだが。
 しかし、ミレニアがそれなりの戦闘力を有しているのには、ちゃんとした理由がある。
「まあ、人に話せるような理由じゃないけどね…」
 そんなことをひとりごちていると、近くの祭壇にダンマーのネクロマンサーが近づいていくのが見えた。ミレニアは咄嗟に岩陰へと身を隠す。



「いったい、なにをするつもりだろう…」
 相手の戦闘能力がわからない以上、迂闊に飛び出して返り討ちに遭う可能性を考えると、ここはひとまず静観して相手の出方を伺うのが上策。
 そう考えたミレニアだったが、実際はすぐにでもダンマーのネクロマンサーを止めるべきだったことを、すぐに思い知ることになる。
「ここに、新人メイジどもが魔術師の杖を作るために必要な一切合財が揃っているというわけか…」
 そう言うと、ダンマーのネクロマンサーは周囲に謎の液体を撒き、続いて呪文を唱えはじめた。
 間もなくミレニアの鼻に異臭が届き、自分は使わないとはいえ多少は魔術に関する知識があるミレニアは、相手がなにをしようとしているかに気づき、狼狽した。
「この刺激臭は油…でもってアイツ、火炎魔法唱えようとしてるッ!?」
『ファイアーボールッ!』



 ドンッ!
 ダンマーのネクロマンサーが呪文の詠唱を終えるのとほぼ同時に、周囲が瞬く間に炎に包まれていく。
「これでもう、魔術大学の連中は杖を作れまい!ウワーハハハハハ!!」
 哄笑を上げながら、ダンマーのネクロマンサーも炎に包まれた。
「我らネクロマンサーに、栄光あれーッ!」
「げぇっ、なんつーハタ迷惑なカミカゼ・スタイル!」
 残念ながら、ミレニアにはここまでの規模の火災を消し止めるための手段を持っていない。
 驚いている間にも、炎の規模はあっという間に拡大し、いまや島全体を包みつつある。ミレニアは動きを鈍らせる漆黒のローブを脱ぎ捨てると、一目散に崖へと向かった。



「な、なんでわたしがこんな目にーっ!?」
 ボンッ、どうやら他のネクロマンサー達が所持していたらしい油の瓶に引火し、あちこちで小爆発が起きている。
 勢いを増した炎は、いまやミレニアのすぐ背後にまで迫っていた。



「わぁーーーっっっ!?」
 間一髪で崖から海へと飛び込むミレニア。その頭上を、勢いよく噴出した炎がかすめていった。



「ぷはっ!」
 水面から顔を出したミレニアは、目前の光景に言葉を失う。
 魔術大学の見習いたちが杖を作るために保護されていた神木が、無残にも焼き払われてしまった。
 神木から作る杖は特別なものであり、それゆえ魔術大学の会員が持つ杖は一種のステータスとして扱われるのである。
 しかし神木を失ったいま、魔術大学は古来よりの伝統を1つ、失ってしまったのだ。



「なんだと、島が焼かれただって!?」
 命からがら帰還したミレニアを待っていたのは、ラミナスの叱責だった。



「おまけにギルド会員にも死傷者が出て、挙句に犯人は自害!きみはいったい、あの島でなにをやっていたんだ!?」
「え、いや、その、えーっと…」
 てっきり心配くらいはしてくれるだろうと思っていたミレニアは、期待が外れたことに驚き、ショックを受けた。
「(…そんなの、わたしに言われても、困るよ!)」
 そう言いたいのは山々だったが、いまのラミナスに言い訳は通用しそうにない。
「まったく、怠慢というほかないな!たかがネクロマンサー風情に遅れを取るなどとは!ともあれ、これは由々しき事態だ。すぐにでも評議会を収集せねばならないだろう…もちろんキミには仔細な報告書を提出してもらう必要がある、しばらくは帝都を出てはならないぞ、わかったかね!?」
「……はい…」
 すっかり気落ちしたミレニアは、重い足取りで大学の敷地内を歩く。
 いらないものを作りに行かされ、どういうわけか襲撃され、仲間は死に、さらにラミナスが言うには「なんらかの形での処分も有り得る」という。死んだ2人のメイジのぶんまで罪をひっかぶせよう、という算段なのだろう。
 無駄足踏んだ、どころの騒ぎではない。大学が被った被害の責任をすべて押しつけられるかもしれないのだ。
 冗談じゃない!
「…逃げちゃおうかな~…」
 暗い表情でつぶやくミレニアの耳に、ふと、野外授業をしている教師の講義が聞こえてきた。



『…ルーンストーンに施されていたはずの固有のエンチャントが失われたいま、第一紀においてこれらが果たしていた役割を推察するにあたって……』
「呑気なものだなぁ」
 実用的でないものはすべからく雑学知識でしかない、という認識を持つミレニアにとって、大学の講義はブルジョワが知識欲を満たし、優越感を得るためだけの無為なものに思えて仕方がなかった。
 曇天の空を見上げながら、ミレニアは「フゥ」と、ため息をついた。
 ネクロマンサーの襲撃。
 これまでの常識では、そんなことは有り得なかったし、そしてこれからも有り得ないと思われていたこと。地下で細々と禁忌の研究にいそしむ連中が、正面から魔術大学に喧嘩を売るなどとは、前代未聞もいいところだった。
 そして、なにより…この件は、今回のことだけでは終わらない気がする…そんな予感が、ミレニアの脳裏から離れなかった。
「わたしたち、これから、どうなるんだろう」
 その一言は、降り出した雨音に遮られ、虚空の彼方へと消えていった。



[ to be continued... ]



2012/10/07 (Sun)15:45


「ムッ、なにか物音がしたような気が」
 洞窟内部を巡回していたネクロマンサーが、首を巡らせる。
「さっき殺したカジートの女によると、もうすぐここに、見習いのメイジが来るとか。そろそろ到着してもいい頃だが」
 ネクロマンサーにとって、メイジは宿敵であり、忌むべき存在。たとえ相手が見習いであろうが、子供であろうが、容赦をする理由はない。
 そしてネクロマンサーの目前に、見慣れぬ者の影が映った!



「おいーっす!」
「…… …… ……!?」
「え、エーット、本部に言われて応援に来ましたぁっ!」
「……???」
「あ、あのーう。責任者は、どちらに?」
「……あ、ああ、うん。洞窟を抜けた向こうにいる」
「ありがとうございましたーっ!」
 一礼してから過ぎ去る影を見送りながら、ネクロマンサーは小首をかしげる。
「…あんなやつ、仲間にいたっけ……?」



「あ、危なかった~…」
 どうやら敵をやり過ごせたらしい、ミレニアは胸に手を当てて安堵する。
 さっき倒したネクロマンサーから奪ったローブを着用しているとはいえ、変装というには、ちとおざなりであるのは言うまでもない。
 もっとも普通のメイジであれば、ネクロマンサーのローブを着るなどという罰当たりなことは到底しないのだが、その点ミレニアは信義よりも実利を優先する性格だったので、あまり気にしてはいない。



「えーと。<魔術師ギルド要綱>に、<錬金術の基礎>?」
 テーブルの上に積まれていた本を手に取り、ミレニアは眉間に皺を寄せる。
 どの書物も魔術師ギルドの会員にとっては必読書のようなものであるが、ネクロマンサーにとっては甚だ無縁に等しい代物である。そして壁にかけてあるタペストリーには、魔術師ギルドの紋章が刺繍されていた。
「やっぱり、ネクロマンサーが来たのは最近なんだ」
 しかしいったい、なんのために?
 なぜ、いまになって?
 ミレニアは頭の中に大量のクエスチョン・マークを生やしながらも、答えを探すべく、先へと進むことにした。



「おい貴様、どこへ行く?」
「エートその、忘れ物しちゃって…」
「まったく、たるんどるな!そんなことで魔術師ギルドの連中を倒せると思ってるのか!気合が足りん!」
「う、ウェヒヒ、しーましェーン」
 やたら熱血漢ぽい年嵩のネクロマンサーにどやされながら、ミレニアは洞窟を抜ける。
 出口の戸を開けると、眩い日差しがミレニアの目を刺した。いままで暗い洞窟にいたためか、しばし目が眩む。
「うっ、き、吸血鬼になった気分だぁ…」
 しばらく目をしばたたいていると、不意に日光の明るさが低減された。
「ふぅ、太陽が木陰に隠れたのかな。これで一息つける…」
 そこまで言いかけて、ミレニアは絶句した。なぜなら陽光を遮ったのは、木立などではなかったのだから。



 目の前に立っていたのは、ダンマー(ダークエルフ)のネクロマンサー。そしてその足元には、おそらく魔術師ギルドの会員と思われるレッドガードの女性の死体が転がっていた。
「おやまぁ、随分と可愛らしい顔をしているね同志」
「あ、はひ、ありがとうございます」
「あんた、本部から応援に来たそうだね。本部のエルミは元気かい?」
「はい、それはもう!元気イッパイデスヨー」
「あらそう。ふーん…」
 2人の間に、不穏な空気が流れる。
 …もしかして、バレた?
 ダンマーばりに青ざめた表情で、ミレニアは汗を垂らす。
 やがてダンマーのネクロマンサーは腰にぶら下げていた銀製のダガーを抜き放つと、ミレニアに向かって言った。



「オマエのような奴が仲間のはずあるか!いますぐバラバラにして実験材料にしちょぅぅゥゥゥりゃあああああーーーッッッ!!」
「でっ、ですよねーっ!!??」
 台詞とときの声が渾然一体となったわけのわからない叫び声を上げながら、ダンマーのネクロマンサーが襲いかかってきた。ミレニアは慌てて踵を返し、一目散にガン逃げを決める。
 体力勝負となれば、ときに薄暗い場所でヒキコモリがちなネクロマンサーよりも、(裏の)職業柄、飛んだり跳ねたりが得意なミレニアに分がある。
 どうにか相手を撒くことに成功したミレニアは、木から木、岩陰から岩陰へと移動しながら、相手の様子を窺うことにした。



「どうしよう、あっちこっちにネクロマンサーがいるんじゃん…こんなことなら、小型の携帯弓くらい持ってきとくべきだったなぁ」
 小声でそんなことを呟きながら、ミレニアは武器になりそうなものを探す。
「…まるでメタルギアソリッド3だね、こりゃ」
 異世界の電子ゲームの名を例えに出しながら(といってもミレニア自身、電子ゲームについては父親から聞きかじった程度の知識しかないのだが)、ミレニアは武器になりそうなものを手に取った。



「風が吹くと、桶屋が儲かる。さて、どうしてでしょう?答えはカンタン、桶屋だったら<風が吹いてもオッケーや>!はい奥さん、笑って、笑ってー」
 棍棒を片手に一人漫談しているネクロマンサーの背後から、ミレニアは木の枝を手にそーっと近づく。
「フフ、秘密裏に鍛えたこの漫談を駆使すれば!侵入者を笑わせて位置を特定することなど容易!これぞまさしく<お笑いコマンドー>の極意!」
「な、わけあるかあぁぁぁぁぁっっっ!」
「ぶげらっ!?」
 ぶつぶつとわけのわからない独り言を呟いていたところへ、ミレニアの一撃が決まる。



「どやっ!?」
 枝の折れた断面を首筋に突き刺し、そのまま地面に叩き伏せる。
 文句なしのクリティカル・ヒットを決められた漫談ネクロマンサーは、しばらくピクピクと痙攣したあと、動かなくなった。
「ふーっ。まったく、なんだったんだろうコイツ…」
 わけのわからない敵を始末しながら、ミレニアはため息をついた。
 木の枝から手を離すと、ミレニアは漫談ネクロマンサーが手にしていた棍棒をもぎ取り、次の標的を探すべく森の中へと消えていった。



[ to be continued... ]



2012/10/03 (Wed)07:41
「ミレニア。前からキミに言いたかったことが、あるんだが…」



 帝都魔術大学にて。
 ひさしぶりに自らの所属クランへと戻っていたミレニアは、幹部であるマスター・メイジのラミナス・ポラスから、さっそく苦言を呈されていた。
「そろそろ自分用の魔術師の杖を作ったらどうだ?もちろんキミの専攻は錬金術だから、杖なんか滅多に使わないことはわかるよ。でもアレは魔術大学会員であることを証明するための、いわば権威の象徴のようなものであるし、第一、僕の監督下でいつまでも杖を持ってない会員がいるっていうのは、その、なんだ。体裁が悪い」
「は、はぁ。スイマセン…」
 頬を掻きながら、いかにも中間管理職然とした神経質な態度で話すラミナスに、ミレニアはただ頭を下げることしかできない。
 無論、魔法を使わないミレニアにとって、魔術師用の杖などというものはでかくてかさばるだけの荷物でしかない。
 しかし魔術大学の会員として、自分用の杖を作るというのは半ば義務のようなもの。それを先延ばしにしてきたのはミレニアの怠慢であり、その点に関してはただ反省することしきりである。
「今回ばかりは、どうあっても杖を作ってもらうよ。…まさか、異議はないだろうね?」
「あ、はい、もちろんです。なんかスイマセンいろいろと」
「いや、作ってくれるなら、いいんだ。帝都の東にある<水源洞窟>を抜けた先の孤島に、杖の素材となる特別な木が群生している。先にギルドの者を向かわせておくから、現地に到着したら、彼らの助言に従って自分に合った木を選び、素材を持ち帰るといい」
「わかりました。えぇ~っと、その。すぐに、行ったほうがいいですよね?」
「…先に向かったギルド会員を怒らせたくないならね」
「うぅ、わかりましたぁ…」





「あぁ~、めんどくさいなぁ」
 魔術大学を出て、一路水源洞窟へと向かうミレニア。
 ハッキリ言って<いらない物>を作るために時間を割くのはまったく気が進まないのだが、それでも上司の勅命(ということになるのであろう、たぶん…)となれば、この期に及んで従わないわけにはいかない。
 それに、自分のせいでラミナスが何らかの処分を受けるような事態になったら、それこそ寝覚めが悪いというものだ。そこいらへん、魔術大学(というか、シロディールのギルド全般)は妙に厳格というか狭量なので、有り得なくもない、というのが恐ろしい。
「ただでさえ、わたしのせいで立場を悪くしてるみたいだし、ここいらへんで一つ、センセーのために一肌脱いでおかないとだよね」





「このあたりで良いかな?」
「ありがとーございます。んしょ」
「気をつけて行くのだぞー」
 帝都を出てしばらく歩いたところで、周辺をパトロール中の帝都巡察兵に出くわしたミレニアは、そのまま目的地である水源洞窟の傍まで馬で運んでもらったのだった。
 ミレニアにとって帝都巡察兵はもはや顔馴染み、というか実質、タクシー代わりである。
「さーて、さっさと用事を済ませちゃお。夕方までには戻れるといいなあ」



 岸辺を歩いて間もなく、ミレニアは水源洞窟の入り口まで来ていた。
「ここかぁ。わたし、こういう湿っぽいところって、あんまり好きじゃないんだけどなぁ」
 などと、愚痴をこぼしたりする。
「不衛生だし、文化的じゃないし、暗いし、怖いし。ぶっちゃけ、実入りを期待するなら洞窟で宝探しをするより、そのへんの街で家捜ししたほうが…」
 ブルブル。
 そこまで言って、ミレニアはかぶりを振った。滅多なことは言わぬが吉である。
 それに今回は、なにもダンジョンの探索に来たわけではない。水源洞窟はあくまで通り道であり、目的地はその先にある。
「ギルド会員が先行してるって言ってたし、もしバケモノとかがいても、とっくにやっつけちゃってるよね」
 そんなことを言いながら、ミレニアは入り口とは名ばかりの腐りかけた板切れを押し開け、水源洞窟へと足を踏み入れた。そこでミレニアは早速、自分の考えが甘かったことを思い知らされることになる。



「…え、なにこれ」
 目の前の光景に、ミレニアは唖然とする。
 すぐそこに横たわるカジートの死体と、傍らに佇む謎の男。
 男の着用する漆黒のローブには、髑髏をモチーフとした禍々しいエンブレムが刺繍されている。
 はじめは試験かなにかかと思った…ラミナスが、ミレニアを試すためにテストを用意しているのではないかと…しかし男の着用しているローブが、そうではないことを証明していた。その忌まわしきローブこそ、魔術ギルドに関わる者ならばたとえ悪ふざけであっても着用を許されぬ禁忌。
「…ね、ネクロマンサーッ!?」
「ッ、ハハァ、来たな小娘!」
 謎の男は哄笑を上げると、腕を振りかざして召喚術を唱えた。漆黒の光とともに、武装したスケルトン・ガーディアンが虚無の空間より出現する。
 ネクロマンサー…死霊術師。
 死者蘇生術の研究と実行を生業としており、その究極の目的は<不死の肉体>を得ること。
 外法を扱うゆえに魔術師ギルドの総帥ハンニバル・トレイブンによって追放され、いまでは人ならざる者の徘徊する洞窟や、破棄された砦の最奥で細々と活動していると聞いたが…
「なんでこんなところに?」
 まさか、この洞窟はネクロマンサーの棲家なのでは…と思ったが、すぐに、そんなことは有り得ないと考え直した。
 この洞窟は、魔術大学の会員が杖を作るために必ず通らなければならない場所であり、それゆえギルドによって厳格に管理されているはずだ。そうやすやすと外敵に明け渡したりするはずがない。
 それにさっき、ネクロマンサーはミレニアを待っていたかのような素振りを見せていたが。
「どうした、悩んでいるヒマはないぞ?」
「ハッ!?」



 不意に振り下ろされたメイスの一撃をかわし、ミレニアは思考を中断する。
 毎度というかなんというか、ミレニアはこの場に武器を携帯してきていなかった。どだい、武器なんていうものは重くてかさばるものだ。護身用の短剣一つ取っても、一日中ぶら下げていれば相当な疲労が溜まる。ウソだと思うなら一度試してみればいい。
 戦闘職ではないミレニアが武器を携帯していないのは無理からぬことであり(とはいえ冒険者であるからには、護身具の一つも持たないのは迂闊と言えなくもないが)、まして今回の道程で戦闘に巻き込まれるなどとは思ってもいなかったミレニアは、いかにしてこの窮状を打破するかで頭を巡らせた。
 幸い、アンデッド・モンスターは動きが単調だ。油断さえしなければ、ミレニアの運動神経をもってすれば攻撃を避けることは不可能ではない。
「どうにかして、武器を手に入れないと…」
 どこかに、武器の代わりに利用できるものはないか。
 何度目かの殴打をかわしたのち、ミレニアは一気に間合いを詰め、<武器>を手に取った!



『ギシェエェェェェエエエエッッッ!!』
「うおーりゃあーーーっ!」
 ミレニアが即席で手にした武器、それはなんと、スケルトン・ガーディアンの肋骨!
 あろうことか、ミレニアは敵の身体からパーツをもぎ取り、武器に仕立て上げたのである。まさしくソリッド・スネークも腰を抜かす現地調達術だった。



「骨パンチ!相手は死ぬ!」
『ゴッハアアアアァァァァァァァァ!!』
 メシャアッ、顎の破砕される小気味良い音と同時に頚椎が圧潰し、千切れた頭蓋骨があさっての方向にはじけ飛んでいく。制御を失った胴体は力なく倒れると、そのまま元の屍へと朽ち、果てた。
「ばっ、馬鹿な、メイジのくせに肉弾戦だと!?」
 後方に控えていたネクロマンサーが狼狽する。
 ネクロマンサーはメイジを宿敵と見做しており、ゆえに<対メイジ戦術>の構築に日々の努力を費やしている。そしてそれは、「まず相手の呪文を封じ、無力化したところへアンデッド・モンスターを投入し嬲り殺す」という典型を作り出すことに成功していた。
 そう、ネクロマンサーはミレニアの術を先んじて封じていたのである!
 しかし錬金術と、火事場の馬鹿力が取り得のミレニアには、マニュアル教本通りの戦術は通用しなかった。
「クッ、仕方がない。ここは一旦引いて、再度待ち伏せを…」
「聞こえてるってーの!そうはさせるかーっ!」



 慌てて身を引こうとするネクロマンサーのこめかみに、ミレニアの鋭い爪先がクリーンヒットした。
「トンファ…じゃない、骨キック!」
『エイジッ!?』
 ゴッ、奇妙な悲鳴を上げながらネクロマンサーは半回転し、派手な音を立ててその場に崩れ落ちた。死んだのか、気絶しただけなのかは、一見しただけではちょっとわからない。
 ただ、しばらく目を醒ましそうにないことだけは確かだった。
「はぁ、はぁっ…まったく、なんだっていうのよぉ、もぉ~っ……」
 不慣れな戦闘で疲弊したミレニアは、その場で膝をつき、肩で息をする。



 しかし、いつまで経っても休憩しているわけにはいかない。
 洞窟に入ったときから地面に転がっていたカジートの死体を検分し、ミレニアは顔を引きつらせる。
「この徽章は…」
 ローブに縫いつけられていた、鮮やかな色彩のバッジを見て息を呑むミレニア。
 見間違うはずもない、これは魔術大学の会員であることを示すものだ。このことから、このカジートの女性が、ミレニアを先導するために遣わされたメイジであることは明白だった。
「いったい、なにが起こってるんだろう」
 ただならぬ事態が差し迫っていることを感じながらも、ミレニアはさらに洞窟の最奥へと足を踏み入れた。



[ to be continued... ]


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